ボツ集その31
んにゃ……寝すぎた……?
外が真っ暗になりかけてる。
「……これ……なに……?」
私の前には空中で串刺しになっている何かがあった。
動物……でもないし……こんな人村にはいなかったはず……
「ばば……ばば、どこ……?」
周りを見渡すもババの姿は無い。
外は静かだ。
いつもならもう少し声が聞こえるはずなのに。
そぉーっと扉に手を伸ばし、ゆっくりと扉を開ける。
ゆっくりと扉を開け、顔を扉の外に出した途端、
「ふぐぅ」
身体を何かに掴まれた。
掴まれたまま、ガッと顔を手で掴み、腕で身体をガッチリと固めてくる。
村長さんでもババでもない身体の硬さ。
これは……
「大人しく地の底へ戻るがいい!」
その時、ババの声が聞こえた。
なんとか顔だけを腕の中から顔だけをだすと、上にババの姿が
「ば、ば……」
「っ!」
ババの目が大きく開いたと思ったら、
「ぐぁっ!」
大きく吹き飛ばされてしまった。
「ばば!」
「ゲッゲッゲッ! 油断も予断もしなかったなぁ。確かにしていなかったが、この状況でお前は手を出せないよなぁ!?」
何とか離れようと暴れるけど、腕がカッチリと私を捕まえているから離れられない。
「ばば!!」
「ミウロゥ……私が……助けるから……」
「この状況でこの小娘の心配か。ヒト族にしては随分と粘るな」
そう言って腕が少し緩んだ。
それと同時に私は少し暴れて、やっと地面に落ちた。
「ゲッゲッゲッ! よーーーくみておけよ? 今からこの老いぼれを」
バッと顔を上げると、そこにはババの前で六本の腕を振り上げているバケモノの姿が。
「や、やめ……やめて……」
「ズタボロにしてから殺してやるからよォ!」
あ……あぁぁ……
「ば、ばば!!!!!」
(娘、泣くんじゃあない。アルヴィはまだ無事だ)
だ、だれ!? だれが話しかけてるの!?
(落ち着け……そうだ、ゆっくりと呼吸をしろ。よーく見ろ。アルヴィの周りに障壁を張ってある。だがな、アレはすぐに壊れてしまう)
な、ならすぐ助けないと!
(ダメだ。アルヴィの言葉をお前に伝えることが私の仕事なのだから。一度しか言わないからよーく聞くように。
「ミウロゥ、幸せにおなり。命が終わるその時に幸せだったと思えるように生きるんだよ。このババとの約束だ」
だってさ。随分と酷い呪いだよ。あ、失礼。約束だったね)
しあわせ……ババもいない……
(あぁ、それと。目の前のバケモノがいなくなったら、私を探すんだ。私は古くてシナシナの……まぁ、近くまで来たら分かるようにしておくさ。いつか必ず探しに来るんだよ。お前の役に立つからさ)
ばば……
「ゲッゲッゲッ! そら、これで終わりだ!」
「人間の……悪あがき……」
ババの声!!
「最後にとくとその魂に焼き付けておけ!」
ババが眩しいくらいに光る。
ババがこっちを見て
さ、よ、う、な、ら
って言った気がした。
人の心とかないんか、この杖。
人じゃなかったわ。




