救世主
**救世主**
「黒鍵のエチュード」を弾けない中、僕を救ってくれた人物が現れた。天目竜助、ピアノ教師だ。単なるピアノ教師ではなかった。初見で何の曲でも簡単に弾けてしまう、神のような人物だ。
たまたまネットで知った。僕はただちにウェブページにあった電話番号に電話し、事情を全て話した。天目先生はそれを聴き、こう答えた。
「黒木君、心配しないで自分に信じて。君が演奏するのを聴いてみたいが、今週の土曜日はどうかね?わしの家に来てもらえないかな。」
土曜日になり、僕は天目先生の家にお邪魔した。早速今弾いている「黒鍵のエチュード」を弾いてみた。弾き終えるとともに、天目先生はこう言った。
「たいへんですよね、『黒鍵のエチュードは』は。でも大丈夫ですよ。絶対に治りますよ。黒木君、君の足に合った練習法を必ず考えてみます。」
それから少し話した後、毎週土曜の同じ時間に天目先生のレッスンを受けることになった。
一回二時間レッスンで実に一万五千円。若干高いとは思ったが、「黒鍵のエチュード」
を弾けるようにするには多分これしかなかった。
次の週、僕は再度天目先生の家に行った。
「先生、おはようございます。」僕は言った。すると先生はこう答えた。
「おはよう、黒木君。これを見て。」
と同時に一枚の紙を出した。そこにはいろんな事が書いてあり、一回みただけではりかいしきれない程の音楽用語が書いてあった。
「これが君の練習法だよ。簡単に説明するね。」先生は言った。「君は今一日最低十時間は練習してると言ってたな。それをまず八時間に減らすのが良いと思うんだね、わしは。君は主に足で弾いているのだし、手で弾いている人に比べて疲れるのが早い。あとは、無理にリズム練習をするのは逆効果だと思う。それより、十六分音符五十の速さで片足ずつ弾く方が断然良い。そのテンポで両足と左手を使い、ミスが無くなるまで弾けれるようになったら、少しずつテンポを上げることを許そう。そして最終的には仕上げのテンポで弾けるようにしよう。あ、そうだ、練習する時に注意しないといけないのがここに書いてある言葉だ。*音階、ミスタッチ、休符、レガート、タイ、強弱、アルペジオ、フレーズの最後、アーティキュレーション、アクセント、ユニゾン、アニマートとカンタビーレ。意味は全てわかるよね?この紙、あげる。それじゃあ、レッスンを始めよう。」
その日のレッスンが終わり、家に帰った僕は早速孝次にこの事を伝え、先生にもらった紙に沿って練習した。
まだ仕上げのテンポからはまだ程遠いが、四日後にはなんと十六分音符五十のテンポでほぼ完ぺきに弾けるようになった。




