ボツ集その13
「なるほど、スライムの体液採取か」
「捕まえるだけならできそうだったからな」
「それはいいが、ヤツらヌルヌルしているぞ? その辺り苦手意識はないのか?」
「スライムは昔ガキの頃に玩具で触ったことがあるからな。まぁ、なんとかなるさ」
「玩具……アレを玩具扱いか。中々面白そうではないか」
そんな会話をしながら平原にまた戻ってきた。
しかしスライムの姿は見当たらない。
「スライムってどこにいるんだ?」
「ここにはいないぞ。いるとしてもコッコくらいだな」
確かにコッコはチラホラとみかけるし、それを追いかけている冒険者も見える。
最も爆速で逃げられているが……というか、コッコの逃げ足あんなに速いのか。
「少し歩いた所に川がある。その近くにスライムはいるんだ」
「ほー……そこら辺にいるもんだと思っていたが……」
「そうそう、スライムといえばこんな話があるんだ」
川へ向かう途中そう切り出すトリム。
「リベットの世界ではスライムは最弱だと思われているんだろう?」
「まぁ、御伽噺とかの世界にいるし、そういう扱いは受けているみたいだな」
「駆け出し冒険者、特に異界人もスライムは弱いものだと思うやつが多くてな。侮った結果どうなったと思う?」
「どうなったって……溶かされたとか?」
「いや、集団で飛びかかられて窒息しかかったのさ」
そりゃ……トラウマになるし、依頼達成度も低くなるだろ……
「オマケに素手で掴もうとするものだから、中々掴めない。何とか掴めてもヌルヌルしている。取りこぼしそうになって川に落ちたなんてのも聞いたな」
「ようはどんな相手でも侮るなって話だな?」
「そうだ。例えばコッコもそうだが、見た目は大人しい。しかし逃げ足は一段と速い。オマケに鳴き声を上げれば集団で襲ってくる。気付かれる前に背後からコッソリと近づくのが1番だな」
アレで正解だったのか……
「異界人であればパートナーがいるからな。上手い具合に意思疎通すればなんとかなるものだ。あとはチームを組んで相手をするとかだな。1人よりも2人、2人よりも3人。数が多ければ多いほどいいという訳では無いが、少ないよりかはいいだろうな」
そんな話をしていると、川にたどり着いた。
そこまで幅が広くなく、川底まで足首が浸かるかどうか程度。
「見ろ、あそこにスライムがいるだろう?」
「群れで棲息しているのか?」
「ヤツらに自意識みたいなものはない。群れで棲息しているというよりは、そこがスライム自身にとって1番住み心地がいい場所だと認識しているからだろう」
それで群れみたく数が集まるのか。
「気をつけるべきはスライムの核を潰したからと言って安心するな。連鎖反応が起きて飛びかかられるぞ」
「連鎖反応……核を潰しただけでか?」
「そこら辺のことは学者が今も研究中らしい。近づく、持ち上げる、なら何も起きない。が、素手で核を掴もうとするなよ?」
「もしかして溶けたりするのか?」
「その通り。奴らは見た目と手触りこそヌメヌメしているだけだが、核を掴んだ途端攻撃性を増すんだ。体液が強力な酸性になるほどにはな。それに付け加えて、周囲にいるスライムが核を壊した相手を敵だと認識する、らしい」
生存本能……ってやつか。
素手で核を壊せば手が溶け、武器で核を壊せば集団で襲われる。
スライムも怖いもんだな。
「なら掴まずに核を壊せばいいのか?」
「そうだ。核自体は脆いんだが、中々難しいからな。あとで手本を見せよう」
そう言ってトリムはスライムの群れへと近づいていく。
確かに近寄ってもこちらに気づくどころかただただ水辺の近くでのほほんとしている。
「まずは袋を広げておく。次にスライムを持ち上げる。そして直ぐに袋へと入れる。方法はこの通りだ」
「おおー……捕まえるだけなら簡単なんだな」
「捕まえるだけなら、な。まずは規定数集めよう。5袋分だったか」
「そうだな。あと4袋……一応多めに集めておくか?」
「それはリベットが決めることだ。私としては出来るなら集めておいた方がいいとは思うが」
「失敗の可能性もある。多めに集めよう」
それに練習もしたいしな。
「分かった。ならば私が傍で見ていよう。やり方はさっき教えた通りだが、もし忘れたなら何度でも聞いてくれて構わんぞ?」
「まぁやるだけやってみるさ」
この世界ではスライムも強いです。




