プロローグ
先日投稿したのが微妙だったのでいじりました。
全くの素人です。
人は欲深く、その欲は際限がない。
欲が満たされ無ければほとんどの人が渇きを覚える。その渇きが満たされると、個人差はあれど前よりも大きな渇きが襲ってくる。人の欲はまるで麻薬のような中毒的なものだ。
人は欲を満たすために人生をかけている。人生の何処かで大きな賭を行えば、その後は天国か地獄か…小さな賭でも人生の流れは変わる。賭は人生において分岐点なのではないだろうか。
欲を満たすために多くのモノを求めれば自ずと賭け金が上がる。それは人生と言う時間に換算され、どの人においても時間は平等であるように一生で賭ける事のできる時間はほとんど大差のないものだそんな大きな賭はしたくない。リスクを回避出来るなら極力そうしたい。そんな考えから惰性で生きていると欲はいつまでたっても満たされない。
そんな状態なのが俺、植島隆之だ。
ちょっと頭良さげにプロローグ風の事を考えていたが、こんな深夜にドライブをしているとこんな馬鹿な事を考えてみたくなるもんだ。
でも最近の自分を振り返ってみると人生どこで間違ったんだろうなって思ってしまようなことが多い。もう今年の誕生日を迎えれば29歳。あと1年半で30歳だ。知り合いにはNEETさんもいるが俺はいたって普通な方かな?可もなく不可もなくだし。民間で働いてたのが今は公務員、給料は下がったが休みがあるし残業代も出る。充実した毎日のはずなのになんか心がモヤモヤする。満足と言うか、満たされていないと言うか。
「休みも多いはずなのに何故か満たされないな。」
何が満たされないのかも分からないのが正直な今の現状だ。
「多分結婚出来なかったのもあるんだろうなー」
前は働く事が中心で生活自体は二の次、1ヶ月にまともな休みが2、3回なんてざらだった。休みの日は洗濯と掃除をして後は寝て過ごし、そんなこんなで彼女との時間も取れずに自分の事だけに専念していた。結局は仕事の忙しさに流されて考える事を放棄していたんだろうな。辞めると決意した時は「実家に帰り休みは趣味や彼女に使いたい」と考えて、辞めたあとはただただ公務員への再就職に向かって勉強をした。
あぁ…他に男が出来たのはこの時期なんだろうな…
結局、別れる原因は俺が自分勝手に人生の道を決めたからかな…
結婚しようとは言ってた、そのために会社を辞め一緒に実家に行くことも話した。結局今は独り身。
再就職して思ったのは「休みは何したらいいんだろう?」おかしな話だな。そもそも趣味ってなんだっけ?大学では飲んだり、遊んだりそれが趣味だとしたら実家に帰って出来るはずもない。実家周辺での友達なんてほとんど居ないし、いたとしても家庭持ちばかりだから30手前の今じゃ遊びに誘うのも躊躇われる。
結局、実家に戻っても車の洗車と家の掃除が毎週のルーティンに入ってる。空いた時間はパチンコか本当時々飲み。女を紹介してもらっても近年いたためしがないので臆病になる。
あれ?結婚できるのかな俺?
「はぁー…」
もし、前の仕事を辞めなきゃ今とは違っていたか?大学卒業と同時に実家周辺で就職してたら?大学が違ってたら?「たられば」な事を考えるのは栓無き事とは思っても、考えてしまうのは皆一緒だと思う。
変に憂鬱になりながら最寄りのコンビニに到着し、いつも通りにコーヒーとタバコを買って外で吸う。
「フゥ〜…」
車内を禁煙にして3年か…これも姉貴の子供が産まれると知ってからだな。本気で結婚を焦り始めたのもこの時期か…
余計憂鬱になりながら綺麗な星空を眺めた。
「火貸してくれんかのぉ?」
突然声を掛けられその方を見ると、70歳ぐらいだろうか?渋い良い声の爺さんが居た。
すぐに貸そうと思いポケットをまさぐりながら、凄く不自然な所に気付きボーっと見入ってしまった。
「どうかしたかいの?」
爺さんに言われ慌ててライターを出しながら。
「い、いえぇ…良いスーツを着ていらっしゃいますね。」
今は夜中の1時、まぁ色々な仕事はあるもののこの時間にこの格好でこの場所のコンビニにいるのは不自然過ぎる。
あ!ヤのつくサービス業の方かと思ったがこれぐらい高齢な人ならいい立場であるはず、こんな所に買いに来ることもないしなぁ。
「そうじゃろう!ワシがデザインしたモノなんじゃ!仕立ても一流どころに頼んでみた!」
前の仕事柄高級スーツを着ている人間には良く会ってたし身嗜みもそれなりに整えていた。先輩にもそういう細かい所に気付けともいわれていたなー。
だからろうか、袖口や襟や素材や縫い目から自然と量産品かそうで無いかがわかる。幾らするとかまで分からないが高級なのは一目瞭然だ。
「そうなんですね。いやーご自分でデザインされてるとまでは思いませんでした。」
ここでタバコを一緒に吸っているのも何かの縁だ、少し喋ろうと思い話しを繋ぐ。
「やはり自分の気に入ったモノを着たいと思うもんじゃないかの?外出する時は尚更じゃ。」
「それもそうですね。しかし普段着でスーツと言うのも堅苦しく無いですか?お仕事帰りでしたら申し訳ない。」
「ん…?そうか!そうか!いやなに、ワシは今から仕事での。そんな変な時間とは思わんかったわ!」
こんな時間からスーツ必要な仕事って何だろな?深くは聞かない方がいいや変に聞くと面倒いし。
たわいもない会話をしながら一本吸いきり、またもう一本のタバコに火をつける。
「君は夢をもっているかね?」
なんやかんやと話してみると結構話が合い、終わらせようと思っていた会話も長くなってきた時唐突に爺さんが聞いてきた。
昔はプロ野球選手になりたかった。高校に入ったらとりあえずモテたかったな。大学ではとりあえず金持ちになりたっかたし...じゃあ今はなんだろ?
「無いですね、明確な何かって言うのは。ただ幸せに過ごしたいです。満たされた日常って言うか充実した生活をおくりたいですね。これが夢かはわかりませんが。」
笑いながら答える事にした。
そうだな、満たされた日常を得るために結婚したいとずっと思ってるんだろうな。1人は寂しいからな。
「そうかい、簡単なようで難しいことかもしれんの。もしそれが叶うとしたら君は何をかける?」
結婚の事が頭に浮かび、やっぱ人生の墓場とか言われるから人生かけなきゃいけないんだろうなと思った。
「人生をかけるかと?クイズなら正解に近そうじゃないですかね?凡人なんでこんなお答えしか出来なくてすみません。あとかけれるものは喫煙くらいでしょうか?」
さっきからチラチラと別れた彼女やもしかしたらもう結婚していたかもしれない人生を思い浮かべていただけに。あまり笑えない自分がいることに気がついた。
「そうかい、いい答えだとワシは思うがのう。人の一生は短いからの正解なんてあって無いようなもんじゃて。ただ人生は後悔が無いよう進みたいものじゃな。」
そう言って爺さんが笑いかけてくる。
「私は後悔だらけの人生かも知れませんね。まぁ後悔しても過去には戻れないですが。」
戻れるものなら戻りたい。ただ、戻ったとしても今の自分の考えになっているか分からない。満たされているかさえも。
結局は自分の過去に戻っても行き当たりバッタリになるのは見えている。
「過去には戻れんが新しい人生なら今から始められるぞい。」
「え?」
「始めたくないかの?」
「そんなほいほい始めれるモノじゃないじゃないですか。もうほぼ30歳、これから新しい人生とかそれこそ宝くじでも当たらないと無理ですね。」
「ワシが全て叶えよう」
何言ってるんだこの爺さんと思ったが何故か妙に納得させられる。この人なら自分の満たされない気持ちも、人生のやり直しも、叶えてくれそうだと。
「じゃぁ、お願いします。」
「その言葉が欲しかったのじゃ」
そんなつもりは無かった。しかし言葉が口を突いて出た瞬間。
周りの景色が一変した。