ボツ集その28
私が怪我をしてから?
のろい? を受けてから二回の【歳重ね】がきた。
私が産まれてから五回の【歳重ね】を迎えた、らしい?
「ミウロゥ、今から大事な話をする。よーく聞きなさい」
「うん」
【歳重ね】のお祝いが終わってから何回か暗くなって明るくなった時、私は村長さんに呼ばれた。
村長さんの家には、村長さんとババが座っていた。
「ミウロゥ、お前には親がいない」
「……おや?」
おや。
親。
つまり、セトルのお母さんとお父さんみたいなの?
「お前は村の後ろにある山の中にポツンと置かれていたのだ」
「猟師のおじちゃんが見つけてくれてね、連れ帰ってきたんだよ」
なら猟師のおじちゃんが、私のお父さん……おじちゃんでおとうさん?
おヒゲがボーボーで髪も長くて、顔がよく見えない、というか顔が髪とおヒゲだらけのあのおじちゃんが
「……わたしのおとうさん?」
「うん、違うぞ。というかアイツの娘だとしたらこのワシが絶対に許してねぇんだがよ」
「村長」
ババの一言でブツブツ何かを言ってた村長さんは、
「んん"! とにかくだ。お前に親はいないんだ。辛くなることを言って悪いが……」
「……つらい?」
親がいないことは辛いことらしい。
辛いことは悲しいことって、ババが教えてくれた。
でも、
「みんなやさしいからかなしくないよ?」
「ミウロゥ……!」
ババがこっちに来ようとして、ガクンってなった。
ちょっと面白い。
「落ち着けアルヴィ。ミウロゥのことになると暴走するのはお前の悪い癖だ」
「ラング、次私を止めたらどうなるか……分かってるんだろうね?」
スっと元の場所に戻ったババ。
と、汗をダラダラとかいてる村長さん。
「そんちょーさん、あついの?」
「い、いや。そんなことはないぞ?」
おかしな村長さんだ。
「辛くないんだったらそれでいい。だけどな、ミウロゥ。これだけはよーく覚えておきなさい」
そう言って私の近くまで歩いてくると、しゃがんで
「ワシ達はいつまでもお前の味方だ。辛いことがあったら、嬉しいことがあったら、怒りたくなったらワシ達に言いなさい」
私の頭を優しく撫でて、
「ワシは……いや、村におる全員が、お前を抱きしめ、喜び、怒ってやろう。お前はワシ達の宝なのだからな」
そっと抱きしめてくれた。
村長さんに抱きしめられるのは、好きだ。
優しくて、大事なものを扱うように、丁寧に、そっと抱きしめてくれる。
ババ達みたいにぎゅうぎゅうに抱きしめられるのも……たまには……いいけど、村長さんが一番好き。
「そんちょーさん」
「ん? どうした」
「おとうさんがいるってこんなかんじなのかな」
村長さんの背中に手を回す。
大きくて、暖かくて、それでいてどこか安心する。
「さぁなぁ。ワシも親父……親がいなかったからわかんねぇなぁ」
「そんちょーさんも? わたしといっしょだね」
村長さんの顔を見上げると、村長さんも私を見ていて、
「あぁ、いっしょだな」
村長さんがニコっとしていた。
「いつまで抱きついているんですか」
ババの声が聞こえた。
これは……セトルが怒られる時に聞く声だ。
「オババはもう少し優しくしてやりゃいいんだよ。いつもあんなにぎゅうぎゅうするからダメなんだろ? なぁ?」
とか言いながら、私を抱きしめたまま?
「うわぁ」
「どうだ? こっちもいいだろ?」
村長さんに抱き上げられた。
いつもは見上げてるか、同じくらいのババが下にいる。
少しだけ、ほんの少しだけ怖いけど、
「たのしい!」
私が村長さんの顔を見ながらそう言うと、
「そうかそうか。また何時でもやってやろう」
と、笑いながら言ってくれた
その時だった。
床が大きく揺れる。
「……馬鹿な……」
「早すぎるのでは……!」
村長さんとババが真剣な顔でお互いを見ている。
「どうしたの?」
「ミウロゥ、いいか? 大人しくここでオババと待っているんだ」
村長さんは私をババの近くに降ろして、そう言った。
「ラング、嫌な予感がする。何かあったらすぐに戻ってきなさい」
「もちろんだ。アルヴィ、ミウロゥと村の皆を頼んだぞ」
そう言って村長さんは外へ出ていった。
「ばば、どうしたの?」
「……分からない。でも、何も心配しないでいいんだよ」
ババはそう言って私の頭を撫でる。
優しく撫でる……眠く……
「んぅ……ババ……?」
「眠いのかい? ならこっちで少しお休み」
私を抱きしめてくれた。
なら少しだけ……ほんの少しだけ寝ようかな……
「おや、すみ……ば、ば……」
「あぁ、おやすみ。可愛いミウロゥ」
ここから暗くなるからあまり進まなかったんですよね......




