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蝋人形と王子様  作者: 太陽
第1部
2/44

王子様のプロローグ

 六原稔りくはらみのるは猫かぶりだった。


 猫かぶりの王様。「キング オブ 猫かぶり」とでも言えばよかろうか。

 彼が被っていたのは「爽やか美少年」という猫。

 彼は小さいころから損得勘定が得意な人間であった。

 嫌われすぎず好かれすぎず。それが彼の目指す己の姿だった。

 彼の本性は親兄弟しか知らない。実際はただやんちゃで年相応の男の子だったのだが、彼は見事なまでに爽やかを演じていた。

 それゆえ、その誰をも魅了する見事なまでの好青年の噂は誰ともなしに広がって、入学後1ヶ月にして、彼を知らぬ者は同じ高校には誰一人としていなかった。


 「王子様」


 それが彼に与えられた称号。


 彼は、その美しい容姿も手伝って、女であれば先輩、後輩、同級、教師、果ては保護者まで、誰からも愛されていた。

 だからといって、同性から総スカンを食らう……といったことも皆無であった。彼は同性からの評判も非常に高く、彼に嫉妬する男はいなかった。

 なぜなら、彼は「王子様」だったから。

 彼のことを嫌いだと言おうものなら、嫌った人間の方に問題があると思われてしまう、それほどまでに爽やかすぎる王子様だったから。


 そんな彼に、当然いるべきはずの相手――恋人がいないのには訳があった。

 彼は入学初日の自己紹介で「僕は面食いです」と宣言していたのだ。

 普通であれば反感反発ブーイングな台詞であっても、彼が言えば爽やかだった。

 インタビューで「趣味は休日に愛犬と庭でじゃれあうことです」と答えるアイドル並に爽やかだった。

 見目麗しい己が顔を見慣れているであろう彼の口から爽やかに飛び出した「面食い宣言」。

 色めきだっていた女子たちは一瞬にして諦めモードに入ってしまった。彼の眼鏡にかなう自信などもてなかったから。

 それゆえ、それが彼の処世術――「猫かぶり」であるということに気付く者は一人もいなかった。


 そう、本当は、彼は面食いなどではなかった。

 むしろ、彼は面食いな人間が大嫌いだったのだ。



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