ボツ集その3
VSWはVR型のMMORPGである。
時々街中でも広告が出るくらいには人気がある、程度には認知があるらしい。
メインストーリーもあるが、なんと人によって異なるストーリーになるとのこと。
プレイヤーが選ぶ武器1つで変わるし、なんなら交流するNPCによっても変わる。
同じように進めても絶対どこかで変わるようにできている。
全員が全員違うのかと言うと実はそうではなく、微妙にセリフが違うらしい。
それでもプレイヤー1人1人違う展開になると言うのだから、驚きだ。
というのが、このゲームを始める前に軽ーくネットで調べた前情報。
のどかな草原を歩きながらそんなことを思い返していた。
何しろ光が収まったと思ったら、目の前が草原だったし。
ちょっと離れたところに家が見えたから、とりあえずそこを目指している途中。
そんな感じでブラブラと歩いていると、
「おんやまぁ。お前さん、異界人かい?」
「いかいじん……あぁ、そうだ。ついさっきこっちに来たところでな」
異界人。
それがNPCから見たプレイヤーの総称。
要は異世界からやってきたヒト族だということ。
別種族だとまた違う展開になるとのことだ。
「最近はてんで見ねぇもんだからオラぁてっきりもう来ないかと思ってたぁよ」
そうかそうか、と牛に乗った農民? っぽい格好をしたヒト族が頷く。
「んでだ、今からあの村さ行くところか?」
「そうだな。とりあえずそこに向かおうと思っていたところだ」
「んだったら、オラが連れてってやるよ。まだもう少し歩くしな」
ほれ、と後ろをチョイチョイとする。
そこにはあったのは
「これにか?」
「おん。まぁ、せめぇし、ちょっくら窮屈かもしれねぇがな」
牛車……だったか。
藁で溢れかえっているが……まぁ、乗れないことは無い。
「ならば好意に甘えよう。何か手伝えることはあるか」
「気にすんでねぇ、と言いてぇところだが、向こうに着いたら手伝ってくれるとありがてぇなぁ」
「ならばそうしよう」
牛車の後ろにちょうどスペースが空いていたからそこに座る。
「んだら行くだよ」
ゆっくりと牛が動き出しそれに合わせて牛車も揺れる。
ノンビリと草原を行く。
こういうのも悪くは無い。
ユラユラ揺られながら、さっき貰った特典のことを思い出す。
他のVRMMOをプレイしたことがないから分からないが、このゲームで画面を出す時は空中で横に線を引く。
そうすると線を中心に画面が出てくるという方法らしい。
それをさっきのやかましく喋る画面がいた場所で本当は教えて貰えるんだとか。
事前に軽くwikiに目を通して正解だったな。
出てきた画面には、
・装備
・持ち物
・所持金
と、その横に自分のアバターが映っていた。
それだけ……か?
後々増えたりするんだろうか。
とりあえず持ち物欄をタップし、開いてみる。
・ランダムBOX
・素材BOX
・武器
・防具
・回復薬(10個所持)
・謎シリーズ
なるほど、確かにさっき貰ったものがここに入っているな。
ランダムBOXは完全ランダムで何が出るか分からない箱、素材BOXはランダムで素材が1つでる、回復薬は10個か。使いすぎに注意だったな。
で、最後の謎シリーズ。
何かの1式がでるみたいだが……所持枠を圧迫するかもしれないことを考えると……
「後でいいか」
画面を消す時はどんな動作でもいいらしい。
丸めて放り投げてもいいし、手のひらで拭くようにしてもいいし、なんなら指パッチンでも消せるらしい。
……大人しく拭くように消しておくか。
「異界人のあんちゃんよぉ〜、もうすぐ村に着くだよぉ」
少し前を振り向くと、確かにもうすぐ村に着くところだった。
前回のは多分半分くらいに分けていたんでしょうね。
こっちの方がまだゲームっぽいか?




