05
――そっくり三平。
それが俺の前世の名前、じゃなかった芸名だ。
ものまね芸人をやっていたが、なかなか売れず、気付けば三十二歳独身。
彼女いない歴=年齢、言っとくが決してモテなかったわけじゃない。
極度の奥手なんだ、……いや、言い訳だな。
幼い頃から、優しくて楽観的な両親から愛情を受け育った。
そのせいか、自分には強い共感力があった。
そして、いろんなものに興味が湧いて、つい魅入ってしまう癖。
それが自然と鋭い観察力につながっていたのだろう。
ものまねには、対称がどう振る舞っているかを客観的に観察する力が必要だ。
けど、それだけじゃ薄っぺらい。
その対象の内側に入り込む共感力が大事なんだ。
観察力で外面を、共感力で内面をなぞる――それがコツだ。
学生時代、ものまねで周囲にチヤホヤされた経験から、芸能スターになれると勘違いして芸人を目指した。
だが、現実は厳しかった。
ものまねは上手いと持てはやされはしたが、べしゃりは駄目、華もないというのが周囲の評価だった。
なにより肝心のコミュ力が乏しく、世渡り下手なのが痛かった。
何度かチャンスが訪れても、それを活かせず。
結局、出世できずに死んでしまった。
それなりに頑張ったのだが。
結局、俺の努力は無駄だったのか?
……いや、そもそも“無駄な努力”なんてあるのだろうか?
自分のやりたいことをやったんだ。
俺は、人生の選択に後悔などしない――
ところで、そもそも俺はどうやって死んだんだ?
それがどうしても思い出せない。
いつもの日常を送っていただけのはず。
普通に小劇場のステージに立って……そのあと?
まぁいい。
自分の死にざまなんて思い出しても不快になるだけだろうし。
にしても、死んで異世界に転生するなんざ思ってもなかった。
この世界のことは、まだ分らないことだらけだ。
もちろん、ものまね芸なんて役に立たない。
だが、小さい頃から大きな違和感がずっとあった。
そして、最近になってそれが顕著に現れ始めた。
まず観察力だが、見て憶える力が段違いだ。
人の動作や複雑な絵柄も瞬時に記憶できる。
間違い探しも一瞬だし、ウォーリーなんかコンマ秒で探せるだろう。
女子が三センチ髪を切っても、すぐに気づけるはずだ。
共感力も凄い。
相手の表情を凝らして見れば、嘘偽っていようがすぐに本物の感情を読み取れる。
もはや人間うそ発見器。
京言葉の皮肉も気づくし、感情を無くしたと豪語する中坊の気持ちも察せれる。
そして、これらを活かした再現力。
その人物になりきってしまえば、あっさりと模倣が出来てしまうのだ。
とはいえ当然、筋力や体力はそのままなので劣ってしまうのは否めないわけだが。
――どうやら、前世の能力が超人的になっているようだが……?




