いつもの日常と夏の終わり
初めての投稿作品です。拙い文の作品ですが、よろしくお願いします。
また、編集で段落下げるところを失敗して大変読みづらくなってしまいました。すいません。
校舎内にチャイムが鳴り響いた。
窓から沈みかけた夕日のオレンジ色の陽が射し、下校している生徒たちを照らしている。
急いで駆けていく男子や話しながら寄り道を計画している女子たち。遠くからは野球部の大きな声も聞こえてくる。
帰ろう。
別に目的があって帰らなかったわけでもない。帰っても特にやることがないだけだ。
やることがないから下校時刻まで残ってた暇人であることを否定する言い訳みたいになり、僕は考えるのを止め席を立った。
お金も無いし、やりたいこともないんだよなぁ……
それならバイトでもやれよ、ってなるのかな。時間も潰せて給料も貰える、でも働きたくない。
……僕は将来ニートかもしれない。
「それだけは嫌だな。」
将来の事なんて考えたくないものである。
教室を出るためカバンを持つと、ドアが開いた。
僕の席は窓際の一番後ろにあるから、開いたドアは離れている方の、黒板側のドアが開いたみたいだ。
こんな時間まで残ってる生徒がこのクラスに居たのかと妙な親近感を持ち、ドアの方を見ると、どうやらクラス委員長だったみたいだ。
「こんな時間までなにしてんだ?」
あまり話したことはなかったけど、やることもなかった僕だ、暇つぶし程度に話かけてみた。
「先生に明日の授業の手伝いをさせられてただけだよー。」
彼女は意外にも普通に返答してくれた。
いや、無視されても悲しくなるから良いことだけどね。
「クラス委員長も大変だな、こんな時間まで教師のために労働させられて。」
「まあねぇ……でもクラス委員だから自分の仕事はやらないと。」
やりたくないんだけど。そう愚痴をこぼしながらも、別に嫌そうな感じでもないように思えた。
「凄いな、委員長は。僕ならクラス委員の仕事だからって放課後まで残りたくはないよ。」
そう笑いながら言うと、彼女は少しムッとしながら頬を膨らませた。
「何も用事ないのに放課後まで残ってる暇人さんには言われたくないかなぁ。部活でもやってるなら別だけど、そうでもないでしょ?」
「それはそうだけど……たまにはそういう気分にもなるんだよ」
「そういう気分ってどういう気分なのかな。気まぐれに残ってた言い訳みたい。」
その通りだった僕の表情の変化を見て、彼女はクスクス笑った。
「バイトや部活しないの?時間なら余ってそうなのに。」
「やだね。僕の貴重な青春を部活やバイトで失いたくないよ。」
ひねくれながらニート宣言してる僕。
労働、ダメ絶対。
学校だって行かなくていいなら行きたくないよ。
自分の言葉に納得してる僕を、呆れながら彼女は言った。
「それ、ただのダメ人間だから。」
知ってるよ。
帰る準備が出来た委員長は、帰ろうとしない僕が不思議なのか、首を傾げた。
「帰らないの?」
「帰るよ、お腹空いたし。」
教室を出て、一緒に下駄箱まで来たところで委員長がさっきの話を続けた。
「いつもは学校の後は何してるの?」
靴を履き終わったのでそのまま学校を出た。
まだ野球部の大きな声は聞こえてくる。
「んー、普段は音楽を聴いたりマンガを読んでるかな。普通だよ。」
どうやら一緒に帰るみたい。
そういえば女の子と帰るなんて初めてだな。
どこまで一緒なのかは分からないけど、このままでも良いか、何も言わないでおこう。
「本当に普通だね。私もそんなに変わりはないんだけど。」
夕方でも汗をかくような暑さは、夏なんだな。
あと二ヶ月もすれば衣替えになるのに、この暑さは無くなってくれない。
「あ、でも勉強はしてる。」
その言い方だと僕が勉強してないように聞こえるんだけど。まあ、してないんだけどね。家に帰ってまで勉強するなんて、普通居ないでしょ……勉強してる偉い人たち、ごめんなさい。
「テスト前でもないのに勉強したりするの?凄いな。」
「凄くないよ。ちゃんと勉強してないとテストや受験で苦労するし、やりたいこともあるの。」
「やりたいこと?」
「うん、そうだよ、やりたいこと。私ね、教師になりたいんだぁ。」
教師か……小学生の頃に将来の夢でよく聞いた事あるな、先生になりたいとかスポーツ選手になりたいとか。
「私のお父さん、前に高校の教師をやってたの。小学生の私に勉強を教えてくれたり、教えてくれたことが出来ると褒めてくれたりもした。そういうのがとても嬉しかったし、そんなお父さんが自慢だった。」
そう話す委員長は本当に嬉しそうだし、父親が誇らしそうに笑っていた。
「でもね……お父さん、私が中学三年の時に死んだんだ。元々病気なのは知ってたんだけど、こんな早くに居なくなるって思わなかった。私が高校に受かって入学するのも楽しみにしてた。」
さっきまでの表情はもうそこには無く、悲しげに俯いてしまった。
でも話はまだ続くようで、委員長は口を開いた
「お父さんが居なくなった事は本当に悲しいし、寂しい。今でもそうなの。でも教師だったことが好きで、私に勉強を教えてた頃のお父さんを思い出したらね、私も誰かに勉強を教えてあの頃のお父さんみたいになりたい。尊敬されて、凄いって思われるような人になりたい。そうしたらお父さんも嬉しいかな、って。」
そこで彼女は話し終わった。
死んだ父のようになりたい。それは自分に勉強を教え、今の委員長自身を形作った父への恩返しみたいなものなのだろうか。
それが彼女の目指す将来の夢。
働きたくなくて、ダラダラと日々を過ごす僕には考えつかないものだった。
「ごめんね、こんな話聞かせて。」
困った顔でそう言う彼女に、僕は首を振った。
「良い話だったよ。何の目標もない僕とは大違いな……立派な目標だよ。」
いつの間にか住宅街沿いの大通りに出てきたらしく、仕事終わりのサラリーマンや買い物をした主婦が歩いてる。
……あの人たちもあの人たちなりの目標があって生活してるんだろうな。
すれ違う人たちを横目で眺めながら、今聞いた話と考えを結びつけているみたいだ。
話が終わり、お互いに無言のまま歩き進めた。
いつもはただ遠く感じる通学路が、今日はとても短く思えた。
陽がもうすぐ沈みそうなのか、少しばかり涼しい風が吹き抜ける。そろそろ夏も終わり秋を迎えるのだろう。その前に夏休みもある、というか来週には夏休みだった。
「あ、私はここでお別れだよ。」
バス停に近づくと彼女がそう言った。
「バスも一緒?」
返答しなかったから聞いたのだろう。
「いや、僕はもう少し歩いたら家に着く。」
「そっか、分かった。」
バスはタイミングを狙ったかのように来て、ドアが開いた。
「じゃあ、また明日。話聞いてくれてありがとう。あんまり話さないのに長話になったね。」
クスッと笑う彼女。
「僕も楽しかったから大丈夫だよ。委員長の知らない一面も見れたしね。」
僕の言葉に、何それ、と言いながらまたクスッと笑った。
「また話そう。それじゃあバイバイ。」
手を振りながらバスに乗っていく彼女に手を振り返し終え、一人で歩き出した。
自分と同級生の子がちゃんと目標を持っている。
毎日を退屈に過ごしていた自分との違いに寂しさを感じる。誇らしく、輝かしく思える彼女は生き生きと過ごしているだろう。
僕はもうすぐ着く家まで走りたい気持ちになっていた。ちょっと退屈な日常を変えれるよう頑張ってみるか。
自分の気持ちの変化に笑い出しそうになりながら、また彼女に話しかけようと決めた。
友達と将来の夢の話をしてた事がきっかけで衝動的に書いてました。
アニメのSIROBAKOとか観てると、自分のやりたい仕事をやってる人もいれば、やりたくないけど生活するために仕事してる人もいるんだと考えてしまいましたね。自分は後者だったりするんですけど。
この作品をきっかけに次の作品を書いていきたいなぁと思っております。
最後まで読んでくださった方はありがとうございました。面白くないと思えたならゴメンナサイ、精進してきます!!