10話
魔石の生活使用の研究は一時中断して新しい武器のデザインを考えていた。
サバイバルナイフってもともと携帯用ナイフだから大きくしたら無駄が多いのかな?確か似たようなのでコンバットナイフってのもあったなぁ。でもいまいち違いがわからん。とりあえず自分でデザインしてみるか。
前回の豚野郎は全く刃が通らなかった。その為切ることより叩き潰す事を前提に刃渡り60cmほどのナタを作成することにする。前回のようにミスリルを鉄でサンドするように作っていく。前回よりも鉄の分量は多めに使用し、ミスリルで出来た柄の部分に魔石を固定できる場所を作る。
そういえばミスリルって鉄よりも魔力通しやすかったなぁ。
そんな事を考えながら魔石に付与を施し、完成したナタと一緒に家の中に戻った。
「使いやすい形ってどんなんだろうか?」
ナイフの形だけでかなり悩み、時間だけが消費されていく。
刺し易いようにまずまっすぐな刀身で、振っても使える様に刃先は丸みを付けて...
前回のサバイバルナイフから大きな変化は無く長さ30cmほどの小回りの効く大きさのナイフを製作した。ナイフを使って格闘も出来るよう刃先10cmは両刃でそれ以外は片刃になっており、刀身ははまっすぐで途中から先端にかけて刃が反っている。おおよそコンバットナイフに近い物が出来ていた。
そのナイフは全てミスリル製で青白く輝く刀身はとても綺麗だ。こちらにも魔石を使用し、いつでも切れ味を増せるようにする。
「とりあえず武器は終了かな。」
銃とか作ってみたいけど魔法あるんにいらんわな~
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ダンジョンへ行ってから2ヵ月、準備も万全。もし移動系・転移系魔法が使えず泊まることになっても大丈夫なように、家以外のすべてのものを異空間に入れてある。毎回の出し入れには少なからず魔力を消費するが、無限に入るようなので出来る限りの荷物は持つようにしている。
もっと早く来ることもできたが、ミスリルと魔石を利用した魔力回路に思いのほかはまってしまい。冷蔵庫や洗濯機を作ってしまった。回路自体は簡単なシーケンス制御を組み込んでおり。マイコン自体を魔石で作れないか現在考えている。PCと同じものを作れればいいのだがそこまで詳しくない。頭のスマホと同期して、こう作りたいやこうしたいなどを大雑把に作って付与してもいいのだが小さい魔石では付与段階で割れてしまうため、現在は中断している。
外は雪が積もり始めあと三ヶ月か四ヶ月は境界線外の探索は出来そうにない。ダンジョンに行くにはもってこいなのだ。
空間魔法で創った「ゲート」でまずは水晶のある部屋へ行ってみる。
「...ゲート...」
空間が歪み人が通れる大きさの円が生まれ、その中には洞窟にあるはずの水晶が見えている。
「問題無いな。ならボス部屋はどうか」
この「ゲート」魔法も作るのが大変だった。行きたい場所のみイメージしても確かにつなぐ事は出来るのだが、魔力の消費が半端ない。その為自分なりにイメージを固めていくのに時間がかかってしまった。テレポートの魔法も試してみたが、こちらはやり方次第では凶器になる。魔力消費もゲートに比べ二倍はかかり、座標の設定もいる。結局は緊急事態に特定のポイントに行くだけにしか使えない。その為、転移系魔法自体はお蔵入である。空間魔法の応用の方が自分にとっては楽だったようだ。
実際は系統にとらわれない魔法から始めているため、どれがどれに属しているかも分からない。トライアンドエラーで完成した魔法を、脳内スマホで属性確認して初めてわかる。最近は検索アプリを常時頭の片隅に開いているので、系統表を見ることもほとんどない。
ボス部屋の前も普通に繋がり歩を進める。出てすぐに魔物は居なかったが、これから先は警戒出来る魔法も出来ればと思った。
「行くか」
気を引き締め扉を開く、今度は余裕で勝つと心の中で思いながら堂々と入室する。
「あれ?」
扉がしまって少し待つが一向に表れる気配がない。
出てこないなら仕方がないと、奥にある階段へ向かう。
あんだけ気合入れてきたのにな...
階段を降りながらそんなことを考えているとB5階層に着いた。
「よっしゃ!」
気合いれてくぞ!
豚野郎と戦わなかった為、気力体力は十分だ。拍子抜けしたのは否めないが。
この階層も変わらず洞窟であった。広さ的には大きな体育館だろうか。しかし真ん中に大きな噴水のような場所があるだけで魔物の気配がない。もしかしてと思いゆっくりと噴水へ近づく。
「悪趣味だな」
地上の泉と同じかと思い近づいてみるとそれよりも先に噴水横に目が行った。
噴水の横には二体の男女の像が置かれており。女性の像が目から水を出しながら男性の像を剣で刺していた。男性の像は笑いながら刺された場所から水を流している。
痴情のもつれ...ヤンデレ系かな...笑ってるなんてなんて器のでかい男だ...
異世界にそんな言葉があるかわからないが、趣味がいい造形ではないと思った。
でもなぁこれぐらい愛されるなら男も本望だろうなぁ。だから笑ってるのかな?まぁ殺されたくはないけどなぁ。
現在、肉体年齢は16歳であるが精神年齢は29歳独り身が寂し今日この頃、回りには魔物はいても人が居ないのもさらに拍車をかける要因だ。
この階層は多分休憩階なのかもしれないと思い次の階層へと足を進める。
B6階層はB2~4階層と景色は変わらず、出てくる魔物がオーガやオークナイト、ゴブリンナイトなど、ちょっと強くなっているだけであったためそのまま歩を進める。
トラップや、ダンジョンで一番期待出来る宝箱などは見つからず面白みにかける内容であった。
そのあとのB7・8・9階層はレッドグリズリーやグランドサーペントが増えただけで素材集めが主だった。
多分、5階層毎に一つの区画なんだろうなぁ
そう思いながら目の前の扉を見る。B4階層の扉よりいくらか豪華になっているが多分ボス部屋だろう。今回は準備万全で尚且つ時間も早い。朝6時に出発してからまだ8時間しかたっていない。気合を入れ直し、扉に手をかける。
「...ッ行くぞ!」
開くと同時に足を部屋の中に進める。
...ゴォーー...バタンッ...
前回と同じように風が吹き扉が閉まり、部屋の中央に光が集まり始めた。
光は人ほどの大きさのオーガになり、右手にはオーガに似つかわしくない無骨なショートソードを持っている。
小さいな...まぁ小さくてもボス、舐めてかかれば死ぬだけか...
そう思い緩みそうな気持ちに喝を入れ、ナイフを構える。ナタじゃないのは相手が小回りが効くかもしれないことを考えてだ。
ゆっくりと近づいてくるオーガ。その姿はまるで暗殺者のようであった。
今まであったことないタイプの魔物だな...先手必勝ッ!...
焦れたのも確かにあったが、余りにも整いすぎた身のこなしが不気味すぎて居ても立ってもいられなかった。
相手の手のナイフを狙うために力強くナイフを振るう。
...キンッ!キンッ!キンッ!...
三合四合と手を合わせていくが全く相手に当たらず、焦りのためか手数を増やそうとしてしまう
...キンッ!キンッ!キンッ!...ガッ!バキッ!...
「グフゥ...!」
...なんだ今の...
全くわからなかったが、実際は右手で切りつけようとしたナイフを左方向にいなされ。綺麗に空いた右脇腹にオーガの膝が入ったのだった。
「フッ!フッ!フッ!...」
息を整えようとして呼吸が荒くなる。
オーガは今までの戦闘で見せなかった俊敏な動きで後ろに回ってきた。ショートソードはちょうどうずくまっている自分の首元の高さである。
マズいっ!
咄嗟に回り込もうとしてきた方向と反対方向に飛び距離を取ろうとする。
...ッッッ!!!...
距離を取り顔を上げるとオーガがショートソードを振ってきていた。
...早すぎるだろ!...
こちらも素早くナイフでいなし、空きが生まれたところに拳を突き出す。
...パーンッ!...
...グチュゥ...
まるでそうなるのが分かっていたかのように拳をオーガにつかまれ、そのまま潰される。
「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ...」
頭が真っ白になる痛さだった。
オーガはそのままナイフを持った手で裏拳を放ち、頭に物凄い衝撃が走る。
潰された手はその時放したようで吹っ飛ばされる。
このままじゃ死ぬ...
そう思い検索魔法をかけずに使える攻撃魔法を使用する。
...弾丸...
オーガに向けた目の前に土の弾丸が形成され音速で飛び出す。
...ヒュッ...
...グジュ...
「グオガァァァ!」
さすがにオーガも反応できずに当たる。案外効きはいいようであったため連発する。
弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!弾丸!
オーガに当たるたびに肉片が飛ぶ。
「グオォォォ!」
オーガも攻撃してこようとこちらに近づいて来るが、結局1m手前で力尽きた。
...ズンッ...
助かったァ
ここまで早い動きをする敵は初めてであり。何を思ったか肉弾戦を挑んだのが危なくなったそもそもの原因である。
最初っから魔法使っておけばよかった...
そう思いながらエクストラヒールをかけ、水を飲んだ。
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ボス部屋で少し休み、次の階へ降りることにする。
次は休憩の階層のはずだな...部屋の中と階段を確認したら戻るか...
B10階層は前のB5階層と同じかと思っていたが、何故か空がある森であった。一度広範囲に届く索敵魔法を放つが、魔物のように魔力を放つ反応がなかった。
一応休憩出来る階のようだな。
帰ろうと思っている時間まで散策することに決め森の中を歩き回る。
これはマンゴーか?こっちはブドウっぽい...
木には果物が実っており、地球と似た果物も見受けられた。
片手に水と検索魔法でキュアブラッドを待機させ、一つ食べてみる。
「甘い...上手い...」
久しぶりに食べる果物は何よりもの癒やしであった。食べれる事が分かれば自重することもなく、もいでもいでもぎまくった。結局2時間以上採取に掛け、帰宅予定時間を大幅に越えての帰宅となった。




