表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボツ集  作者: からくり
26/36

ボツ集その26

ハッとして目を覚ます。

そこはいつも起きた時に見える天井。

だけど、どこかオカシイ。


左半分が暗いままだ。


何か被っているのかと思って手を伸ばすが、手に当たるのは布だった。


「起きたのかい!?」


それは聞き馴染みのある声。

声のするほうを向くと、そこには桶を持ったババらしき人が立っていた。

声と服から多分ババだ。


「ババ……おかしいの……」


いつもなら寝ていてもババの顔までハッキリと見えるのに、首から下しか見えない。


「ちゃんとみえないの……」


どうして、どうして、どうして?


そんな私にババは桶を放りだして走ってきて私を抱きしめた。


「よかった! 本当によかった! アンタが生きていてくれてよかった!!」


私は生きているよ?


そう言いたかったけど、ババがぎゅうぎゅう締め付けてくるから声が出せなかった。


「無事なのか!?」


ババの後から誰かの声が聞こえる。

この声は多分、村長さんだろうか?

まだババが離してくれないから見えないし、声も


「んんーんーんん?」


こんな感じだ。


「おい、オババ! そのままじゃ何も話せないだろ! というか、窒息しちまうぞ!」

「あ、あぁ……ゴメンよ。生きていてくれて安心したらつい……」

「ぷは」


やっとババが離してくれた。

そこに立っていたのは間違いなく村長さんだ。

村長さんはとても大きい。

村長さんの腰より下に私の頭のテッペンがつく。

その上首が痛くなるくらい見上げないとそもそも村長さんの顔は見えない。


「そんちょーさん、わたしのめめ、おかしいの」

「それは……」

「こっちからむこうがみえないの。これのせい?」


そういって私は左手で左の向こう側を押すようにする。

村長さんはそんな私を見て言葉につまってたけど、それに構うことなく私は左手をえいと押す。


「ミウロゥ……!」

「わぷ」


ババがまた抱きついてきた。

今度は苦しくないように、さっきより少しだけ優しい。


みうろぅ。

ミウロゥは私の名前。

他の人とは少し違う名前。

村長さんの名前は……なんだっけ?


「ミウロゥ」


私が村長さんの名前を頑張って思い出そうとしていると、村長さんが声をかけてきた。


「いいか。お前の目はもう―」

「村長!」

「オババ。可哀想だと思うのはワシもそうだ。だがな」

「それでもまだ可能性はあるでしょう!? 街……いえ、城の方へ向かえば!」

「ダメだ。そんな余裕もなにもない。それはお前もわかっているだろう」

「でも! それでも……!」

「オババ……いや、アルヴィ。分かってくれ」

「……ラング」


あぁ、そうだ。

らんぐ。

ラングさんが村長さんの名前だ。

ようやくスッキリした私は


そういえば、ババの名前も特別?


「ミウロゥ。いいか、よく聞いてくれ」

「そんちょーさん?」


村長さんが私の名前を呼んで、ババが寝所で身体を起こしたままの私の横に身体をずらして座った。


「お前の……左目は、もうみえないんだ。それどころか……顔の左半分がもうダメなんだ」

「だめ?」


どういうことだろう?

見えないのは……うん、確かにいつもだったらもう少し見えている。

それはこの布のせいじゃ?


「今は布を巻いている。それは呪いを抑えるものだ」

「のろい……?」

「もう少し……あと十回【歳重ね】をしたら教えてやろう」

「いま、は……さんかい?」

「あぁ、今は三回だな。そこからあと十回だ」


むずかしい。

難しいことは分からないので、首を傾げておく。


「安心しろ。その時になったらワシが教えてやる」

「わかったよ」

ババと村長にも色々あった......はず......

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ