Deep Blue
~登場人物~
結花里
ホルン担当の2年生。
愛希先輩に憧れてる。(いろんな意味で)
自分では思っているより上手だったり。
愛希先輩
ホルン担当の3年生。部長。
後輩からも先生からも信頼が厚い。
とても活発。しかし勉強は得意ではない。
恵理佳
クラリネット担当の2年生。
自他ともに認める「天才」(ナルシストではない)勉強もできる。でも運動は苦手。
先生
吹奏楽部の顧問の先生。
とても快活。ノリで行っちゃう系
学生時代はどんな楽器でも完璧にこなせたという伝説が...
「やっほーゆかりん。お疲れ様♪」
部活上がり。太陽はとっくに空の向こうに落ちていて、代わりに月が見え始めたころ。
楽器の片づけを終えたところに、愛希先輩は声をかけてきた。
「今日も疲れたね~…あの鬼ババめ…まぁコンクール近いし仕方ないか!」
「あはは…そうですね…」
ホルンがとても上手で…部長で…後輩からも先生からも信頼されてる…どう追っても手が届かない。私の憧れ。
「んん?どうした?元気ないぞぉ?」
「ひぇっ!?そ、そんなこと無いです!///」
ち、近い!顔が!
「そうかな~…?うりゃっ!」
「ひゃあっ!?///」
「そ~ら笑え~!うりうり~」
「あはははっ!ちょ…せ、先輩てば、くすぐったいですぅ!」
元気が無い時、落ち込んでいるとき、先輩はいつもこうしてくすぐって笑わせてくれる。
「はぁ…はぁっ…」
「よーし。少しは元気出た?」
「い、息が…」
「おーっと…笑わせすぎたね」
先輩はにかっ、と笑いかけながら
「はい、飲んで落ち着いて。」
ペットボトルを渡してくれた。中身は麦茶….!!
「こ、これ、せせせ先輩の飲みかけ…///」
「あ、嫌だった?」
先輩は申し訳なさそうに言う。
「い、いえ別に嫌ってわけじゃなくて…先輩は飲まなくても…」
「あ、大丈夫だよー。気にしないで。」
むしろこちらが申し訳ない。
「そ、それじゃあ、いただきます…」
「どぞどぞ~♪」
麦茶を飲もうとしたその時。
ガチャッ
「ん?」
「あ、愛希先輩。お疲れ様です。あと結花里も。」
「おーお疲れ~エネ~」「え、恵理佳ちゃん…私はついでなの…?」ゴゴゴ
「その呼び方やめてください…ついでじゃないから。」
「えー?いいじゃんかわいくて~。」
彼女は恵理佳ちゃん。私の同級生でクラリネットを担当している。とっても上手で、今度のコンクールもソロパートを任されていいる。ちなみに私は愛希先輩と一緒でホルン担当。
「エネ」ってあだ名は恵理佳ちゃんが偶々某アニメのキャラクターである「エネ」のストラップをバッグに付けていて、それを見た愛希先輩が呼び始めたのがきっかけ。
「先輩。そろそろ出ないと正門閉められますよ?あと結花里も。」
「おーそかそか。それじゃあ出ようか。」
「恵理佳ちゃん…?やっぱりついでだよね私…?」
「だから違うって…」
「ほらほら!早くでよっ!」
『は、はい!』
帰り道
「それじゃあ私はあっちなんで…また明日。」
「じゃね~♪」「また明日~」
恵理佳ちゃんと別れて、いつもの帰り道を歩く。途中まで先輩と一緒の道。
「コンクールかぁ…もうすぐ…最後だから気合い入れなくっちゃね!」
「あ…はい!そうですね!」
そうだ…今年で先輩は…泣いても笑っても、最後のコンクール…
私も頑張らなきゃ…少しでも長く先輩と演奏していたい…
「おっと…ここで今日はお別れだね。それじゃあ明日!」
「はい!また明日!」
帰って…自習練しなくちゃ…
次の日
「交通事故!?」
「昨日帰る途中に、車に轢かれそうだった子供をかばって…」
「う、嘘でしょ…?恵理佳ちゃん…笑えないよ…?」
「…嘘じゃない。大川総合病院に運ばれたって…」
「…っ!」
「あ、ちょっと!結花里!」
嘘だ…先輩…先輩…!
気付いたら無我夢中で走りだしていた。練習が始まるのも構わずに、病院までひたすらに走った。
大川総合病院
ガラッ
「先輩!」
「おーゆかりん!」
病室には何食わぬ顔でベッドからこちらに手を振る愛希先輩の姿があった。
「そういや練習は…」
「そんなことより先輩…」
「ゆかりん!」
「はっ、はいぃ!」
明らかに怒気がこもっている声。先輩はめったに怒らないから余計にびっくりする。
「大切な練習だよ。『そんなこと』なんて言っちゃダメ。」
「す、すみません…」
「でもまぁ…」
「?」
「そこまで心配してくれたんだね。ありがとう。」
にこっ、と笑顔を返す先輩
「別に大した怪我してないし大丈夫だよ?道狭いから大してスピード出してなかったみたいだし。」
「そ、そうですか…良かったぁ…」
「すぐ退院できるから。ほら行った行った!」
「は、はい…失礼します。」
ガラッ
「全く…ゆかりんったら…」
「だけど…ちょーっとまずいかもねぇ…」
次の日
ザワ…ザワ…
嘘だ。
「というわけで…ごめんなさい!左腕骨折しちゃって…今度のコンクールには…間に合わないって…」
嘘だ嘘だ嘘だ。
「うそ…でしょ..?」
恵理佳ちゃんも信じられない様子だ。何より私は、もう何が何だか分からなくなっている。
「本当にごめん!みんな頑張ってる所にこんな…」
愛希先輩...
「せ、先輩は悪くないです!」
考えるより先に口が動いていた。
「先輩は轢かれそうになった子供を助けたんです!誰も先輩を責める人なんていないはずです!」
「そうだよ!愛希!」「別に今度のコンクール勝てば良いだけじゃない?」「先輩!来月なら間に合うでしょ?」「そうそう!今度勝てばいいだけですよ!先輩!」
先輩を責める人はいなかった。むしろ余計に気合いが入るばかり。
「みんな…あ、ありが…グスッ…」
「ちょーっと待った!それは今度勝った時のために取っておきなさい!」
「もうぐしゃぐしゃになるまで泣かせてあげるよ~?」ニヤリ
先輩達が愛希先輩を励ます。…なんか怖いセリフもあるけど。
「それなら愛希!とっととあんたの『代わり』決めちゃいな!」
『先生!?』
何処から来たのか、愛希先輩の横に…い、いつの間に…
『代わり』というのは先輩がコンクールでやる予定だったソロパートの事。恵理佳ちゃんと合わせることになる。
「分かりました!ホルンは全員集まって!」
『はい!』
音楽準備室
「私のソロパートなんだけど…誰かやりたい人は?」
シ~ン
誰も手を挙げない…当然だ。先輩くらい上手な人間でなければソロパートは吹けない。
「…だよね。私が苦戦するくらいだし…じゃあ悪いけどこちらから指名するね…」
『はい…』
誰になるだろう…なにか残念な気もするが、私には回ってこないだろう。
「…ゆかりん!」
!?…今呼ばれた気がしたけど…
「私の代わりはゆかりん!お願いできる?」
指名されたのは私のようだ…えぇ!?
「無理無理無理無理ですぅぅぅぅぅ!」
「大丈夫!ゆかりんならできる!」
「いや無理ですぅう!」
何で私なのぉおお!?
「…知ってるから。」
「へ?」
「ゆかりんが家でソロパート練習してたのは知ってるんだから♪」
「えぇええぇぇええぇぇえぇえぇぇぇぇ!?」
アレは遊び半分でぇえ!息抜きのつもりでぇえ!
「しかも私に負けないくらい吹けてたし!問題ないよ!」
「それならいいじゃん結花里!」「ゆかりん先輩…凄いですぅ」
他のメンバーも文句無いみたいだけど…
「大丈夫!私が教えるから!」
「う…うぅ~///」
「決まったようね。」
『先生!?』
また...どこから現れたのか…
「それじゃあ結花里をソロにして練習するよ!」
『はい!』
「1時間後合わせる!それまでに通して吹けるくらいにはしておきなさい!多少のミスは構わないわ!愛希!教えてあげて!」
「はい!」
「それじゃあ各自練習開始!本番まで時間ないよ!死ぬ気で行け!」
『はい!』
先生の調子のいいハッパと共に練習が始まった…
1時間後
「よし合わせるよ!」
『はい!』
♪~♫~
とても落ち着いたところから一気に転げ落ちるように変化していくのがこの曲の特徴
♪~♪~
次はソロパート…
♬~♪~
(ゆかりん凄い…ちゃんとできてる…)
♪~-
「…よし!問題ないね!これで行こう!」
「…え?わ、わたし…全然…」
「いや大丈夫!ちゃんと吹けてたよゆかりん!」
「うん…ちゃんと合ってたよ。結花里。」
「愛希先輩…恵理佳ちゃん…」
「じゃあこれで細かいところ調整していくよ!」
『はい!』
私…ちゃんとできてたんだ…
コンクール前日
「…よし!これで大丈夫!やることはやった!明日は今日までの成果全部出すよ!」
『はい!』
「じゃあ今日はゆっくり休んでおいてね!解散!」
『お疲れ様でした!』
片づけして帰らなくちゃ…
「ゆ、ゆかりーん…」
「先輩?」
「ちょ、ちょっと…来て..」
何の用だろう?
音楽準備室
「何ですか?愛希先輩。」
「う、うん…もしかしたら明日最後かもだし…伝えておきたい事が…」
なんか先輩らしからぬ、よそよそしい感じ。
「ひ、引かれても仕方ないと思ってるんだけど…」
引く?何故先輩から引かなければならないんだろうか…
「わっ、私…///」
「私?」
「ゆかりんの事が好きっ!///」
…何を言われたのか良く分からなかった…
「え、えと?」
「ゆかりんの事が好きなの!LikeじゃなくてLoveの方で!///」
え
「えぇぇええぇぇえっ!?」
せんぱいが…わたしのこと…すき…って…
「あ、あ、ご、ごめん!い、意味分かんないよね!忘れて!///」
真っ赤な顔で出て行こうとする先輩
「ま、待って!」
即座にその手を掴む
「待ってください先輩!」
「い、いや引いたでしょ!?突然こんな変態発言されて…」
私の
「私もです!」
想いも
「え…?」
伝えるチャンスは
「私も…」
今しかない
「愛希先輩の事が好きですっ!」
「ゆ、ゆかりん…」
「私も!グスッ…愛希先輩の事が!エグッ…Loveの方で好きです!グスッ…」
涙が止まらない…嬉しいのか悲しいのか分からない。
「グスッ…ゆかりん…ありがとう…」
ぎゅっ、と先輩が抱きしめてくれる。柔らかくて…温かい。とっても安心する。
「…大好き…」
「私もです…」
ふと顔を上げると…愛希先輩の顔が目の前にあった。
この間みたいにドキドキしてる…でも不思議と安心する。
そのまま吸い寄せられるように
「…んっ…」
「…んぅ…」
産まれて初めてのキス。憧れだった。大好きな愛希先輩と。
…どれくらい経っただろうか。ほんの数秒な気もするし、何時間も経ったようにも思える。
「…帰ろっか!///」
「そ、そうですね!///」
明日は本番。絶対に負けられない。
3月
音楽準備室
「どうしたのゆかりん…いや『結花里部長』?」
「もう…別にいつも通りでいいですよ『愛希さん』」
「そっちだってかわってるじゃない」
いたずらっぽく先輩が笑う。
「まぁいいけどね…それはそうと…ここに呼び出して何の用?」
「はい…今日で先輩はいなくなっちゃうし…その前に…」
「その前に?」
「聴いてもらおうと思って!」
「…ソロパート?」
「はい!」
「あの時ので十分聴いたよ?どれも凄かったし…」
「ちょっとアレンジしたんです…」
「ほぉ!それは聴いてみたい!」
「じゃ、行きます…」
「おー!」
4月から先輩は東京の音楽大学へ行く。連休とかには帰ってくるらしいけど…しばらくは離ればなれになる。
だから。形は無くても。先輩に何か贈りたい。
♪~♬~
(凄い…ゆかりんめ…もう私を越えたなぁ…)
♬~♫~
♫~♫~
(ん?違うメロディーが…)
その時クラリネットを吹きながら入ってきたのは
「…エネ!」
恵理佳ちゃんは軽く会釈をしながら私のメロディーに合わせて演奏を続ける。
♪~♪~-
「…とっても良かった!」
『ありがとうございます!』
「こりゃあ今年も大丈夫かな?」
愛希先輩が言いながら振りむいた先には
『全国高校吹奏楽コンクール 金賞』
とプレートが貼ってある大きなトロフィー。
「王座は、守ります。」
静かに、それでいて力強く恵理佳ちゃんが返す。
「今年も絶対金賞取ります!見に来てくださいね!先輩!」
「おう!絶対行くぜ!」
「それじゃあ私はこれで。頑張ってください。先輩。後でね、結花里。」
お辞儀をして恵理佳ちゃんが出ていく。
「先輩…」
「ん?」
「…私も来年先輩と同じ学校に行きます!」
「…そっか!頑張って!」
「はい!絶対に…んむ!?」
「ん…」
ふ、不意打ちだぁぁ…
「ぷはっ…ふ、不意打ちは卑怯です!///」
「いいじゃない♪」
「良くないですっ!」
「…もう一回。」
「へ?」
「もう一回!ちゃんとしてください!」
「う…わ、分かったよ…」
「…ん…」
「…んっ…///」
先輩…
「…えへへ…///」
ずっとずっと…
「…ふふ…///」
大好きです…
「大好き…ゆかりん…」
「わたしもです…グスッ…先輩!」
しばらくは離れるけど…1年だけ…
きっと今、私は最高の笑顔。涙が流れても、これ以上ない笑顔。
「1年だけだから…ゆかりんなら絶対来れるって信じてる!」
「…はいっ…!」
そしたら…
「そしたら!ずっと一緒!ね!」
「はい!ずっと一緒です!」
ずっと一緒に…先輩…
「じゃあ…いこっか!」
「…はい!」
きっと大丈夫。私たちはずっと一緒にいれる。
私…すぐに追いついて見せます!
だから待っていてくださいね!『愛希先輩!』
キィッ…バタン
―音楽準備室の棚の隅、フレームに入れられた写真には、楽器を持って笑顔で映る二人の少女の姿があった―
fin
どうも。こちらでは初めましてですね。春芳 恵以良と申します。
今度からpixivと並行してこちらでも投稿していきますのでよろしくお願いします。
さて、Fateやり直したくて堪らない今日この頃。
少ない小遣いをやりくりして「プリズマ☆イリヤ」
を収集しております。
イリヤマジかわいいっすマジで。
前にstay nightやった記憶が曖昧で...
完全に補完するためにもvita版&コミック購入を計画中
FateSSも書きたいなー!書きたいなー!(大切な(ry)
と、言うわけで今回は友人からの依頼でさっくり書きました...
正直出来とか言う問題じゃないですけどorz
無理矢理仕上げました(キリッ
まぁ暇つぶしにどうぞ。
次は...どうなるかな!R-18かもね!(ヤケクソ)
さて、ダラダラ言っても仕方ないのでこの辺で...
では改めて、こちらでもよろしくお願いします!
それでは次回お会いしましょう!
SeeYou!