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生徒会室に行こう2

衿香がソファーに腰を下ろすと同時に、ご機嫌な睦月がぴったり隣に座った。


「……他にも席があいてますが?」


衿香の問いを無視して、睦月は衿香の手元を覗きこんだ。


「うーん。その質問はNGかな。」


睦月の視線は衿香の持ってきた新聞部の手帳に注がれている。

そこには城ヶ崎に質問してくるよう言われた項目が幾つか並んでいた。


「え?どれがですか?」


一瞬、至近距離に座っているのを忘れて、衿香が睦月の方に顔を向けた。


「ぐっ。」


途端に視界一杯に広がるイケメンの横顔。

手帳を覗くために前かがみになっているので、その端正な横顔と衿香の顔の距離、およそ二十センチ。

思わず体を引く衿香に、睦月は「ん?」と顔を向ける。

その全く他意のなさそうな無邪気な顔に、衿香の頬が熱くなる。

ま、まるで私だけが意識してるみたいじゃない!


「ああ、近かった?」


そんな衿香に睦月は悠然と微笑むと、ほんの少し離れて座り直した。

なぜか負けたような気分になって唇を噛みしめる衿香の前に、すっと紅茶のカップが差し出された。


「どうぞ。睦月は仕事があるだろ?」

「え~~?」


文句を言いながらも睦月は自分の机に戻って行き、衿香はそっと息を吐いた。

代わりに真田が衿香の隣に立って、手帳を覗きこむ。


「うーん。そうだね。朝霧さんの答えにくい質問だね。」

「そうなんですか?」

「うん。例えばこれ、好きな男性のタイプとか。休日の過ごし方とか。お気に入りの場所とか。」

「プライベートについて聞かれるのがダメなんですか?」


真田の男性にしては細く長い指が手帳の上を滑る。

同じ項目の質問を他の生徒会役員にもしているはずだけど?

衿香がちらりと隣に立つ真田を見上げた。

適度な距離を保ったまま、微笑む真田。

うん。紳士的な態度。合格。

軽々しく女の子の隣に同席しない真田に好印象アップだ。


「神田さんは去年を知らないからね。」

「去年?」

「上級生はみんな知ってる事なんだけど、朝霧さんには婚約者がいるんだ。」

「そうなんですか。」

「それがね、まあ、なんて言うか、独占欲の強い人でね。朝霧さんの個人的な情報が漏れる事にあまりいい顔をしないんだ。」

「じゃあ、誕生日なんかもダメなんですかね。」

「うーん。調べればすぐわかっちゃうんだけど、嫌がりそうだね。」

「そうですか。じゃあ、星座くらいならどうですか?」

「それくらいならいいかもね。」

「分かりました。あとは・・・趣味、特技くらいお聞きしてもいいでしょうか?」

「うん。それくらいが限度かな。」


ありがとうございます、と衿香はとっておきの笑顔を真田に向けた。

どういたしまして、と爽やかに席に戻る真田。

これは簡単には攻略不可だけどかなりの有力候補だ。


第一候補見~つけた。


学園に来て、初めてまともそうな人間に出会えた喜びに、思わず頬が緩む衿香であった。




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