12月24日③
この前雑誌で見つけた『ドリア風オムライス』を作ってみることにする。ホワイトソースを作り、鳥モモ肉、玉葱などでチキンライスを作り、卵で優しく包んでから、ホワイトソースをかけてオーブンに投入する。そして暫く待つと、夢と希望を運ぶオムライスの完成だ。香ばしい香りが漂ってくる。
「お待たせ」
今回のオムライスは相当な自信作だ。さあ、たんと召し上がれ。
シナは
シナにご飯が出来たことを伝え、オムライスを運ぶ。シナは初めて見るおもちゃに心を奪われる子供のように目を輝かせていた。
「さあ、どうぞ。初めて作ったから美味しいかどうかは分からないが。」
勿論これは謙遜である。私は料理だけは自信がある。心の中では、まさに国民的アニメのガキ大将のように、「うまいか、美味しいか、どっちだ?」と問うていた。
「ありがとう、この料理はスプーンというもので食べれば良いんだよね。」
シナは食卓に置いておいたスプーンを手に取り興味深げに見つめている。そしてスプーンでオムライスを迎え入れ、恐る恐る口に運ぶ。そして……、
「おいしーーーい、何これ、すごい。君、天才だね」
やはり、シナには大好評だった。すごい勢いでお皿を空にしていく。
「おーい、もうちょっと、食べる量抑えて、味わって食べて」
私の言葉も虚しく、数分後には皿は美しいと形容できる程空になっていた。そして彼女はもちろん、この言葉を続ける。
「おかわり」
それからうどん、炒飯、更にはデザートまで、和洋中麺類飯類問わず作らされ続けられた。もう冷蔵庫にはほとんど残っていない。それでもシナは食べ足りないようで、「まだないのー」などと言っている。さすが神様だ、油断していた。
「もうないよ、今まで食べた量でも、成人男性の1日の推奨摂取カロリーといい勝負できる程だよ。もう我慢して」
本当に彼女はいつも何を食べているのだろう。
「そうなの?じゃあ仕方ないね、ごちそうさまっ」
そう言って手を合わせると、私の方を向いて、例の満面の笑みで、
「美味しかったよ、また作ってね」
何度でも作ってやるさ。そう思わせてくれる笑顔だった。
大量の食器を流し場に持って行き、テーブルを拭く。洗い物は後でまとめてすればいいだろう。
「シナ、そろそろ教えてくれ、神様のこと」
シナは爪楊枝を器用に使って歯の掃除をしていたが、その動きを止めると、真剣な顔付きで此方をを見つめてくる。どんな青空よりも澄み渡り、すべての真実を映し出しそうな目だった。
「そうだね、君にこんな美味しいものを作ってもらったのに、何もお返しができない、というのは失礼だからね。我々の秘密の1つや2つ位教えるよ」
「たった一回の昼ご飯でそうやすやすと教えていいものなのか、神様の秘密って」
口が軽すぎるのではないかと心配になる。そんなに簡単にトップシークレットを話してくれるのであれば、国に掛け合って三つ星レストラン級のシェフを用意させて頂こう。まあ私の話を政府がまともに対応してくれるかは謎だが。
「僕が感謝を示しているのは、ご飯そのものよりも、君がわざわざ時間を割いて作ってくれたことだよ」
「そんなの当たり前だろ。客人をもてなすのだから」
「それをあたりまえと言えるのが君の長所だね。僕だったら、突然声かけられた少女を家に連れて来てくれて、こんなにたくさん料理を作ったりはできないよ。そんなことが出来るのは幼い女の子が好きな変態さんくらいじゃないかな?」
褒められたのだろうか、貶されたのだろうか。判断に苦しむところである。
私の微妙な表情に気付いたのか、「もちろん冗談さ、僕はとても君に感謝しているんだよ」とフォローを入れてくれる。
「それでは語ろうか、我々の世界のことを」