ep4
港町での滞在を楽しむ灯里と男の子は、賑やかな通りを歩いていた。
色とりどりの露店が並び、活気のある声が飛び交っている。
ふと、灯里は町の喧騒から少し離れた場所に、古びた建物があることに気づいた。
それはどうやら図書館のようだった。
この世界に来てから、本を読む機会がほとんどなかった灯里は、
少し興味を引かれたが、
今は男の子との散策を楽しもうと、そのまま通り過ぎた。
しかし、その古い図書館の姿は、灯里の心にうっすらと残った。
港町での滞在を楽しむ灯里と男の子だったが、
町の片隅で奇妙な光景を目にする。
人目を避けるように集まる数人の男女。
彼らは人間ではない。
何かを運び込んでおり、
その手つきは隠密行動に慣れているようだった。
灯里は直感的に彼らが「異世界人」だと感じた。
そして、
彼らの行動がただの商取引ではない、
何か裏があるものだと察した。
男の子もまた、
彼らの存在に気づき、
警戒心を露わにする。
男の子は灯里の手を強く握り、
その場から離れるように促した。
二人は物陰に隠れながら、
異世界人たちの様子を伺った。
彼らは短い言葉で何かを指示し合い、
手際よく荷物を船に積み込んでいる。
荷物の中には、
見慣れない機械のようなものや、
金属製の箱が含まれていた。
灯里は彼らの会話を聞き取ろうとしたが、
言葉が理解できない。
しかし、
彼らの真剣な表情や緊迫した空気から、
彼らが重要な、
そしておそらく秘密裏の取引を行っていることが伝わってきた。
異世界人たちは荷物の積み込みを終えると、
素早くその場を立ち去った。
灯里と男の子は、
彼らが完全にいなくなったことを確認してから、
物陰から姿を現した。
「今の…」
灯里が言いかけると、
男の子は異世界人たちが荷物を積み込んでいた場所を指さした。
そこには、
彼らが落としていったのか、
あるいは意図的に残していったのか、
小さな金属片が落ちていた。
灯里がその金属片を拾い上げると、
ひんやりとした感触が手に伝わった。
それは、
この世界の一般的な金属とは異なる、
不思議な輝きを放っていた。
男の子は灯里の手にある金属片をじっと見つめている。
この金属片が何かの手がかりになるかもしれない。
灯里はそう思い、
それを大切にポケットにしまった。
港町での楽しい時間は一変し、
異世界人の存在が、
灯里と男の子の間に新たな緊張感をもたらした。
彼らの目的は何なのか。
そして、
あの荷物は何だったのか。
灯里の胸には、
新たな疑問が湧き上がっていた。