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出雲とゆかいな仲間たち?

「ふーん。この子が出雲の衿香ちゃんか~。めっちゃ可愛いやん~」


 それは出雲と一緒にいた二人のうち、金髪の長身の男の声だった。

 衿香ははっと顔を上げ、声の主を見た。

 すらりとした長身、金髪にピアスが妙に似合ういかにも軽そうなイケメン。

 その独特のイントネーションといい、チャラさといい、似ている人物の顔が衿香の脳裏に浮かんだ。


「うるさい、綺羅。黙ってろ」

「え~。出雲の一人占め~?そんなんずるいやん~。言いつけ守って必死で大人しくしてたんやで~?ちょっとくらい可愛い女の子とお話させてえや」


 ニコニコと満面の笑みを浮かべ近付いてくる金髪男をじろりと睨みはしたものの、出雲は何も言わなかった。

 金髪男は出雲の隣に膝をつき、滑らかな仕草で衿香の手を取った。


「俺の名前は貴島綺羅。学院の生徒会執行部に所属してる。これからよろしくな」


 貴島。

 やっぱり。

 微かな衿香の表情の変化を見逃さずに綺羅が頷く。


「晴可は俺の従兄弟や。小さい頃は一緒に本家で暮らしたこともある。今も交流あるしな。今日は晴可の婚約者に会えるかもと思って期待してたんやけど、残念やったな~。けどこんな可愛らしい子と知り合えたんやから、ま、いいか。名前、聞いてもいい?」


 綺羅の問いかけに衿香は首をかしげる。

 確か彼は衿香の名前を知っていたはずだが。


「直接、君の口から聞きたいんや」


 綺羅が極悪なほど甘い表情に甘い声を乗せて囁いた。

 これは、性質が悪い。

 衿香は顔を引きつらせた。

 

「神田、衿香です」


 引きつりながらも名前を名乗る衿香に綺羅が満足そうに微笑む。


「俺の事は綺羅でええよ。嬉しいな~。これからここに来る楽しみが増えたわ~」

「もういいだろう。こいつは誰にでもこんな調子だから、相手にする必要はないからな。それから、ついでに紹介しておく。卯月」


 出雲が綺羅の話を遮るように立ち上がり、背後に立つもう一人の男を呼んだ。

 暗い。

 ひたすら暗い印象の男だ。

 黒い長髪に濃い色の丸眼鏡をかけた卯月という男はうっそりと頭を下げた。


「こいつは卯月優矢だ」

「……会長。……血をもらってはいけないか」


 卯月の口から信じられない言葉が飛び出し、衿香はギョッとした。

 当の本人は顔色も変えず、静かに返答を待っている。

 血?

 誰の?

 この流れから、その血が衿香のものである確率は限りなく高い。


「だめだ」


 一瞬の沈黙のあと、出雲がきっぱりと言う。


「……そうか」


 卯月は静かに頷いた。

 なにこの人。

 人外って、吸血鬼も含むの!?

 卯月を凝視する衿香の頭を、安心させるように出雲がゆっくりと撫でる。


「大丈夫だ。卯月は俺の命令には逆らわない」

「ほんま、うづっちゃん、雰囲気読まんわ~。初対面の女の子に血ぃくれって、引くわ~」


 ワイワイと囃したてる綺羅をよそに、卯月がふと顔を上げた。


「……誰か来る」

「あ、ほんとや。ほなややこしい事になる前に撤収しよか」

「そうだな」


 展開の早さに、ただただ呆然と成り行きを見守っていた衿香の前に出雲が膝をついた。


「辛い事があったらいつでも俺のところに来い。俺はお前の味方だ」


 真摯な瞳がまっすぐに衿香を見つめていた。

 この人の目には嘘がない。

 ゆっくりと衿香が頷くのに満足気に微笑んだ出雲の姿が、一瞬のうちにかき消えた。

 次の瞬間、物凄い勢いで夏目が走りこんでくる。

 夏目は衿香の姿を確認すると、その両肩をしっかりと掴んだ。


「えりりん!!あいつらは!?」


 勢い込んで尋ねる夏目に、衿香は黙ってゆるゆると首を振った。


「大丈夫!?何もされなかった!?あいつら帰るって時に三人だけ姿くらましちゃって……」


 夏目の声を遠くに聞きながら、衿香は出雲の消えた空間をただじっと見つめていた。

 



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