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ボツ集  作者: からくり
27/36

ボツ集その27

「みうろぅ!」

「せとる!」


起きてから何回か暗くなって、明るくなった時に、ようやく私は外に出られた。


外に出てすぐ、セトルがこっちに走ってきた。


「けがは!?」

「ううん、へいき?」


首を横に振ってから果たして、半分見えていないこれは平気なのかな、と思う。

へいき?


「せとるは? けがない?」

「おれはない。でもみうろぅのかおが……」


そういって私の顔にへばりついている布に手を伸ばそうとして


「ミウちゃん!」


目の前が真っ暗になった。

前もそんなことがあったような?


「母さん、ミウロゥちゃんが可哀想だろう。少し離してやれ」

「いやよ! 女の子の顔にこんな……こんなの……!」


かあさん。

ということは、セトルのお母さんだ。

会う度にいつもぎゅうぎゅうと抱きしめてくれる。

でもそろそろ苦しい。


「んーんーんんー」

「あぁ! ごめんよ、ミウちゃん。オバサン不安で不安で」

「ぷほ」


少しだけ離してくれた。

上を見上げると、セトルのお母さんが私を見下ろしながら泣きそうになっていた。


「かなしいの?」


私はセトルのお母さんの顔に手を伸ばして、ほっぺたに手を当てる。


「かなしいときはないていいってばばがいってたよ?」

「ミウちゃん!!!」


また私の目の前は真っ暗になった。


「いい加減にしろって」


でも直ぐに明るくなった。

私とセトルのお母さんを離したのはセトルのお父さん。


「ミウロゥちゃん、うちのバカがちゃんと守ってやれなくてゴメンな」


そう言って私の目の前で屈み、私の頭を撫でてくれる。

セトルのお父さんの撫で方は好きだ。

ババと村長さんの次に優しいから好き。


セトルのお母さんは撫でるより抱きしめてくるから分からないけど。


「ばか?」

「こら、アンタ! ミウちゃんになんて汚い言葉教えてるんだい!!」

「いでぇ!!!」


私が首を傾げていると、セトルのお母さんが拳をこれでもかっていうくらいに、セトルのお父さんの頭に押し付けていた。

あの押し付け方は……ババが野菜を砕く時はこうやるんだって教えてくれたのと同じだ。


ゴチンって痛そうな音が聞こえたから多分痛い。


「ゴメンねぇ。あとで二人はオバサンからちゃんと怒っておくから、ね?」

「う、うん?」


よく分からないけど、多分わかった。


「アンタたち、この子の前で喧嘩なんてしないでおくれ。病み上がりなんだよ」


後ろからババの声が聞こえてきた。


「ばば」

「ミウロゥ、外に出てどうだい? 大変だとは思うけど」

「んー……んー?」


そう言われてグルっと回ってみる。

確かに少し見づらい。

でもそんなに困らない?


ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。


「ぐるるるる?」

「あぶねぇ!」


フラッと倒れそうになった私を抱きしめてくれたのはセトルだった。


「せ、せとる〜。あ〜りが〜とう〜?」

「そんなにまわるからだろ。ちょっとすわれよ」


そういいながら、地面に私を座らせる。

目がぐるぐるぐるぐる。


「そらが〜まわってる〜」

「めまわしただけだろ」


どこか冷たい幼なじみの声。


「その様子なら大丈夫そうだね。セトル、話がある。ババのところにあとできなさい」

「……わかったよ」


あ〜、そらが〜くるくるくるくるくるまわる〜。

ぐるぐる。

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