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裏新聞の波紋


「来ない……」


 生徒会室の中で頬杖をついた睦月が不機嫌につぶやいた。

 衿香が生徒会室に姿を見せなくなって、一週間が経とうとしていた。


「睦月?衿香ちゃんの事は夏目に任せて、ちょっとは仕事に身を入れたら?夏休みには彼らが来るんだよ?」

「……わかってる」


 隣の机で仕事に精を出す信也にうるさそうに返事をして、睦月は書類に目を落とす。

 が、ものの一分もしないうちに立ちあがった。


「だから睦月」

「あ~も~。全っ然集中できない!!ちょっと行ってくる!!」

「ちょっ!!睦月!!」


 信也の制止も虚しく、あっという間に睦月の姿は生徒会室から消えていた。

 呆然と立ちあがった信也の肩に、巻きあげられた書類がぱらりぱらりと舞い落ちた。





「裏新聞を見られた?」


 睦月が向かったのは新聞部だった。

 部長の城ヶ崎は彼の姿を見て一瞬腰を浮かしかけたが、すぐに逃亡を諦めた。


「一週間前と言うとそれしか心当たりがないな。あれから新聞部にも姿を見せないし、かなりショックを受けていたようだし」

「……城ヶ崎?」


 見る見るうちに睦月の周りの空気が冷えていく。

 

「あわわ……!ちょっちょっと待て!!ここで暴れるな!!こっちの話も聞け!!」


 城ヶ崎の引きつった悲鳴に睦月は氷のような一瞥を投げかける。


「釈明できるの?なら聞いてあげるよ」

「ううっ。そう戦闘的になるな。裏新聞を見られた事については謝る。彼女の気配の消し方を甘く見ていた俺のミスだ。だが、ランキングに対してどう説明してやれば良かった?ランキング内には朝霧やお前の親衛隊長の名前もあった。つまり彼氏持ちでもランクイン出来るという事だ。その中で、フリーである自分がランク外だった事に神田くんはショックを受けていた。それをどう説明する?お前は会長にロックオンされているから報復が怖くて誰も投票できなかったと正直に言ってやるか?会長の横やりがなければお前がナンバーワンだったと言ってやっても良かったのか?」

「……」


 人気ランキングは基本何の制約もない。

 雅や花音のように彼氏がいても、投票する事が出来る。

 基本的に独占欲の強いのが人外の特徴だが、想いを通じる事が出来ればある程度寛容になる。

 その証拠にあれほど並外れて独占欲の塊のような晴可でも、雅のファンクラブである雅会の事は公認していた。

 だが、衿香のようにまだ誰の手にも落ちていない場合は話が別だ。

 学園最強の睦月が衿香の事を気に入っている以上、それを知った上で衿香に投票するという事は睦月への宣戦布告という事にもなりかねない。


 腕組みをしたまま眉間にしわを寄せる睦月に、城ヶ崎はさらに言いつのる。


「大体、彼女を落とすのにいつまでかかってるんだ?妙に積極的かと思えば、妙に消極的だし。飽きたのかと思えば、牽制の仕方が半端ないし。そろそろはっきりさせておかないと、ややこしい奴らが介入してくるんじゃないのか?」

「……わかった」

「ん?なに?おい、幸田?」

「邪魔した」


 くるりと城ヶ崎に背を向け、睦月は部屋を出ていった。

 そのあっさりとした態度に、城ヶ崎は嫌な予感を抱く。

 かなり目が据わってたよな~。

 神田!ふぁいとだぞ!

 貴重な女子部員の未来に一抹の不安を覚えながらも、睦月を止めようとは思わない城ヶ崎だった。


  

 



  

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