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桜の木の下で

 ありさと衿香は繋がっている。

 最後にありさが見せた愕然とした表情に睦月はそう確信した。

 仕掛けが分かれば衿香の行動を把握するのは簡単だった。

 学園中にいる親衛隊の情報を元に衿香が行動しているなら、その裏をかけば良い事だ。


 ありさから話を聞いたその日、全ての授業が終わると睦月はいつも通り、生徒会室へ向かった。

 その情報は早速衿香の元へと届けられるだろう。

 生徒会室に入る直前、周りに人気がないのを確認すると睦月はくるりと方向を変えた。

 そのまま屋上へと上がる。

 屋上から更に高い木の上へ、重力を感じさせない動きでひらりと飛び移った。

 眼下には生徒用昇降口。

 パラパラと帰宅する生徒たちは、誰ひとり木の上に注意を払わない。

 

 いた。

  

 その中に睦月の求める少女の姿があった。


 やっぱり、寮に籠もっていたのか。


 学園内に身を潜められる場所は少ない。

 唯一、プライベートを確保できるのは寮の個室だ。

 睦月ですら部屋に閉じ籠られてしまえば、下手に手出しすることは難しい。


 どこで確保しようか。


 睦月の頭が忙しく回転した。




 上空から睦月に監視されているとは思いもせず、衿香は寮を目指して歩いていた。

 睦月を避け出して一週間。

 そろそろ睦月も異変に気付きだす頃だろう。

 とりあえず明日は土曜日。

 今日は珍しく兄の綾人が車で迎えに来てくれる予定だ。

 週末は家でゆっくり対策を練らなければ。

 運よく今週は避けられ続けたが、来週には強引な接近も考えられる。

 あの人に夢中になって、私の事を忘れてくれればいいんだけど。

 微かな胸の痛みを、衿香は強い意志で無視した。

 黙って歩く衿香の目に寮の建物が見えてくる。

 その向こうに小さく見える桜の木の枝。

 睦月に初めて会ったのは、あの桜の木の下だった。

 満開の桜がはらはらと花びらを散らせる中、王子様のように微笑む睦月がいた。

 

 そう、あんな風に……!?


 青々とした葉を茂らせる桜の木の下、にこやかに手を振る睦月の姿があった。

 

 





 


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