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ちょっと寄り道1

翌日、衿香が新聞部に顔を出すなり、上機嫌の城ヶ崎は彼女にカメラを押し付けた。


「さすが、僕が見込んだだけの事はある。向こうの気の変わらないうちに写真を頼む。」

「えっと、あの。」

「構図は君に一任するよ。さあ、行きたまえ。」


問答無用。

衿香の後ろでドアが閉まった。


「事情を聞いておきたかったのに……。」


ため息とともにつぶやきを漏らし、衿香は今来た階段を下りて行った。

いつ見ても綺麗な建物だな。

ぐるぐるらせん階段を下りる度に、建物は色んな表情を見せる。

ふと気が付いて衿香は手にしたカメラのシャッターをパチリと切った。

いいカメラだ。

そう思いながら何枚か、建物を小さく切り取る。

いつの間にか無心になっている自分に気が付き、衿香は苦笑を浮かべた。


「さあ、行ってまいりますか。」




部室棟を出て、生徒会室のある校舎の近くに来た時。

数人の女子生徒がばらばらと衿香に走り寄った。

衿香は立ち止まって彼女たちを迎える。

先頭に立つ少女が険しい顔で衿香を睨んだ。


「1年の神田衿香ね。一緒に来てもらうわ。」


有無を言わせない態度に、衿香は大人しく従う事にした。

連れて行かれたのは人気のない裏庭だった。

特別棟と連絡通路に挟まれたこの場所は、普段でも人の出入りは少ない。

校舎からもわざわざ覗きこまないと見えない場所だ。


「何のご用でしょうか。」


衿香を取り囲んだのは総勢6名の女子生徒だった。

それぞれ端正な顔立ちをしている。


「まずは自己紹介をしておきましょうか。私は睦月さまの親衛隊長の如月花音。隣は副隊長の杉木真理よ。」

「で、私が信也さまの親衛隊長の玉木律香。隣が副隊長の山里みなみ。」

「最後に私が敦志さまの親衛隊長の井上芹名。隣が副隊長の木之下蘭。」


「もう分かっているでしょうね。これは生徒会親衛隊の総意に基づいて行われる尋問よ。」


はあ、来たか。

そんな予感はしていた。

誤解をされる事は日常茶飯事だ。

善意の行動が、ある方向から見れば策略に見える事がある。

衿香の場合、見た目とバックボーンから変に勘ぐられるのには慣れていた。

けれど、どれだけ慣れたと言っても気持ちがいいものではない。

多少気分が落ち込み気味になるのは、仕方ない事だった。


「神田衿香。あなたは交流会を利用し、新聞部に入部し、その権利を乱用して生徒会役員さまと接触をした容疑がかかっている。1年生の話では、さも全員の身の安全に心を配っているかのように見せかけ、団体行動を強要し、自身は単独行動で新聞部部長に接触したという事だけど、申し開きはできる?」

「出来ないわよね。こんな露骨なことして。」

「少し顔が可愛いからって、なんでも許されると勘違いしてるの?」

「人を騙してまで、自分を売り込もうなんて、なんて人かしら。」

「そんな人が役員さまと言葉を交すなんて、許せないわ。汚らわしい。」


尋問という割には、衿香の答える隙がない。

ごほん、と衿香は大きく咳払いした。


「皆さん、静粛に。発言の機会をいただけますか?」


そして、何ものをも魅了する笑み(今回、儚げバージョン)を浮かべた。

思わず、といった様子で親衛隊員たちは衿香の長いまつげを見つめるのだった。

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