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25話

ストック作成が間に合いません。ゆっくり更新していきたいと思います。

ダンジョンB14階に戻って来ている。最初はしらみ潰しに探そうかと思っていたが、元々は自分のバッグである。自分と似たような魔力を探せないか試していると違いがわかるようになってきた。


 違いがわかる男になれたか...そう言えばタバコ吸ってないな...


もう二年以上吸ってない相棒に思いを馳せながら、B15階へと足を進めた。




下の階へ行くほどに魔物の数は増えているように感じた。B10階にはさっき助けた奴らもいる為、もし通過されでもしたらひとたまりもない。全て殲滅しながら、索敵でバッグを探す。


「無いな...完璧18階か。」


そう思いながら足を進めていく。

B16、17階層にも無かったが変化はあった。魔物の数もさることながら、個体の種類も変わってきていた。


「こいつは確か20階層以上の階層でしかいないはず...」


そこにいたのはヘルハウンドであった。現在到達している最下層のB35階を縄張りとしているはずの魔物だ。レベルは250とこの階層ではずば抜けている。その他にもゴブやオークの上位種がいるので、冒険者達ではどうしようも無いのがわかる。


「おかしいな...氾濫の時も上位種は確認されているが多すぎないか?」


訝しみながらB18階へと向かった。



「無いな、魔物が持ち去るなら装備も持ち去るだろうし...」


直ぐに索敵で探したが全く見つからなかった。それよりもこの階層は魔物が溢れ過ぎていたので殲滅を始める。


 めんどいな、生きてる奴はいなさそうだしな...緑はダンジョンだから回復するだろう。


「ハイドロボム!」


轟音が階層に響き渡る...しかし一発では死なないようで、空間魔法で自分を守り次の魔法を使う。


「核融合!」


轟音はさっき程ではないが熱量が半端ない。辺り一面が一瞬で蒸発するように無くなり、地表は硝子化している。


「これは...もどるのかな?まぁダンジョンだし大丈夫だろ。」


索敵を行うと魔物は一匹も居なかったが、変な反応が返ってくる。


「ん?なんかあるな。」



その方向に向けて移動していくとまた魔物が下の階層から湧き出て来た。それらを潰しながら進んで見ると、何かの缶詰の残骸が数個残っていた。あの熱量でよく残っていたなと思ったが、周りに魔物が多くいたのだろう、ここらへんは焼け残りが少なからず残っていた。


「もう少し改良しないとな~これじゃ分厚い肉壁と防御力持ってたら殺しきれないしな.....さて鑑定しますかね。」




・魔寄せの缶詰

 マリビレッタ帝国ダンジョン「永遠の常闇」で採取される魔物の好む匂いを放つ草、常闇草を煮詰めたものを鉄の缶に詰めたもの。

 帝国では生産は中止されているが、帝国内の裏市場(ブラックマーケット)では安価で売られている。

 低レベルダンジョンなどでのレベル上げには最高の逸品である。



 ほら来た厄介事。バッグもないし、変なの見つけるし、とりあえず帰るか。


缶詰をミスリルで作った箱に納め、回収し一度街に戻ることにする。







自分の部屋に戻り誰も居ないか索敵を行う。クランの建物前が未だに騒がしいのを感じて、街に何かあったのかと思い索敵を一気に広げる。


「...街には異常はないが.........とりあえず今回はギルド長に合うしかなさそうだな...」




フードを目深にかぶり口元をマスクで隠す。気配を消しながら慌ただしいクラン前から、すぐ横のギルドへと入りカルロスのカウンターまで来た。


「おい。」


声をかけられたカルロスは「ビクッ」っと反応し驚きに目を見開いていたが、直ぐにいつものような冷静な顔に戻った。さすがに真面目に気配を消したら、実力者であっても見抜けないのだろう。しかもいきなり如何にも怪しい男が目の前にいたら、切りかかられても文句はいえないなと思いながら見ていると。


「如何いたしましたか?」


いつもの丁寧な口調で訪ねてくるカルロスに、「流石だなー」と思い要件を伝えることにする。


「ギルド長に会わせろ。急用だ。」


 こんな態度はあんましたくないな...


「少々お待ち下さい」


そう言ってカルロスは奥に引っ込んでいった。


 もしかして戦闘準備?いやー流石に態度悪すぎたかなー?


そうこうしていると、カルロスが戻ってきて道案内をしてくれるようだ。一応警戒はしながらゆっくりとついていく。


「すまんな」


「いえ、これも仕事ですので」


本当に紳士的な人だ公私の混同なく仕事に真面目。外見がこうじゃなきゃモテるだろうに...そんな事を考えていると、三階奧の部屋まで連れてこられた。外観は石造りだが内装には木を使っている落ち着いた建物内は、外の喧騒とは違い静まり返っている。その中でもこの扉は金で意匠を凝らせた物が使われており、他の扉との違いがすぐにわかる。


中からは強い魔力が感じられる事から、カルロスが事前に俺の事をある程度伝えたのだろう。威圧の意味で魔力を流しているのだろう。


...コンッコンッコンッ....「お連れしました」....「入れ」...


中からは品のよい渋い男の声が聞こえてきた。

扉をカルロスに開けてもらい入室すると、いきなり魔力の波動をぶつけられた。


 こういう使い方は初めてだな。


研究内容が増えたなと思いながら、奧の執務机に腰掛けている40代前半に見える男性を見据える。


 なっ!...エルフなら女にしろ!


その男性の耳は横に尖っており明らかに人族のものでは無かった。その男性もこちらの意図を図りかねているのだろう、眉間にシワを寄せながら険しい表情をしている。



ちくしょう!女性のエルフに会いたい!などと思っているとダンディーエルフが口を開いた。


「どのような要件で私に会いにこられたのですか?あなたと私に面識はないように思われますが?」


「いきなりの訪問で気分を害されたなら謝ろう。要件はこれだ。」


そう言いながら右手で異空間からミスリルの箱を取り出す。


「これが「神代の迷宮」のB18階にあった。心当たりはあるか?」


中を開きダンディーエルフに見せると少し驚きながら首を横に振る。


「これは魔寄せの缶詰の残骸ですね...私どもは把握しておりませんし入手も基本は出来ません。」


 鑑定もってんな。ステータスは名前blankにしてあるし全てゼロにしてあるからわからないだろうな。


「そんな表の事情はどうでもいい。こんな気配を消せる手練がいるんだ、ギルドでも何か掴んでいるんだろ?」


「「.......。」」


少しの間黙考した後、ダンディーエルフは口を開く


「今回の件に関しては一切感知していませんでした。解っていたらこのような自体は未然に防ぐのが私たちの仕事です。状況自体はジーン君達が到着するよりひと足早く届いてます。」


そりゃそうか。


「ではクラン「餓狼の群れ」の設立許可を取り消し、身柄を拘束してくれ。あまり時間がかかるのは面倒だ。」


「それはそのクランが今回の一件に関わっていると言うことですか?」


「さっさとしろ、でないと実行メンバーに飛ばれるぞ。ここで問答するのは手順に従っただけだ。お前には強い権限と合わせて責任もあるだろう?責務をまっとうすれば私は何も言わない。遅れるようであれば私が処断するだけだ。」


そう言ってさっきやられたように四方に向かって魔力を放った。


「...ッッッッ!?」


ダンディーエルフはこちらの事を過小評価していなかったが上限を誤ったようだ。かなり怯えているのが目の色から伺える。


ギルド長には管理している街のクランに対して絶対的な権限が付与されている。言い方を変えるならクランはギルドの許可の元において設立される為、クラン内の財産や権限など運営していくのに必要なものの接収もおこなう事ができるのがギルド長である。


「直ぐに行動を起こせ。接収した中に別のクランの持ち物があるだろうから確実に返却させろ。」


そう言って後ろを振り向くとカルロスが倒れていた。


 ......カルロース!







遠くから気配を消しながら様子を伺っていると、ギルドの裏口から三人の手練が出ていくのがわかった。即対応してくれたのだろう、バッグの反応は「餓狼の群れ」のクランハウス内で動かずに拘束された連中が運び出されていく。その中には初めてギルドに行ったときに当たってきたパーティの姿もあった。



「これで終了かな~あとは、金の問題かぁ...」


今回少なく見ても4人は死んでいる。家族持ちの人もいたはずだ。そうなるとクランとしての保証を最低限行わなくてはならない。仕方ないのでお金の調達に出向く事にする。








「ジョエルさんいる?」


来たのはギュレック商会だ。店員にそう伝えると直ぐに奥に通された。


「タカユキさん、もうお金がなくなりましたか?最近は娼館通いが激しいようですね?」


笑いながらエグイ事を言ってくる。動揺が顔に表れそうなのを隠し本日の要件を伝える。


「お恥ずかしながら少し入れ込んでますね...今回は別件でお金が必要になりましてね。」


「そうですか...朝の一件ですね?」


まぁすぐに気づくとは思ってたけどもしかしたら買取に影響するかも...


「「双剣の庇護」は創始者の代からの縁ですので融資はするつもりですよ?ただ今回は額が結構いくかもしれませんね。」


 帰って来てない面子は全滅って事で噂が広まっているからなー、まぁ全滅じゃなくてもかなり高額にはなるだろうけど...


「そうですね、そこでこれらの買取をお願いします。」


そう言っていつもの腰のポーチから宝石の原石を取り出す。


「これはまた...大きな物を...失礼」


そう言って手に持ちながらじっと見つめている。


「間違いなく、ダイヤとエメラルドの原石ですね。これだけの大きさになると買取よりオークションに出された方がよろしいかと思いますが?」


 この人も鑑定持ちだな...この前は所見だったからあえて使わなかったのか?まぁ確認してない俺が悪いか。


「オークションですか?直ぐにお金が欲しいのですが...」


「問題ありませんよ。三日後に領都の方でオークションが行われますので一緒に行きましょう。その間の一時金として金貨1,000枚を渡して置きます。」


そう言って今回はテーブルにあった呼び鈴を鳴らし、入ってきた見たことない従業員に2、3言話すとこちらに顔を向けた。

向けられた顔は先ほどとは違いとても神妙な面持ちをしている。


「さて、これだけの良い品を卸して下さるタカユキさんには申し訳ないのですが...これは「拓けぬ大森林」のダンジョンで取れたものではありませんね。」


「.........。」


「宝物系が取れるダンジョンは限られています。その中でもこれ程までに大きな物が取れる場所は殆どありません。存在はしますが現実的ではないのです。ダンジョン未踏階層がそれに該当します。オークションにかける上で、どうしてもその情報を開示しなければならなくなります。あとはお判り頂けますか?」


 開示すれば人は集まる。またジョエルさんの方にも個人特定の話がひっきりなしに来るだろう。これはどうするべきかなぁ...確かここらへんでは「森林の宝窟」が原石や金銀採取可能だったな。あそこは...確かB47階が最大踏破階層か...ならB50階層で問題なさそうだな。最近ではB30階が限界らしいし...


「そうですね、所属はなしのフラリと現れた冒険者が「森林の宝窟」B50階で獲得したことにはできないでしょうか?あそこはもともと大きな宝石が取れましたが現在ではそこまでたどり着く冒険者もいないのでは?」


「確認は出来ないでしょうね...わかりました。今回はそれで手を打ちましょう。実際はもっと真剣なお話だったのですが...これほどのいい商売をするのは久しぶりです。タカユキさんの品には飽きが来ませんね。」


そう言いながら従業員がいつの間にか持ってきた金貨を、ニコニコ顔で渡してくる。


「オークションの為に明日夜明け前には立たなくてはなりません。準備の方はよろしいでしょうか?」


「問題ありませんよ。では今日は一度帰ります。明日の夜明け前にここにまた訪ねてきます。」


金貨を腰のポーチに入れて、商会を出た。








クランまで戻って来ると中が騒がしかった。

「ヴェリレさん!もうジーンさんが後を追いかけていますから!安静にしていて下さい!」


アンジュちゃんがタオルでヴェリレさんを隠しながら他の女性冒険者が取り押さえていた。


「体は全くもんだいない!何故私がここにいるのかも、部下がどうなったのかも判らない!直ぐに向かわせろ!部下を助けたいんだ!」


所々破れた服に壊れた装備であばれている彼女は色々気が触れているのだろう。とても残念さんに見えた。


「ヴェリレさん、まず服から色々見えていますから着替えましょう。部下たちは全員ではありませんが大方大丈夫だそうですよ?先ほどギルドでカルロスさんに聞きましたから。」


とりあえずカルロスにまる投げだ。


「本当か!」


「ガンッ!」ともの凄い勢いで壁に両肩をぶつけられた。たゆんたゆんの胸が壊れた装備から半分見える。


「見えてます見えてます。いいんですかー。」


正直、前にクランで飲んでいるときに見ているのでそこまで興奮はしないが、赤色の髪に茶色の瞳で整った顔立ちのヴェリレさんはやっぱ美人だ。ただもっとおしとやかになって欲しいが。

本人は恥ずかしがるどころか、そんな事はどうでもいいように聞いてくる。


「どうなったか話せ!」


「詳しいことはわかりませんよ。ただ大丈夫だって話ですよ。」


「......そうか...。」


納得できずにまだ行きたそうにしている。


「今ロレッタさんも向かっていますしまた情報も上がってきますよ。あの人なら3日もかければ情報を持って帰ってきますって。ギルドの方も斥候部隊を組織して出発させたみたいなんで早ければ二日後には状況がわかりますよ。焦って向かっても二度手間になるだけですから、今のトップとしてこのクランを纏めてください。」


「わかった...」


安心したのか、極度の緊張が少し和らいだのか、ゆっくり俺の両肩から手を外すと奥にもどって行った。手前にまだ立っていたアンジュちゃんに、明日からしばらく領都に行くことを伝え自分の部屋に向かった。







....ガヤガヤ....ガヤガヤ....

....ガヤガヤ....ガヤガヤ....


夜もの戸張が降り始めた頃、また花街をブラブラ歩いていた。

ある程度クランの方も落ち着いたみたいだったのでこちらに来てみた。

当たり前に行くところは決まっている。


「いらっしゃいませタカユキ様本日もミレーヌでよろしかったですか?」


「お願いします」

もうジャンキーである。



「おまたせいたしました。二日立て続けは珍しいですね。」

いつもの明るい笑顔で出迎えてくれるミレーヌさんはもう心のオアシスですよ。落ちない男がいたら会ってみたいわ!

「いやー明日からここ離れる事になっちゃってねー会っておこうと思ったんだ~」


「私の値段はそんなに安くはないのですが...あまりご無理はなされませんように...」


「大丈夫大丈夫!お金は一生懸命稼ぐから!」

嘘なのが心苦しい...まぁ今日も楽しみますか...






「そうだ、ミレーヌさんこの前奴隷開放後の夢を話してくれたでしょ?」


以前、奴隷解放後に何をしたいか話したことがあった。ミレーヌは帝国には戻りたくなく、両親は処刑されていて居ないそうで身よりもない。その為領都の方で服飾関係のお店を出したいと経ずね言っていたのだった。実際もう開放金は貯まってしまっているが稼ぎが、こちらの方がいいため頑張っている。


「領都に明日からしばらく行くんだ、それでいい店舗があれば買おうと思ってる。そこで働く気はない?」


ミレーヌの顔が少し曇った。


「それは愛人になれと言う事でしょうか?」


 まぁそう捉えるわな~ただなぁここで世話になった縁もあるし、この子が俺には客以上の感情が無いのはわかってる。そんな脳内御花畑の神経は前の世界に置いてきている。ただこの子には、自分が関係してよくしてもらった人には幸せになってもらいたい。


「関係なくかな?一応頼んだ服とかは格安で作ってもらったり、冒険者崩れの従業員を雇ってもらう事もあるかもしれないけどそれ以上は求めないよ。奴隷開放はもちろんだし、好きな人と結婚してもらってもいい。最悪独立したいなら最初の投資分をゆっくり返してくれればいいから。」


 かなりこの世界じゃ激甘な選択肢だろう、裏がないか心配にもなるだろうな。まぁ断られたら断られたで陰ながらお手伝いはするけどね。


「少し考えさせてください...」


「じゃぁ領都から帰って来るまでに考えておいて。」


もう夜明け前ぐらいなので娼館を後にする。








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