ボツ集その9
とりあえず一通り使ってみることになったダイジェストがこれだ。
「剣を叩きつけていると槌と変わらんぞ。刃で斬るイメージを持て」
「ナイフはまだ難しいだろう。このように相手の懐に入るだけでも一苦労なのだからな」
「弓矢もないのに、どうして弓を構えた? 木の枝では弓矢の代わりにできんぞ」
「槍は穂先で突くイメージだ。突く時に力を入れねばただただ突っついているのと同じだぞ」
「槌を持っただけでふらつくようじゃまだまだだな。まずは体力作りから始めないとな」
「拳が1番マシかもしれんな。拳を出すタイミング次第では相手も避ける。対人ではフェイントも織り交ぜるのだぞ」
結論、武器はバンテージになった。
拳か……
「もしも他の武器を練習したい時や対人訓練をしたい場合は兵舎までくるといい。門番には話を通しておくからな。何時でもくるといい、リベットよ」
と言い残し、隊長さんは去っていった。
「……というかモンスターとの戦闘じゃなくて、対人戦を教えられたんだが?」
「そういうこともあるさ」
クランがうんうんと頷きながら肩をポンッとしてくるのが微妙に腹が立つが
「とりあえず、モンスターでも探してみるか」
「どういうタイプがいいの? ここら辺にいるのはゴブリン系だったり、スライム系だったり、鳥とかもいるけど?」
「結構いるんだな……拳だしなぁ……スライムはどうだ?」
「やめておけ。拳がヤツらの体内にぬめり込むだけだぞ」
下手すりゃそのまま溶かされそうだな。
「鳥かゴブリンか。そこから慣らさないとだな」
「ま、採取系のクエストで生計立ててもいいんじゃない? ボクもいるしさ!」
「なぁに、いざとなれば私がリベットを養おう。相棒殿は宿で薬などを作って売っていればそれでいい」
嫌な予感しかしないし、自分でモンスターを探してくるか。
そう思って辺りを見渡すと、なるほど確かに鳥っぽいモンスターがいた。
「まずは殴れるかどうかだな」
モンスターというか鶏そのものっぽいが……これはゲームなのだ。
リアルに近い再現度をしているが、これはゲームの鶏だ。
「スゥー……ハァー……」
レベルが低いのか、鶏はこちらに気づく様子は無い。
ならば
「グゲェッ!」
一足飛びに近寄り鶏の後ろから首を一気に締め上げる。
ジタバタと羽や足をバタつかせるが、決して力を緩めずに、
「ふぅ……こんなものか」
絞め落とす。
力尽きた鶏は消えずにそのまま……?
「ウィンドウが勝手に?」
鶏を前にどうしたものかと思っていると、勝手にウィンドウが開き、
「なるほど、これもチュートリアルの一巻ということか」
ヘルプページが表示された。
・倒したモンスターは剥ぎ取らないと消えず、素材を手に入れることは出来ない
・剥ぎ取り次第で素材の状態が決まる
・採取や解体系スキルで素材の数が増え、良い状態で取得可能
とのこと。
「……適当に切ってみるか」
武器をナイフに切り替え、まずは首と手羽先を落とす。
そうすると、
「なるほど、こういう感じか」
・平原コッコの鶏冠
・平原コッコの手羽先(状態:普通)
・平原コッコの羽
の入手ウィンドウが目の端にでてきた。
「身体にナイフを入れるとどうだ?」
・平原コッコの肉(状態:普通)
・平原コッコの羽
「ふぅむ……肉と手羽先は血抜きまでしないとダメっぽいな」
アイテム説明欄に『血抜きをしないと状態が悪化する』と書いてあるしな。
とりあえずナイフを刺してみる。
「変わった……のか?」
鑑定系のスキルがないと分からないとかか?
ふーむ……
「まぁ、いいか。戦えることは分かったし」
それより問題は……
「後ろでえらいことが起きてる気しかしないが……止めないとまずいのか……」
音が凄いんだが……
独り言が多いのはおじさんだから......かもしれない。




