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ep1

カランコロン、

と古びた鈴の音が鳴り響き、

灯里と男の子は骨董品店の薄暗い店内へ足を踏み入れた。

外の喧騒が嘘のように静まり返ったそこは、

時間の流れから取り残されたかのような

独特の空気に満ちていた。


店内には、

見たこともないような奇妙な品々が

所狭しと並べられている。

錆びた機械部品、

色褪せた布、

意味不明な模様が刻まれた石。

それらの全てが、

この世界の長い歴史と、

灯里の知らない物語を

静かに物語っているようだった。


「いらっしゃいませ…」


店の奥から、

しわがれた声が聞こえてきた。

声のする方を見ると、

白髪の老人がカウンターの中に立っていた。

その目は鋭く、

灯里たちを一瞥しただけで、

何かを見透かしているかのように感じられた。


灯里は少し緊張しながらも、

意を決して話しかけた。


「あの、すみません。

このあたりで、

珍しいものや、

古いことに詳しい方を探しているんですが…」


老人は何も言わず、

じっと灯里を見つめている。

その沈黙が、

灯里にはひどく長く感じられた。

男の子が灯里の服の袖をそっと引いた。


やがて、

老人はゆっくりと口を開いた。


「珍しいもの…古いこと…

あんたさんたちは、

一体何を探しているんだい?」


その声には、

単なる好奇心ではない、

何か深い探求心のようなものが感じられた。

灯里は一瞬ためらったが、

意を決して「光る板」のこと、

そして異世界人の計画について、

かいつまんで話した。

老人の目の色が、

灯里の話が進むにつれて

変わっていくのが分かった。


話を聞き終えた老人は、

ふう、と長い息をついた。


「なるほど…異世界人、

そして次元転移、か…」


老人はカウンターの下から、

一つの古びた箱を取り出した。

埃を被ったその箱を、

老人はゆっくりと開ける。

中には、

見たこともないような複雑な模様が描かれた、

小さな金属片が入っていた。


「これは、昔、

ある旅の者が置いていったものだ。

その者も、

あんたさんたちと同じように、

異世界のこと、

そして世界の危機について話していた…」


老人は金属片を灯里に差し出した。

灯里がそれを受け取ると、

金属片は微かに温かくなった。

そして、

灯里の脳裏に、

断片的な映像が流れ込んできた。

それは、

見たこともない風景、

奇妙な機械、

そして…崩壊していく世界。


「これは…一体…?」


灯里が混乱しながら呟いた。

老人は静かに言った。


「それは、『記憶の欠片』…

過去の出来事、

あるいは未来の可能性が記録されているという…」


灯里は金属片を握りしめた。

この骨董品店で、

思いがけない手がかりを得ることができた。

異世界人の計画、

そして世界の危機。

それらは、

灯里が思っていた以上に、

この世界の過去や未来と

深く繋がっているのかもしれない。


男の子が灯里の隣で、

その金属片をじっと見つめている。

彼の瞳にも、

何か強い決意のようなものが宿っていた。

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