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30話

「さて、まずはミレーヌの件は非常に残念です。でも、ここに通わなくなるわけじゃない。何故オーナーの貴方が出てくるのでしょうか?」

 わざわざ客に嬢がやめたからとオーナーが言って来る必要もない。

そう言うと、控えていたボーイを外へ出し、二人っきりになる。

「そうですね...少し前から急にミレーヌの売上が上がったので確認をさせて頂きました。ここは冒険者の街です。ミレーヌの様な高額な娼婦は少なからずいますが、月に一娼婦があれだけ稼ぎ出すのは並大抵ではありません。その為どう言う人物か会ってみたくなったのですよ。ただ、同郷の方とは思いませんでしたが...」

 そうかもしれない冒険者も稼ぎが多い人間は少なからずいるが、毎日金貨1枚出すような稼ぎの人間は限られる。それに該当する情報がなければ気になるのは必然か...

「そうですか。いやぁかなり入れ込んでまして...開放後の仕事を斡旋しようと思ったんですが、愛人になるのが嫌だったんでしょうね...そんなつもり無いことは話したんですが」

「それは少し関係はあるかもしれませんが、ある意味では幸せな選択なのですがね...実際は開放後にまともに仕事に付ける人間は多くはありません。娼婦などはその中でも特にでしょう。愛人になるか、自分で同じように店を始めるか...そのようにしか選択肢はありません。私はこの娼館のオーナーですが、奴隷たちは私の友人が買い付けを行なっているため、そこまで酷い仕打ちを受けていません。最後に行き着く場所も見えていない子が多いのが、今回の件でしょうね。」

「というと?」

「多分どこかの男と恋仲にでもなったんでしょう。ある程度稼いで二人で過ごすのが夢だったのかと...御贔屓にしてくださっていたタカユキ様には本当に申し訳ないです。」

 まぁ、元々開放金も貯まっていたみたいだし、やめる分には問題ないんだけど...そこまで嫌がられるとは...少し泣きたい...

「まぁ縁がなかったんでしょう、仕方ありません。それよりも、何故日本人の貴方がここでこのようなことをしているんですか?」

 ここが一番重要だ。今まで早乙女しか聞いていなかったが、新しく出てきた日本人だ。もしかして子孫かもしれないが、確認はしておきたい。

「タカユキさんがここにいらっしゃると言う事は、やはり先の戦争で召喚者達が戦ったのでしょうね...私も帝国で50年前に召喚された日本人の生き残りです。」

 さて、どう言う事だろうか。召喚が出来るのはわかるが、戦争の為に召喚か...かなりきな臭い世界に飛ばされたな。これは俺がその召喚者達と一緒と言う事にしておけばいいのかな?

「失礼。生き残りと言われましたが、他の方たちはお亡くなりに?」

「亡くなった者、奴隷になったもの、逃亡したもの。私の時はバスに乗っていたクラスメイトが全員召喚されました。能力が無いものは奴隷として売られ。能力が高ければ、奴隷の首輪で強制的に戦争に参加させられます。私の場合は、首輪を付けられる前に上手く逃亡出来たクラスメイトに助けられました。とは言っても奴隷として売られて1ヶ月後でしたが...」

 この人も一度奴隷を経験しているのか...しかもかなり大変だったようだな...

「私はそのような状況にはならずにここにいるのですが...」

「それは聖国で召喚されたからでは?あそこでしたら強制はされないはずです。元々は聖国が戦争の為に異世界から召喚していたのですが、現在は帝国が悪用しています。まぁ召喚自体が私たちからすれば迷惑極まりないのですが。」

その寂しそうな顔は今までの経験からか辛そうにも見えた。

「50年前と言われましたが、かなりお若く見えますね?」

一応おばさんとは思ったが、かなり若く見える40~50の間くらいだろうか?ステータスには68歳と表示されている。

「この世界に召喚される者は魔力が普通より高くなります。理由はわかりませんが普通の人の1.5倍近くあるようです。その為寿命も相応に長くなります。老化もそれに合わせて遅くなるからこその現象ですね。」

ステータスの魔力値は確かにレベル平均よりは高いがそこまでの高さには思えない。そこまでの違いを生み出せるのが魔力なのかもしれない。

「疑問にお答え頂きありがとう御座います。ミレーヌの事は元々店を任せたかっただけなので、そこまで落胆はしていません。今回は仕方の無かったという事で御暇させていただきます。」

 ボロが出る前に一度整理したい。もしかしたらこれから戦争や国家に巻き込まれて行く可能性が高くなってきた。あまりに酷くなれば守れるものも守れなくなってしまう。まぁ最悪泉周辺に移動してしまえば問題はないのだが...

「少し待ってください。折角来てくださたのですから、紹介させて頂けませんか?」

「そのような事されなくてもまた会いに来ますよマイさん。同郷なのですからお手伝いはさせて下さい。」

どっちにしてもまだ聞かなくてはならない事は山ほどある。これからの俺の充実人生への不安要素は全て除去したい。

「そうですね。では今回は前払いと言うことで少しの報酬とお手伝いをして頂けませんか?」

 厄介事の可能性が高いな...

「時間は掛かりますか?」

「全く...」

「では要件を」

 安請け合いかと少し思ったが、直ぐ終わるならこれからの情報提供も含めて手伝っておくことにする。

話を聞く前にボーイを呼び何かを託ける。

「要件はそこまでのものではありません。奴隷を一人受け持って欲しいだけです。開放も自由ですし娼婦を買うよりは安いのでは?」

「そういうのは...考え方の違いでしょうが、性奴隷は欲しいとは思っていません。気持ちの問題でしょうね。いたらいたで使うでしょうが...」

 男だから欲しいけど...なんか違うんだよな...商売女と奴隷とはこれは一線引けなくなるのが怖いのかねぇ。

そうこうしていると一人の美女と言うよりは美少女が部屋に入ってきた。

髪はクセのない金髪で、瞳は少し赤みを帯びている。肌の色は透き通るように白く血管が少し浮いて見えるほどだ。身長は150少しと行ったところだろう、胸は爆ではないがいい大きさだ。


 うん、奴隷じゃなくて普通に出会いたかったな...あぁ!普通にしてたら出会いなんてないか!自分のルックスじゃ無理だ…どこかに気のいい巨乳の女の子はいないだろうか。


クリクリした目が庇護欲をそそる、可愛らしと美しいの中間ぐらいの顔で俺をじっと見つめてくる美少女。


 俺もあれぐらい鼻筋通ってれば...あぁ欧米人に生まれたかった...


「初めまして、セリアと申します。」

「あぁ、タカユキだ。マイさんから移譲されたセリアだね。これから宜しく。」


ニッコリ笑い相手に挨拶をする。まぁこの子を立派に育てればいいんでしょ。自分ですればいいのに。


「では、タカユキさんこの子の事を宜しくお願いします。」


マイさんは本気で何を考えているのだろうか?何も読み取れない表情は、明らかに歳相応の経験をしている事がわかる。


「えーっとさっき話しましたが、報酬はSランクの嬢の紹介でお願いします。お金は払いますので。」


結局報酬の変更はまだ出来ていなかった。以前聞いていたSランクを今度見れたら娼館通いは自粛しようと考えている。もう頭の中はSランクの娼婦の事ででいっぱいだ!


「それはそれはセリアがそのSランクで御座います。」

 わーお。ちょっと思ったけど悲しいかな、家の中にいる子にはあまり触れたく無いのが心情です。


「はぁ...わかりました。また今度違った子でお願いします...」


少し落胆しながらセリアの状態を確認する。


名前:セリアーデ

種族:ヒューマン

年齢:16

性別:女

職業:奴隷


LV:20

HP:560/4,800

MP:202/1,950

状態:正常


気力:240

筋力:22

魔力:78

精神:25

防御力:150

魔耐久力:90


<スキル> 風魔法LV:3 水魔法LV:2 剣術LV:3

<称号> 亡国の姫



 ...厄介!なんでこんな人、娼館にいるんだ。しかもこんな秘境に近い危ない街に。どうすっかな~亡国の姫確認したけど...国を取り戻す戦争時はステータス二倍って...使えんなー。しかもグリンゼラってアラン達の主人ってことか?とりあえずアラン達に任せるか...


多分顔に出ていたのだろう。マイさんとセリアは俺の事をじっと観察していた。


「マイさん、厄介事に巻き込むのは困ります。」

「厄介事にならないようにお願いします。」


笑いながら言うマイさんはマジで厄介だ。


「それに俺がこの子をどうするかなんて判らないじゃないですか?もしかしたら、結構酷い事するかもしれませんよ?」


少しいやらしいくセリアを見ると...


「構いません。今私は奴隷ですので、求められればどのような事でも。」


その決意に満ちた表情は歳相応にはみえなかった。ミレーヌでそれなりの大人に見えたがこの子を見たあとだと目力が違う。これが王族なのかもしれないな...


「奴隷の事を膝の上に置いて娘のように可愛がる人に、そのような事はできないでしょう。」

笑いながらマイさんが言う。


あぁ、召喚者と言う事はジョエルさんとも親交はあるのか。まぁ必要なことだから話したんだろうし今回はいいだろう。領都に行ったときに変な事していれば、ここでの紹介もこれからの対応も変わってきたって事だろうし良いようにとらえよう。


「わかりました...お預かりします。」


 はぁ...いい子いないかなぁ


そう言いながらその場で屋敷までのゲートを開く。もはや見せても大丈夫だろう。多分ジョエルさんは気づいているだろうし、召喚者の中には似たような人もいただろう。

全く驚いた様子のないマイさんを見ながらセリアをゲートにくぐらせる。


「色々落ち着きましたらまた来ます。ボーイに伝えれば大丈夫ですか?」

「ええ、宜しくお願いします」

「承りました。それでは」


 あぁ...俺のリビドーはどうしようか...



購入した屋敷へのゲートをくぐると綺麗に整えられた書斎に出た。初めて中に入った時の雰囲気も無くなっており、埃ひとつない。


「セリア。これからこの屋敷で過ごしてくれ。本当はミレーヌに店舗を任せたかったが...まぁいい。俺はこれから一週間はこちらに通いでしか来ない。今から多分見知った顔に合うと思うが好きに過ごしてくれ。一応性奴隷として扱うから家の事はしなくていい。」


セリアにこれからの事を話しながらリビングの方に向かう。リビングに俺が向かっているのが分かったのだろう、奴隷の子供たちが飛び出してきた。


「おかえりなさいご主人様!」

「おかえりご主人。」


二人の頭を撫でただいまと言ってからリビングに入る。

それぞれがおかえりなさいと言ってくれていたが、セリアの顔を見てアランとアンネの顔が強ばる。嬉しそうでもあり悲しそでもあり何とも言えない表情だ。


「これからお前たちと過ごすことになるセリアだ。仲良くしてくれ。この子には何もさせなくてもいいが、外には出さないようにしてくれ。セリアも、日に当りたい場合は二階のテラスでしばらくは我慢してくれ。一週間後なら少しは動けるようにしてやれるから。」


セリアは聞いていたのか聞いていなかったのか、涙を流しながら頷いている。


「やっぱりアランとアンネはセリアの関係者か?」


分かっていたが聞いてみると、アンネが答えてくれた。

「私たちはセリアー...セリアさん付きでしたので...。もう亡くなっているものとばかり思っておりましたが。これほど嬉しいことは御座いません。」


そう言ってアンネも目を潤ませていた。

セリアの背中をアンネの所へ押し出すとセリアはすぐにアンネに駆け寄り抱きついた。


「うぅぅ....アンネ、アンネ。無事でよかったよぅぅ...」

「私もまたお会い出来て嬉しく思いますよ姫様...」


そう言って抱き合っている二人は母と子のように見えた。王族だから家族よりも側仕えの方が一緒にいる時間は長いのかもしれない。


「アラン。あとは任せた。明日は多分夕方か日が暮れてから来ると思う。飯はいらない。金は大丈夫か?」

「問題ありません旦那様。セリアさんにはこれから何か教える事など御座いますか?」

「一応、性奴隷として扱う。俺の中で、その奴隷は他の事はしなくていいと思っている。なので何もさせなくていい。本人の自主性は尊重してやってくれ。宜しく」


そう言ってクランへゲートを開くと、アランは深々とお辞儀をしたままゲートが消えるまで頭を下げていた。



部屋に戻るとユキが一人で待っていたのだろう。ベッドで座って待っていた。


「ただいまユキ。」

「...おかえり...なさい」

「飯は食べたか?」

ユキは首を横に振った。


「俺が居なくても好きに食べればいいんだぞ?そのためにお金も渡してあるんだから。」

ユキには銀貨数枚を渡してある毎日の食費には十分だ。

そう言ってユキの顔を見ていると、ユキが立ち上がり袖を引っ張って外に連れて行こうとする。

「どうした?」

「...ごはん...」

それを見て自分も一人暮らしの時に誰かとご飯が食べたいと思ったのを今更ながらに思い返した。

「じゃあ行くか。」

ユキの両脇に手を入れ、持ち上げて抱っこする。そのまま食堂のある外へ歩きだした。




翌日、ユキはまだ寝ていたのでベッドに残し。クランの訓練施設で件を振っていた。

「いつまでもユキと練る訳にもいかんしなぁ...ベッド小さいの作るかな?でも直ぐ大きくなるだろうし...いっそのこと普通に作ってしまうかな?」

「おう!タカユキおはよう」

そんな事を考えているとロレッタが訓練施設に入ってきた。

「おはよう御座います。戻られたんですね?どうでしたか?」

「結局4名死亡だ。これだけの被害で済んだのは不幸中の幸いだが...今回はよくわからない男の成果が大きい。こっちの事を知っていたらしいのが、なおさらによくわからない。しかも帰ってきてみれば、重症のはずのヴェリレがピンピンしてやがる。まして、うちらより早くここにいるのがなおさらに不思議でな。」

まぁ、仕方ないでしょう。俺がやったし。

「結果がよければいいじゃないですか。」

「そう言う訳にもいかなくてな...今回の件は「餓狼の群れ」の財産を分配して保証されるが、死んだ四人はいずれも家族がいてなぁ...保証をどうするか今見当しているんだ。多分ダンジョン症候群にかかる奴も出てくるから保証額も増える。」

「そうですか...で、何故私にその話を?」

「奴隷を買うほど余裕があるなら、部屋を空けてもらってもいいだろうか?最初の契約と違うと言われたらそれまでなんだが...あの部屋には家族一つ分は軽く生活出来るから...。」

まぁ仕方無いでしょう、困った時はお互い様。むしろ出る口実になったかな?

「そうですね...では私はクランを出ましょう。領都で住んでみるのもいいかもしれませんしね。あとお金の件はギュレック商会にお願いするんですよね?この前ジョエルさんが融資の話してましたよ?」

「その件も今日行って話してくるつもりだ。本当に申し訳ない。」

「気にしなくて大丈夫ですよ。色々と教えていただきましたし。私自身クラン自体にはあまり貢献していませんしね。部屋を空けるくらいで貢献出来るのであれば、そうさせていただきますよ。では今日中に荷物は纏めますんで、行く宛がなさそうな子達を迎え入れてあげて下さい。」

「いや...そんな早くでなくとも......わかった、甘えさせてもらおう。もし何か困ればいくらでもクランを頼てくれ。ただこの国ではそう支部が多い訳では無い。王都に一応一番大きな支部があるからもし行くのであれば寄ってみるといい。」

「いやいや、まだ領都までしか行ったことありませんて。まぁいつかいくでしょうから覚えておきます。まぁまだ街にはいますから。声をかけてください。」

「そうさせてもらう。申し訳ない。」

そう言って終始ロレッタさんは頭を下げていた。

 ロレッタさんも大変だなぁ...上手くクランが回ってくれればいいけど...

部屋に戻りながら考えていると、銀龍の盾のメンバーに会う。

「よっ!」

「あぁタカユキさん。おはよう御座います。」

「アルドー部屋の掃除か?」

「いえ、部屋を空けるために引越しです!えっと...その...アンジュと住むことにしました。今まで使っていた家族と部屋を交換する感じですかね。それなりに稼ぎも良くなってきましたんで...」

嬉しそうに言うアルドーをすごく憎たらしく思ったが、ここは大人の余裕で対処する。

「そ、っそそっか...いいんじゃないか?よかったなアルドーおめでとう。」

「ありがとう御座います?タカユキさん体調大丈夫ですか?顔が辛そうですが?」

「大丈夫、ん、じゃあな~」

 はぁ...俺も同棲したい。とりあえずユキを撫でて我慢しよう。

部屋に戻りユキの頭をナデナデしまっくってから部屋を魔法で掃除してそのまま屋敷にゲートで向かった。ユキは撫でられるのが嬉しいのか、撫で終わったあとも終始俺の袖を引っ張り手を頭の上に乗せようとしていた。

 ...可愛いなぁ...








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