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39話

 今日も朝早くから出発した。こう何日も馬車で揺られているのは退屈だ。

 暇潰しにとミルミが出したチェスをユキとお嬢がしている。元々どの時代かの召喚者が広めのだろう、普通に売っていた。ただ、一般家庭はそれ程暇じゃない。暇なら働け、畑を耕せだ。中流以上の家庭でしか流行らず売行は芳しく無い。

 酒場とかではプレイカードを使った賭けは行われている事から、異世界のゲームが合わない訳では無いのだろう。

 ユキがゲーム集中している間は俺が索敵を行う。次の大きな街へは3日程かかる。その間は村に寄り野営だ。

 この領は魔物が街道沿いに多い様に感じる。もう、4、5回は襲撃を受けているからだ。ゴブやウルフ系ばかりなので護衛の騎士様が頑張ってくれている。

 王都まで楽に旅が出来れば言うこと無しだ。


「ユキ〜、楽しいか〜?」


「....うん....」


「そうか〜タカは暇だ〜」


「....する?....」


「チェスは難しいから止めとく。まぁ仕方もわからんし」


 ユキは少し教わっただけで内容を理解し、考え、お嬢と良い試合をしているようだ。もう何回目か覚えていないが、回数をこなす毎に対戦時間が長くなってるのが分かる。俺は何手も先を考えるのが不得意なので弱い。まぁ出来なくても困らないからいいはず。


「また来たな....」


 馬車は動きっぱなしで、兵士達が動く。ゴブ達は10匹だったのですぐに処理された。


「お嬢。ここら辺魔物多くない?」


「えぇ....ゴルゼフ伯爵領に近い位置ですので....」


「関係あんの?」


 だいぶ仲良くなったお嬢には最近なんでも聞いている。お嬢は物知りさんだ。

 原因はゴルゼフ領と今の領が接している位置にある。ゴルゼフ領は資源となる金鉱山がアリスティン公国との国境にあるそうで、数年前にいざこざを起こした。それ以降国からの税率の引き上げや爵位の降格等かなり叩かれ、そのためか領内の掃除もあまりせず治安は荒れている。

 隣接する領からしたらいい迷惑だが、貴族派の重鎮であったため取り潰す事も出来ずに抑え込んでいる状況が続いているらしい。


「なんでいざこざなんて起こしたんだ?」


「山脈を共有した様な国境線ですので、両方から鉱物を採掘出来ます。それが気に入らなくて起こした様です。」


「なら他の貴族に任せればいいんじゃない?」


「貴族派の財源ですから....簡単には行かないのです。国王派や貴族派、私の領のような伝統派と三つに現在分かれており、国、貴族、伝統が4:5:1の割合で混在しています。私どもは基本は国王派に入りますので均衡しているとも言えますが....」


「ん〜国王がいて初めて国なんでしょ? なら貴族派いらないんじゃない?」


「そうなんですが....簡単に言いますね」


「筋が通らないのは嫌だからさぁ。まぁ俺も筋なんて通っちゃいないけど。同族嫌悪かな?」


「はぁそうですか。まぁ内乱などに発展すれば間違いなく帝国に攻められます。避けるためにどうしても上手くかわしていくしかないのですよ」


「なんで今以上の地位を求めるかね〜面倒いだけじゃん」


「王族がいなければ貴族の好き勝手に出来ますから。そうすれば好きな物は全て手に入ります。地位も名誉も....」


「お嬢はそうしないの?」


「辺境伯家の家訓には『民を蔑ろにすること無かれ。己を殺すと同義と心得よ』とありますから、そのようなことは致しませんよ」


「立派な家訓だね〜昔民に革命でも起こされたのかな?」


「いえ、6代前の奥方がお決めになりました。召喚者でしたのでそう言う知識があり、色々と人の統治に関して意見していた様です」


「そうだったね....まぁ民にとっては良いことだ」


 その後も統治や国について聞いていく。トライデント王国はアリスティン公国に貰った土地だそうだ。その為、王室は仲が良いが貴族ではそれが気に食わない奴が多い。

 ゴルゼフの件も国では当たり前の事で、アリスティン公国に恩情で採掘を許可してもらっている場所にイチャモン付けたアホがゴルゼフだ。

 昔は一致団結して国を盛り上げて来たのに、現在は仲違い。何処の世界でも統治する側は大変だし、一つ間違えれば独裁だ。そう考えるとどのような統治であっても一緒かもしれない。

 結局は個人個人の捉え方で国に対しての感情が変わる。支配階級もそうやって変遷してきただけで文明度が上がっても大きくは変わらない。何処までいっても根本が一緒なのが人の治める国家なのかもしれないと思った。


 その日の夜は魔物も多いのでユキと2人で警戒だ。お嬢とメイドが寝ている馬車を横目に、ユキと焚火に当たっている。


「だいぶ進んだなぁユキ」


「....うん....楽しみ....」


「ただなぁ....いい状況じゃないな」


「....うん....」


 視界は月明かりで照らされているので悪くはない。森も近くにはない開けた場所だ。

 先程から索敵に引っかかる魔物の量が多い。問題はないが面倒になる前にと思いユキに馬車を動かせるように頼もうとした。


 ....ヒュッ....バキッ....


「私に何か?」


 左から矢が飛んで来たがそまま手刀で叩き落とす。気付いてはいたが先ほどから護衛の兵士達が俺とユキを包囲するように近づいて来ていた。矢を射ってきたのはその中の兵士だ。


「ぁあ"? 下賤な者が口を開くな!」


 そう言って此方に近づいて来るアホがいる。叔父様だ。騎士どもは自己主張が強いのだろ、兵達のように気配を隠そうなどとは考えずズカズカとこっちに歩いてくる。こちらは座ったままその歩いて来るさまを眺める。


「ん〜他の兵士さんも一緒な感じかな?」


「「「......」」」


 別にどっちだっていいのだが確認は必要だ。そのおかげで無理矢理従わされているわけでは無いことが剣に手をかけているところからもわかる。


「沈黙は肯定と受け取る。先代辺境伯セオ様の命により、ヴェリーテお嬢様の敵と見なし処断するが弁明はあるか?」


 お仕事モードで言葉を発したが、沈黙していた兵が笑い始めた。


「ハハハハハ....! レベル40程度のガキに何が出来るってんだ!」


『なんでこいつレベル知ってんだ?』


 この兵や騎士の中に鑑定のスキルを所持している者がいない事は事前に知っている。


『レベルが見えたと言うことはスキルレベルは9以下....もしかしたらミレイが持っていた物と同じか? まぁいい、殺してからじっくり検分すればいい』


 焚き火の光が辺りを照らし、周りに陣取る兵士達がよく見える。


「弁明は無しと言うことだな? では....死ね」


 人数は15人、強いと言っても所詮は冒険者の評価でだ。レイリ換算1にもならない有象無象はどうでもいい。

 先頭に立っていたアホ叔父さんの首を一瞬で斬り飛ばす。綺麗に切断されたあとは血が吹き出した。

 俺もユキもミスリルのナイフなので、人相手なら切れすぎる。人間相手にアダマンタイトやオリハルコンの武器は過剰だからだ。今回は鎧を切る必要も無いので尚更だ。


 叔父さんの首を飛ばしたあとは他も同じように、1人、2人、3人と切っていく。ゆっくりと歩くように近づき、要所要所だけスピードを上げる。他の兵士達にはただ歩いている様に見えるだろう。

 横を通り過ぎたかと思うと仲間の首が飛び、真っ黒な血が立ち上る。悲鳴をあげ逃げるどころか何が起きてるか、いつ死んだかも分からない程静かにそして素早く終わらせる。

 1分くらいで処断し終わりユキが隣に来ると、返り血を一切浴びてない姿に流石に腕が上がってるなと思う。


『ユキは暗殺者でも目指すのかね? あんま女の子にさせる事じゃ無いんだけどな....身を守るためには覚えて損は無いし....』


「....終わった....」


「全員殺しちゃったからなぁ。背後関係が洗えないな」


 仕方ないかと思いながらユキと一緒に馬車の方に行こうとする。その時、言いようのないゾッとする感じがした。

 咄嗟に身体をユキと入れ替えながら、ユキの襟首を掴んで馬車の方へと放り投げる。


「....ひにゃ?....」


 放り投げた後に腕を戻そうとしたが二の腕から先がなかった。


「....ッ!」


 絶妙なタイミングでユキを退避させれたが、誰がやったかはわからない。斬られた状況を見て索敵を濃くかける。すぐに1人だけ暗闇にいる事が分かり無くなった右腕に構う事なく戦闘態勢をとる。


「あれ? 死んでない? よく避けたね。まぁ次は当てるけどね....」


 10m程だろうか黒のローブを羽織った奴がいる。声から男だと判断出来たがそれ以上は望めない。

 男はそう言って剣の様な物を振りかざそうとした。すぐに足に力を加え距離を詰める。


「何だよお前! はやす....ゴフゥッ....」


「ユキ! 馬車を出せ!」


 起き上がったあとすぐに俺の言葉に反応して、ユキが御者を起こして馬車を発進させる。事前に馬を繋ぎっぱなしにしておいてよかった。

 体当りをかましたが気を失ってもいないだろう。

 それに索敵にはもう1人引っかかっている。気配が薄すぎて気付くのが遅れたが、魔力の索敵ではなく気力の索敵で生体反応を見つける事ができた。

 止血だけすぐに行い、もう1人に声をかける。


「いるんだろ?」


「......」


 埒があかないので弾丸の魔法を打ち込む。


 ....ビシュ....


「お!っとと。凄いねー気付けるんだ!」


 顔も体型も黒いローブの所為で全くわからない。声からするに若い女のようだ。


『もし召喚者ならマズいな....スキルがわからん気付かれない様に....』


 すぐさま2人に鑑定を使用すると、最初の男が空間掌握、女が隠匿の闇と言うギフトスキルを持っていた。


『空間掌握とか名前からしてマズいな....防げないことも無いだろうが....隠匿は見つけてしまえば問題無いはず....2人ともレベルが150越えか....手練れだろう。

 スキルも軒並み5以上、攻撃系は6以上か....撤退も視野に入れないと....』


 膠着した状態で男の方が立ち上がった。


「帝国さんが何でこんなとこにいるんですかね?」


 今一番欲しいのが情報なのでダメ元で問いかける。


「仕事だから仕方ないだろ?また失敗すると上が五月蝿いんだよ」


「....召喚者の方は奴隷ですもんね〜大変だ」


「ん? そんなわけないだろ? 取引すればさ。まぁ使えない固有スキル持ちは奴隷以下だけどな! それに....この世界は神にもなれるんだぜ! 本当にこの世界の人間はアホだよ! なれるならなればいいのに!」


『何言ってんだこいつ? 神になれる? そんな簡単になれるならみんななってるだろうに....娼館を襲撃したのはこいつで間違いない。

 マイさんも凄いなこいつを退けたんだから....俺の腕は簡単な魔法じゃビクともしないはず多分空間断裂系の魔法か? もう1人の情報がないな....取り敢えず何か喋らないと....』


「辺境伯の弟を誑かして何しようとしてんだか。ゴルゼフのとこに使われるのは大変そうだな」


「あちゃ〜結構知ってそうだねこの人。まぁ知ってても別にいいしさ、俺のスキルなら追うのも簡単。お前を殺すのもな!」


『空間魔法に近い使い方だろう。スキルでしか使えない召喚者が不憫だが、魔力の流れが感じられない....』


 剣の様な物を横薙に振ろうとしたので、今いる位置から状態を屈め一気に距離を詰めようとする。状態を下げた瞬間に髪の毛の一部が切れた。


『首狙いかよ!まぁ一回避ければ後は始末するだ....』


 髪が切れた事は気にせず前に体重がのっている左足に力を込める。


 ....スパンッ....


 左足に力が入らずその場で躓いた。


『なんでだ!?』


 遅れてきた激痛に、左足の膝下が無くなっている事に気が付いた。


「おいおい最初は避けたのにさ〜今回は面白くないな〜。魔力消費もリキャストタイムとかも無いからゴメンね〜。本当にスキルって凄いよな〜」


「本当にカズヤのスキルっていいよね〜。魔力も減らないし連発出来るし。私のなんて見つかったら即終了だもん。」


「それで帳尻取れてんだろ。今回こいつは気付いたようだけど、そのスキルがあれば夜は完璧に気配を消せるはずなんだからさぁ。まだスキル使いこなせて無いだけだって。」


「それならいいんだけどさぁ〜ていうか、さっさと追わないとマズくない?」


「待て待て....あ....範囲内からから出ちゃった....」


「あ〜私は知らないからね〜リュウジに怒られても〜」


『こいつら完璧舐めてんな....仕方ない一発かまさないと撤退もできん....いや、転移で飛ぶか? 魔力感知も出来るだろう、ギリギリまで体内で練るか。』


 召喚者達が話している間に魔力を練る。使うは核融合だ。あわよくばここで始末しておきたい。


「さっさと殺し....こいつなんか魔法使う気だよ!」


『遅いわ! 核融合』


 ....カッ、ズゥーン....


 月明かりしかない夜の闇を切り裂くように、極小の太陽の明るさが辺りを包む。

 空間魔法を同時展開してたお陰でこちらに被害はない。

『多分逃げられたかな....まぁ召喚者相手ではステータスだけじゃ完璧に負ける。

 それか限界までレベルアップするか....まぁ魔法の使い方次第で変わるだろうけど....初めてだなここまでやられたの....ユキに付いてる俺の腕返してもらうか....あぁ兵士の死体の検分....燃えカスも残らんか....』


 まだ爆音と熱線が辺りを包む中、左足を左手で持ち屋敷に転移する。


「アラン! アランいるか!」


「はい旦那さ....どうされました!」


「すまんやられた。ユキは逃したから一度戻ってくるように言ってくれ....眠いねる....」


 そこで意識は途絶えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「....はっ!」


 目が覚めてから慌てて上体を起こす。もう昼間なのだろう外から日が差し込んでいる。

 ユキが隣で寝ていたのに気づかず、勢い良く起き上がったせいで起こしてしまった。


「ユキはケガは無かったか?」


 そう言ってユキの頭を撫でていると泣きはらした目に気が付いた。ここはあえて触れずにおこうと思いギュッと抱きしめる。


「心配かけたみたいだな。もう大丈夫だから。」


「....うん....」


 抱きしめながらゆっくりと頭を撫でていると、安心したのかまた寝始めた。

 しばらくするとアランが入室してくる。


「胆が冷えましたよ。お目覚めになられて本当によかった。ヴェリーテ嬢は現在も移動中です。護衛にはアンチェとアムスがついていますので問題ないかと。」


「ありがとうアラン。俺が屋敷に着いてからの事と、どれくらい意識を失っていたか確認してもいいか?」


 アランの説明によると俺が意識を失った後、すぐにアムスとアンチェに準備させユキと交代。そこから、ユキの持ってきた腕と俺の持ってきた足を胴体にくっつけた状態で原液につけたらしい。

 意識を失ったのは血が足りなかったのでは無いかとの事だった。意識喪失期間は二日で護衛の状況は問題ないそうだ。


「面倒をかけたな。子供たちはどうだ?頑張っているか?」


「問題御座いません。三人とも真面目に勉強しておりますよ。」


「それはよかった。ここで勉強すれば何処でも雇ってもらえるようになるだろうし、しっかり教えてやってくれ。俺もあまり護衛を空ける事もできない。準備して出発する。」


「かしこまりました。ユキさんはどうしますか?」


「置いていくと怒るだろうから俺が連れていくよ。ただ、その前に一度辺境伯の所に顔を出して行くから、ユキが目を覚ましたら伝えておいてくれ。」


 すぐに着替えを済ませて辺境伯邸に向かう。門番に取継ぎをお願いすると、俺の事を覚えていたのだろうただ事じゃないと判断したらしくすぐに取継いでくれた。


「タカユキ君! ヴェリーテの護衛は!」


「大丈夫です。別の者に任せてあります。ご報告のために一度引き返して来た次第です。」


 興奮するセオさんを宥めて状況を報告する。


「やはり弟さんは黒でした。その為こちらの方で処断させていただいたのですが....ゴルゼフはどうやら帝国と繋がっているようです」


「何故そう思う? 尋問出来たのか?」


「いえ、帝国の召喚者に襲撃を受けました。人数は2人です。唆したのもゴルゼフあるいは帝国かと....」


「ついに貴族派が帝国と組んだか....グレンバルトの動向などは聞いてないか?」


「そこまでは....私も流石に負傷していましたので....お嬢様には怪我などは御座いませんからご安心を」


「そうか、本来の目的はヴェリーテの護衛だからな....わかった。報告ありがとう。すぐに戻るのか?」


「えぇ。相手側の目的がわからないのでまた狙われる可能性があります」


「宜しく頼む」


 セオさんとの話を終えてすぐに屋敷に戻る。

 屋敷に戻るとユキが飛び出してきて腕にしがみついた。


「起きたか? もう眠くないか? なんならもう少し休んでいけるぞ?」


「....大丈夫....」


「そうか。無理してないよな? ユキに何かある方がタカは困るんだからな?」


「....うん....」


 アランと少し話してからアンチェに馬車を止めるように通信器で指示を出す。あちら側からゲートを開いてもらいアンチェ達と交代する。


「アンチェありがとうな。アムスもご苦労さん」


 そう二人に言うと尻尾をちぎれんばかりにブンブンと振り始めた。


「ユキが主の腕を持ってた時は驚きましたぞ」


「元気になってよかった!」


 そうやって擦り寄ってくる二人を撫で・殴り可愛がる。


『こいつらやっぱペットに近くないか?』


 そんな事を考えながら屋敷に送り出した。


「ご無事で何よりですタカユキさん」


「お嬢にも心配かけたな。申し訳ない」


 お嬢に声をかけられ馬車に入る。


「いえ、こちらの被害は御座いませんから」


「あ~兵は処断したが?」


「直属では御座いませんから大丈夫です」


 ニコニコと笑顔で応対するお嬢を見ていると、貴族はこれくらいドライでなければやっていけないのだなと思った。

 馬車に揺られ俺が居なくなってからの事を確認する。


「アンチェとアムスが粗相しなかったか?」


「いえ、二人とも礼儀正しくしっかりと護衛を務めて下さいましたよ。メリルとも仲良くしてくださって。アムスさんは獣人の女性からはモテるようですね」


 久しぶりにアムスに殺意をいだいた。まさかメリルにも....と思ったがそれは無さそうだ。


「左様ですか。まぁ今日からはまた以前の護衛レベルに上げますので安心してくださいな。二回に分けて襲撃されると思っていなかったこちらの落ち度ですので」


「宜しくお願いします。あと....ユキさんを泣かせないでくださいね。逃げているときずっと貴方の腕を抱きしめながら泣いてましたよ」


 耳元でユキに聞こえないようにそっと教えてくれた。ユキからしたら初めてのピンチだったのだろう気が動転していてもおかしくない。まだ馬車を発進させて一緒について行くと言う行動が出来ただけよかった。


「ユキ~偉いぞ~しっかりとお嬢を逃がしたんだからさ。だからそんな落ち込んだ様に下ばっか向いてるな」


 今日起きてからずっと下ばかり向いているユキ。膝の上にも乗ってこない。


『腕を抱えて泣いていたのは正直怖いけど....まぁ必死だったんだろうな』


 隣に座るユキを抱き上げ膝に座らせる。ご機嫌になるまで頭を撫でるつもりだ。


『あまりカッコ悪いとこばかり見せられないな....やっぱ修行しないと....』


 修行と同時に王都でユキの喜ぶような物があればと思った。




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