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情報屋登場

「えりりーん。聞いた~?今年の交流会の話~。」

「ちょっ!誰がえりりんよ。」

「ええ~。僕とえりりんの仲じゃんか~。」

「どういう仲よ。」

「えっ。ここでそれを証明してもいいの!?」


衿香はぐいっと顔を寄せる男子生徒に拳をくれてやった。


「う~~。えりりん、痛い。でも僕、ちがう悦びに目覚めそう。」

「一生眠ってて。」


衿香に絡むこの男子、名前は一条夏目という。

ひょろりと細い体に面長な顔立ち。

目は細められた猫のようで、衿香基準ではクラスで唯一イケメンではない男子。

おかげで懐かれても一蹴できる希少な存在である。

しかもこの夏目、中学から持ち上がった進学組でかなりの情報通であり、学園の情報に乏しい衿香にとってかなり都合の良い人物であった。


「交流会って、交流パーティーのこと?」

「うん、そうそう。去年はそうだったんだけど、今年はパーティーじゃないんだって。」


衿香の疑問に素早く立ち直った夏目が答えてくれる。

パーティーじゃない。

衿香は眉をひそめる。

衿香の頭には父から受け取った攻略マニュアルが入っている。

それには季節行事もしっかり書かれていたのだが。

毎年変更されちゃ、対策立てにくいじゃない。


「そんなに毎年変わるものなの?」

「いや~。ここのところそんな変更はなかったけど。会長の幸田さんが色々考える人なのかな~。」

「で、何に変更になるの?」

「え~~。いくら僕のえりりんとは言え、なんの見返りもなく情報を渡すのはな~。」

「・・・夏目くん?」


衿香が半眼で夏目を睨む。

とたんに夏目の顔が赤くなる。


「うっ。えりりん、僕がその顔に弱い事知ってて・・・。ひどいよ、えりりん。」

「な~つ~め~く~ん。」

「分かったってば。今年の交流会はね~鬼ごっこなんだって~。」

「なっ!!?」


交流会。鬼ごっこ。

衿香の頭の中でその相容れない言葉がぐるぐる回っていた。


「何をどう交流するって言うの・・・?」

「えっとね。鬼は上級生。逃げるのは1年生と生徒会役員。範囲は寮を覗いた高等部の敷地全部。鬼に捕まると、その鬼の所属するクラブおよび委員会に一週間仮入部しないといけないんだって。」

「ええ?」

「幸田会長ってすごい合理主義者なのかなあ。だって新入生は高等部の広大な敷地を自然に頭に入れるだろうし、上級生はクラブ勧誘の手間がはぶけるし。ちなみに逃げ切ったらご褒美があるんだって。」


いや。クラブくらい好きなのに入れてやろうよ。


「どうしても女子って誰かの親衛隊に入っちゃうんだよ。あ、親衛隊も部活として認められてるからね。それから運動部も対外試合が出来ないから人気ないし、文化部も地味だって更に人気ないからね~。とりあえず強制的に仮入部させて、それぞれの活動を知ってもらおうって狙いがあるんだって。あ、でも仮入部のあとは好きにしていいんだよ?」

「ふーん。それにしても鬼ごっこって。小学生じゃあるまいし。」

「あは。楽しそうじゃん?えりりん、僕と恋の逃避行を楽しもうよ。僕いい隠れ場所知ってるんだ~。隠れている間にお互いの壁を取り除いちゃおうよ!」

「・・・。」

「おーい、えりりーん。カムバック、プリーズ~。」


最後は完全に黙殺された夏目であった。


その日のうちに交流会の噂は学園中に広がっていった。

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