ボツ集その23
地へと墜落する竜を追って3人は空中を落下を始める。
「まずは俺から行く! クランとトリムはトドメを頼む!」
言うが早いか、リベットは頭へと手を伸ばす。
そこにあったはずのシルクハットは果たして、
「お前も……一緒にってか?」
いつの間にか載せられており、声の代わりに返ってきたのは親指を立てるポーズとニヤリと笑顔の赤い半月を象った口元。
地に堕ちた竜と空中で対峙する2人。
いつの間にか横並びになり、同時に手に持ったシルクハットを竜へと構える。
「フィナーレの開幕に相応しい出し物だ! その小さい眼かっぴらいてよーく見やがれ!」
瞬間、シルクハットの中から鎖が飛び出し、竜へと結びかかる。
「グォォォォォ!!!!」
「流石ではないか、リベット。これならば暴れることもあるまい」
竜の背中で仁王立ちしているはテイシオ。
よくよく見れば足元には魔法陣を展開している。
「テイシオ!」
「よく見ておけ。これはスキルを極めた者にのみあつかえる究極奥義! 竜よ、己のうちから喰い破られるがいい!」
魔法陣が強く光ると同時に竜の口から音にならない悲鳴が上がる。
所々刃が身体の内側からでているのが原因だろう。
「トリムちゃん! ラストはボクが!」
「わかった! しくじるなよ?」
内側からナイフで刺された痛みに蠢くも鎖で全身を縛られているため、まともに動くことも叶わない竜に対して、トリムは空中を蹴り、地へと流れるように落ちていく。
「死を恐れるな 其は死へと導く案内人 此度訪れるは終焉の刻 終わりの向こう側 楽園へといざ導かん 死の理:楽園葬送」
黒い稲妻が地へと落ちていく。
竜とトリムが交差するその瞬間、トリムは空中で急停止し、
「苦しまずに逝くがいい」
大鎌を竜の首に向かって振るう。
竜の首と胴体は綺麗に切断され、頭だけが空中を舞う。
「生きるとは驚きの連続 楽しみ 苦しみ 喜び 嘆く 終わったときに悔いのないように おいでませ ビックリ箱! 何が出るかはお楽しみ! 道化の理:デタラメボックス!」
クランの手から箱がポンッと軽快な音を立てて現れ、1人でに開いていく。
開いた箱の中から白い鳩が飛び出し、竜の頭へと集っていく。
数瞬の後、そこには5人と頭を失った竜の亡骸だけが佇んでいた。
「終わったーーー!!!」
「助かったよ」
「白金の竜を我らだけで獲るとはな。中々出来ることではあるまい」
「それもいいが……少し移動しよう。周りが少しうるさくなってきた」
気がつけば竜の亡骸は無く、見張り小屋の近くからは冒険者達が遠巻きにリベット達を眺めていた。
「あー……なら俺は1度ログアウト……眠っててもいいか? 宿屋じゃなければ身体は確か残ったままなんだっけか?」
「そうだ。宿屋や街中以外では無防備に晒してしまう。私達が少し離れた場所でしっかりと見張っておく。安心しろ」
「助かる。それじゃ」
リベットは手短にそう言うと、ウィンドウでなにやら操作したあと、ガクンとその身体を崩れ落ちさせた。
「おっと……というわけだ。私はこのまま少しでも王都に近づくために先へ進むが……お前たちはどうする?」
「俺は元より着いていくつもりですので、同行させていただきます」
「ボクは……残念。明日の準備があるんだー……お兄さんには色々と言いたいことがあったけど、それはまた別の機会にでもしようかな」
ヒラヒラと手を振りながらクランがその場を立ち去ろうとする。
「クラン」
「んー?」
「終わったらいつでも私たちの元へ来るといい。歓迎しよう、私もリベットもな」
「……ニヒッ。それならちょーっと本気出して頑張っちゃうかなー! あ、そうそう。明日のパレード、お兄さんは参加しない方がいいと思うから、上手いこと言いくるめておいてね!」
そう言ってクランはその場から煙となって消えた。
「さて、では先へ進むか。あの見張り小屋は……西のほうだったか」
「であればここから1番近い街は……オーベストの街になりますな」
「リベットには勝手で悪いが近づいておこう」
ということで、「仮想現実の世界で、自由な旅を」の原型はこれで終わりです。
モチベがこれ以上上がらなかったこととか、詠唱が下手すぎることとかが原因ですね。
あと読んでて面白くなかったので、書き直しました。
書き直した結果があれなので、どっこいどっこいか?
まだもう少しだけ続くんじゃ。
次はミウロゥの昔話。




