28話
今日からオークション開始だ。
朝から街のいたるところで屋台が出ている。
飲食系ばかりでなく、魔道具系の物も出ているようで興味引いたため色々見回ってみる。
「これはなんの魔道具ですが?」
「ファイアランスを20発打てる魔道具だよ。金貨1枚だ安だろ?」
かなり小さい魔石だがそこまで打てるのであればかなり安いように思える。普通の魔法使いが打てる数はそんなに多くない。魔法使い、魔術師とも言われているようだが、この世界で生まれてくる人には魔法の適正が生来決まっているようで属性が多いほど優遇されている。身近な魔術師であるカラムも火以外に水と土を持っている。属性無しの人は居ないらしく何らかの属性は持っているらしい。ただ他の属性を使うには刻印魔法を施した魔道具や魔石を使用した魔道具を持つ必要がある。
「タカユキさん行きますよ。」
そう言われ慌ててジョエルさんのあとを追う。
直ぐに追いつくとジョエルさんが口を開いた。
「屋台では魔道具などは買わないでください。粗悪品しか売っておりませんし、怪我を追う場合もあります。基本はモグリや新人が屋台で販売していますので、それなりの目をもってから購入などは検討してくださ。」
「すみません、ありがとうございます。」
...そういえば、また鑑定を使うのを忘れてたな...便利なものがあるんだから使うに越した事はないんだけど...普段使い慣れているわけでないし本当に必要な時しか使ってないな...
自分の行動を反省しながらジョエルさんに付いていくと、街の広場だろうか。多くの人が座れる円形の場所についた。コロッセオとはまた違うようで、中央に行くにつれて沈んでいるすり鉢状の場所だった。
「今日の出品は奴隷ですね。明日は食材や魔道具、明後日が武器と宝物です。」
毎月開かれているこのオークションは値段が高くなるものほど後ろに回される。そのことから今回の奴隷はかなり安いものしか置いていないようだ。
「さて、そろそろ始まりますよ。欲しいものがあれば私に言ってください。値段の方は...まぁタカユキさんの持っているものでお釣りがきますので、そこまで気にしなくても大丈夫です。」
奴隷は一人一人つれてこられるようだ。はじめに連れてこられたのは女性の奴隷だ。
「まず最初の奴隷をご紹介致します。グレンバルト王国からの流民になります。歳は18、女です。体力、健康状態などに問題ありません。不法滞在による奴隷落ちの為、奴隷からの契約なしです。処女のため値段は金貨200枚からです。では始めます!」
茶色の貫頭衣を来た女性の目は死んでいた。まぁ仕方の無いことだろう。俺が全部助ける事は出来ない。そのれをしようとすれば絶対に世界は歪む。昔勇者の早乙女さんがこの制度を残しているのなら消すことが出来ないような世界なのだろう。今も奴隷からの契約の話があったように出来るだけの改革は行なったはずだ。ここらへんでは種族差別もしていない。ならこれ以上望むのも難しいだろう。
奴隷がなくなっても人身売買があるように、結局はわからないように裏で行われるようになる。それを可視化しているだけいいのではないだろうか?何が正解かは分からないが今はこれで回っている。それに苦言を呈するのはやめておこう。
....205....210.....214.......250..........他に上がりませんか!...では250枚で落札ですおめでとうございます!
そのあとも奴隷のオークションは進んでいく。とりあえずさっきの暗い気持ちをはらい、奴隷に鑑定をかけていく。
どの人も普通だな農民の人ばかりしかも女ばかりだな...これが普通かな
いつの間に第一部が終了したようで周りから人が去っていく。
「性奴隷は終了のようですね。では少し休憩してから二部に着ましょう。」
そういって近くにある喫茶店に入った。中では先ほどオークションに参加していた商人や冒険者などもいて、奴隷についての話をしているようだ。
.....ガヤガヤ......ガヤガヤ......
「どうでしたか初めてのオークションは?」
「そうですね...あまり気分のいいものではないですね。人を商品として扱うのは流石に気が引けます。」
「普通はそうでなくてはならないので正常な反応ですよ。ただ周りの商人の目を見ましたか?もう人に向ける目ではないのですよ。そうやって商人は利に聡く割り切って行かなければ痛い目どころじゃ済まなくなります。タカユキさんのような目をしている方で商人は務まりません。まぁする必要が無いよう私がサポートするのですが。」
そう言って笑いかけてくれるジョエルさんがとても心ず強く感じた反面、申し訳なさもでてくる。
....あぁ俺精神では30越えてるのにな...こっちにきてからチョンボばっかしてるなぁ...冷徹な中にも優しさを...俺には出来そうにないな...
「タカユキさんは娼館通いがお好きなので性奴隷を購入するかと思いましたが...」
「あぁ、性奴隷とそうでないのの違いがわからなかったもので。購入したいかどうかは別として、契約云々の関係ですか?」
「そうですね経緯により奴隷の待遇は変わりますが、国内で自ら奴隷落ちした者以外はほとんどが契約無しですね。それ以外だと大体は性行為なしや戦闘なしなどが契約に盛り込まれますね。一部は性奴隷にしか使い道が無い奴隷、二部は戦闘や家事ができる契約なし、三部は戦闘や家事ができ契約がある者、最後に四部がその日の目玉になる商品または在庫処分のセット売りですね。」
「ではセット売りで大量に購入して家事などを覚えさせた方がよさそうですね。」
「それはどうかと、安いモノはそれなりに理由があるのですよ。自分では死ねないからとりあえず生きているや、欠損部位があり仕事ができないなど。当然のようにやる気もありませんから買うだけ無駄ですね。女性などは大体は娼館や炭鉱に買われますが、男性の場合は処分されることもあります。」
「もったいなくはないんですか?」
「昔は禁呪とされる生命回帰に使われたのですが、この国は法律で禁じてますからね。しかも文献によると100人単位で必要とか。そこまでの人数を集めるのも大変ですし、失敗も多いらしいので試す人はいないでしょう。処分といっても回復魔法や解剖などの人体実験に使われるので無駄ではないんですよ。」
まるで自分がしようとしたように語るジョエルは遠い目をしていた。
二部も順調に始まり次から次へ売れていく。
「ジェスタ領で不法滞在していた狼族の獣人です。歳は24、男です。戦闘経験は豊富のようで健康状態は不良です契約は無しになってます。金貨100枚からです。では始めます!」
「「「............。」」」
「こんなことあるんですね。」
「結構ありますよ。獣人系は人気なのですが、あの奴隷は瀕死ですからね良く持っている方です。」
その獣人の男は腕が折れ左目は潰れており、ステージまでは引きずってこられていた。息も細くそんなに長くないだろう。
「では、競り下げに移行します!金貨1枚単位からです!始めます!」
....99...98...97...96...........
競り下げはマイニング方式とも言われるオランダのオークション方式だ。買い手が設定した金額を下げていき一番最初に手をあげた人のモノになる。
...75...74...73.....
「ジョエルさんいくらまで下がると思いますか?」
「そうですね...金貨50枚前後と言った所でしょうか。特級ポーション使用で50枚なので、妥当ですかね。」
「では、50枚でお願いします」
「よろしいので?」
「はい」
...54...53...52...51....50..
「上がりました落札です。ポーションはいかが致しますか?」
「いらん!その代わり直ぐにこちらにくれ。」
そのまま裏に連れて行かれる。
「取引が終わっておりませんので受け渡しは出来ません。」
「ほれ、50枚だ!」
そう言って直ぐに奴隷の契約と金貨を渡しその場を去る。契約の時に金の首輪に魔力が吸い込まれたが気にしない。気配を消し建物の間にゲートを開く。すぐに泉の原液の中に投入するが、目が浸からない。目を浸けようと逆さにするが余りにもバランスが悪い。
…浸からない…目が浸からない…早く戻りたいのに目が浸からない…
そんな事をグルグルと考えていると閃いた。
雨樋の様に水を流し目に直接流れ込む様にする。
「よし!スリープ」
睡眠魔法をかけて戻った。
戻った時にはまだ1人しか進んでいなかった。
「早かったですね。何故あの獣人の購入を?」
何処に行ってたか聞かないあたりがジョエルさんクオリティだろう。
「いえ、新しい店舗の護衛にでもならないかと思いまして。」
「いい選択ですね。獣人族は助けられた人に尽くしますから。値段も妥当かと片目がなくとも回復出来れば金貨300枚にはなるでしょう。ちなみにエルフ女性、エルフ男性、獣人女性、獣人男性、人族男性の順で値がつきます。人族女性は高低差があるので除きましたが。」
その後はこれと言った人が居なかった。
「三部はどうしますか?余りオススメはしないですが…」
「どうしてですか?」
「奴隷を奴隷と扱う上で中途半端になります。それであれば人を雇って育てる方がいいかと。人それぞれの考え方によりますが…」
契約奴隷はかなり安く販売される。それは開放金を支払いやすくするためであり、一種の救済政策みたいなものだ。そのためか安易になる人が多かったため、その都度仕事内容や契約内容の齟齬申請などでトラブルの元になっていた。しかも開放後は直ぐに自分の村や街に戻る者が多く、仕事を教えても開放後には居なくなってしまう場合が多いためこの国では嫌われている。開放を渋ろうとすれば王国法で所有者が裁かれる場合もあるからたまったものじゃない。
「それなら無くせばいいのではないのですか?」
「これも雇用を増やすためには一応は必要な処置です。トラブルが多くなってからは、契約奴隷として販売され、売れ残る場合は契約無しになりますので結局は扱いは変わらなくなります。時間伸ばしでしかないのですよ。」
そのあとも契約奴隷について聞いてみたがあまり良さそうではないので三部は見送ることにした。
四部開始の時間になったので喫茶店から広場に向かう。
「かなりの人が集まってますね。」
「一日目の出品は発表されませんから、皆メインが気になるのでしょうね。」
回りを見てみると、真剣な顔の商人や欲に濁った目をしている貴族等が多くいる。冒険者が少ないのはお金の次元が変わるかららしい。
「お集まりの皆様。本日最後のオークションを始めさせて頂きます!」
.....オォォォォ!!!.....
会場が揺れる程の声が響きわたりオークションが始まった。
最初に出てきたのはウサギの獣人女性だった。可愛らしい顔だが年齢は25歳なのに驚いた。しかも爆乳だ!思わず興奮してしまう。スキルも剣術・盾術・火魔法を持っている。非処女だが金貨500枚からスタートだった。
....600...700...800...1000....1500........
どんどん値がつり上がっていく。いままでは500枚を越えればいい方だったのに。
「タカユキさんは入札しなくていいのですか?」
「そうですね...では3000でお願いします。」
あまり欲しいとは思えなかったがこの熱気と勢いに入札してみたくなった。
「3000が上がりました!他は他はございませんか!」
一度会場が静まりかえるが...
「4000が上がりました!」
何故か貴族がこちらを睨みつけてくる。まぁ別にいいんだけど。
「他にございませんか?では落札です!おめでとうございます!」
落札は出来なかったが少しは場の雰囲気を楽しめた。正直爆乳には心をもっていかれたが、欲しいかと言われれば複雑だった。奴隷の首輪には意識や感情を変える程の効果は無い。それでも何か嫌だった。まぁこれはただのエゴだろうが。
そのあとも没落貴族の令嬢や冒険者ランクA+の男性などが高値で取引されていく。
「もうそろそろ終わってしまいますがいいのですか?」
「まぁ仕方ありませんもし買えないようならまた今度か、奴隷商の方にでも行ってみましょう。」
終わりに近づいたのだろう本日の一番高値15000枚で亡国グリンゼラ王国の侯爵令嬢が落札された。正直そこまで美人かとは思ったが、ジョエルさん曰く政治的取引に使う可能性があるとのことだった。
「ここからは流れ品になりますので、受け取り希望の方は後部引き取り所の方まで足をお運びください。」
司会からの言葉で多くの人が移動を開始し、広場には最後まで見ている見物人ぐらいしかいなかった。
「では再開させていただきます。次の商品は...」
「まだ見ていきますか?」
「まぁ折角ですし最後まで見ていきましょう。」
「あまり気分良くないオークションかもしれませんよ...」
話していると、一人の老人が出てきた。鑑定してみたが全くもって普通だった。結局値が付かず流れた。
次は腰の伸びたお祖父さんだったが鑑定をかけ直ぐにジョエルに買ってもらう。
「ジョエルさんお願いします。」
「いいんですか?」
「はい」
金貨50枚で落札し、次のお祖母さんも金貨50枚で落札した。
「本当によかったのですか?老人や子供などはあまり奴隷としての価値が付きませんので今回はかなり割高な購入かと思いますが。」
「ジョエルさん、私も鑑定はできますよ。あまり使ってはいませんでしたが。あの二人はかなり高いステータス偽装していますが王族付きだったみたいです。家令としてメイドとしてまだ行けます。」
「それはそうですが年齢が二人とも私と変わらず50を超えてますから...」
「ジョエルさんだって今こうしてサポートしてくれているじゃないですか。大丈夫ですよ。」
この世界では魔力量の関係で、人間でも長ければ150歳まで生きる人がいるそうだ。ただほとんどの人は魔物との戦闘が生業ではないのでレベルも魔力も上がらない。必然的に50を越えた辺りから人としての価値は無くなっていく。
そんな話の間もどんどんオークションは進んで行く。買われるもの流れるもの。どちらに転んでも絶望だろう状況に奴隷はほぼ無反応である。
「やはり最後の奴隷は前と違って希望も何も無い表情ですね。」
「最後に出される奴隷はどこも買い手が付かず、言わば処分待ち状態ですからね。買われたとしても、娼館や炭鉱、あとは買った人の趣味で如何ようにも扱われますよ。安いだけに...それが分かっているからこそのあの表情ですね。」
「次は11歳の狼族の少女です。処女の為金貨100枚から始めます。」
「この子は買います。」
「タカユキさん...いくらなんでも幼いのでは...」
「違いますから。」
明らかに汚らしい体の小さな女の子であり、鑑定がなければ本当に11歳か疑うレベルである。多分8・9歳でも通るのではないだろうか、明らかに栄養が足りていない。
金貨101枚で落札だった。
次に来た少女も14歳だが12歳くらいの体型の人族であった。スキルに算術や裁縫が入っていたので買いにした。金貨150枚と高かったが仕方がない。
「タカユキさん...流石に...」
ジョエルさんは分かって言っているようだが、後ろのレイリさんの目がマジ怖い。多分短剣に手をかけているのでは無いだろうか。
「では本日最後の商品になります。」
そう言って通されたのはエルフの少女であった。
「エルフの少女12歳です。処女ですが色々な場所で性処理要因として使用されいました。金貨50枚から始めます。」
「ん?エルフなのに安いですね。」
「それはですね...生まれてきてはいけない少女だからすよ。よく12歳まで生きられたものです...」
「それは...あぁ...見放されし者ですか。」
「そうです。その称号を持つ者は神に見放された者。教会から異端人物に指定されます。また、この世界ではどこにも居場所はありませんし、直ぐに生来の体の弱さから死んでしまいます。スキルも持ちませんし取得出来ないらしいです。しかも一緒に生活をすると神から見放されるとまことしやかに言われていますね。」
「そうですか...買いです」
俺の言葉にジョエルがこちらを見る。
「冗談でしょう?流石にあの称号持ちは無駄金になります。」
「大丈夫です。私が育てます。」
頑なに再考を促すジョエルに、かなり本気の圧力をかけようと顔に力がはいる。
「「....................。」」
「はぁ...初めて貴方の本気の目を見ましたよ...」
そう言って金貨50枚で落札した。
ちなみにレイリさんの短剣が首に当てられていたことは気付いてないことにする。
ジョエルさんと一緒にお金を払いに向かう。お金を渡し商品である奴隷の登録を行う。
ジョエルさんにはそのまま宿に戻ってもらい奴隷達を一度集めた。
「これから君たちの主人となるタカユキだ宜しく頼む。ではまずこのポーションを飲んでくれ。」
奴隷たちは少なからず疲労や衰弱が状態に出ていた。その為先に体の回復を行なってもらう。
「落ち着いたようだな。では行くぞ。」
そう言って店舗の方に連れていった。
エルフ少女は飲んだ後もよくこけるので負ぶってきた。店舗に到着し中を見渡す。店舗の備品と家財道具は埃はかぶっていたが使えるものばかりだったので、手当り次第に魔法をかけていく。あらかた片付けて全員を二階のリビングに集めた。
「一応自己紹介をしてもらえるか?」
そう言うとお祖父さんから自己紹介を始める。
「私はアランと申します。家事や経理などができます。」
「私はアンネと申します、アランとは夫婦で家事や料理ができます。」
「わたしはアンチェ。力がつよい」
「ネ、ネリアと言います、計算が得意です!」
「.............。」
「君の名前は....ないようだね。それとも忘れてしまったのかな....」
エルフ少女以外の子はこれから何を命令されるかと不安と恐怖がないまぜの目を、老人二人はどうなってももういいのかこちらの真意を探る目をしている。エルフ少女は虚ろな目で何にも反応していない。
「さて、ではここに金貨20枚ある。アランとアンネはこれで子供達に新しい服屋や靴下着やベッド等必要な物を揃えてあげてくれ。あと獣人の男を後で連れてくるからそいつの分もお願いする。今はとりあえず風呂に入って身体を綺麗にしてくれ。」
そういうとアンネは子供たちを風呂場にアランは外に買い物にと動き出した。
「そういえばアイツ寒くないかな?」そう言ってゲートで水晶に向かう。
狼君は冷たくなっていた...別に死んではいないがこのままなら死ぬかもしれない。とりあえず水から出して乾燥させる。乾燥させたあと風呂にコイツを入れるのは、毛が大変だと思い浄化の生活魔法を試してみる。綺麗になったようなので担いで店舗に戻った。
担ぎながら階段を登っていくと風呂に入れ終わったのだろう、タオルしか巻いていない三人が立っていた。流石にマズイと思い辺りを見回すがレイリさんは居なくホッとした。索敵をあの人には使った事がないが反応しなさそうで怖い。
少女たちにはとりあえず俺特性のTシャツを着せておいた。まぁ可愛く見えるよね。
アンチェは少し暗い銀いろの髪で肌は黒ずんでいた汚れも無くなり綺麗な肌色になった。ネリアは赤と言うよりエンジ色に近い色合いの髪で真っ白な肌だ。エルフ少女は白色の髪で真っ白な肌だが正直病的過ぎて怖い。みんなしっぽや耳の違いはあるもののいたって普通の人に見える。問題は担いでる奴が狼を歩かせたような感じだから困る。獣人には色々な種類と言うか体の種類があるようで、人型にしっぽと耳か、人型に顔の形だけ獣系か、人型だが完璧獣かの違いがある。
この狼君は完璧な獣人で毛が多いのだ。
...コイツ専用の小屋でもつくるか?...
「旦那様ご所望の品を買ってまいりました。」
いつの間にかアランが帰ってきたようで品物を子供たちに渡し着替えさせる。
アランを風呂に向かわせ、入れ替わりにかえってきたアンネにエルフ少女の服を着替えさせる。
...この子大丈夫かなぁ...なんとかしてあげたいんだけど...
全てが終わる頃にはもう日が落ちていた。
夕食を簡単に作り全員に食べさせる。アンネが代わろうとしてきたが今回は断って座らせた。椅子が6人分しかないためエルフ少女を膝の上に座らせる。
...姉貴の子供も今頃はこれぐらいか...
望郷の念をにじませながら夕食を済ませる。狼君はアムスと言うそうだ起きたときは、自分の状態に興奮したのだろう遠吠えしようとしたので殴った。それからおとなしくなった。
全員が食べ終わったことを確認してから買った理由を伝える。
「これからアランとアンネは俺の世話をしてもらうことになる。アンチェとネリアはここで服飾のお店のお手伝いだ。まだ開店するまで一ヵ月以上かかると思うが、それまではアランとアンネに面倒を見てもらえ。アムスはここで警備をしてくれ。この子達を守るのがお前の仕事だ。それぞれの給金は一ヵ月後から発生する。開放金を貯めるのも好きに使うのも構わないが、なるべく今いる仲間の為になるように行動してくれることを俺はお願いしたい。最後に...」
そう言ってエルフ少女を膝の上から持ち上げ自分の方へ向かせる。
「お前は今まで頑張って生きてきたようだな。これからも生き抜いて行けるよう俺が強くしてやる。」
笑いかけるようにエルフ少女に言うと少し瞳が揺れたように見えた。