クリスマスパーティー
買い物に出かけていた両親が帰宅したため、佐々木と一緒に一階に降りた。
「佐々木くん、いらっしゃい。今日は来てくれてありがとう」
「こちらこそ、お邪魔してます。それと……昔も、お世話になりました」
「あら」
母がこちらをチラッと見たのを感じた。
「あー……佐々木のこと、少しずつだけど思い出してきたんだ。前に最近来た転校生だって紹介したとき、母さんたち……ちょっと戸惑ってたよな。変に気遣わせちゃってごめん。でも、もう大丈夫だから」
「……良かったね」
母はふっと笑って、それ以上は何も言わなかった。そして、ぱちんと手を叩く。
「よし!二人とも、夕食の準備始めるよ。手、洗ってきなさい」
湿っぽい話は苦手なのだろう。かく言う自分も得意ではないからありがたい。
料理は母と佐々木に任せて、和也と父はテーブルのセッティングをした。普段は四人で使っているダイニングテーブルに椅子を二つ追加して、六人が座れるようにする。お皿とお箸、箸置きを並べると、いつもよりテーブルが狭く感じられる。
「佐々木くん、手際いいなぁ。誰に教わったの?」
「普段はネットでレシピ見て作ってます。うちの父は包丁握らないタイプなので……」
「すごい。うちの子達ももっとキッチンに立たせるべきだったわ」
キッチンから佐々木と母の会話が聞こえてくる。
あらかた準備が終わると、時刻はちょうど十九時になろうとしていた。
「ただいまー……おっ、なんだこのいい匂い」
玄関から声がして、優也がリビングに入ってきた。そこで佐々木の姿を見つけ、立ち止まる。
「おー、佐々木くんじゃん!うわ……めちゃくちゃ大きくなってる。……なあ、俺のこと覚えてる?」
「……はい。よくフルーチェ作ってくれましたよね」
「ぶはっ!出てくるのがそれかよ!でも確かに、あの頃フルーチェめっちゃ食ってたわ。懐かしいなあ」
ちょうどそのタイミングで、優作もやってきた。スーツ姿のまま玄関先でぺこりと頭を下げる。
「こんばんは。仕事が長引いてしまって、遅くなりました。お招きいただき有難うございます」
「いえいえ、とんでもないです。お疲れ様です。どうぞ上がってください!」
かくして、クリスマスイブの食事会が始まった。
「かんぱーい!」
グラスが鳴り合う。最初はスパークリングワインだ。和也と佐々木のグラスにも、味見と称して少量ずつ入れてもらった。食卓には、こんがり焼けたローストチキンを中心に、クリーミーなポテトグラタン、彩りの良いラタトゥイユ、トマトとモッツァレラのカプレーゼ、ハーブの香りが漂うサーモンマリネ、クラムチャウダー、バゲットに載せたカナッペなど、洋風の料理が所狭しと並んでいた。
スイはというと、こっそりソファの端っこで胡坐をかいて、雰囲気だけを楽しんでいる風だったが――。
「……いいなぁ。俺も酒、飲みたい」
ああ、なんだかすごく可哀想だ。ちょっとくらいなら入れ替わってあげても……いやでも佐々木の手前だし、入れ替わったら絶対怒るよなぁ。
「なぁ、和也って佐々木くんとのことどうやって思い出したんだ?」
話を振られて、優也の方に向き直る。
「つい最近だよ。二ヶ月前くらい。……っていうか、どうして小学生の時に佐々木とのこと教えてくれなかったんだよ」
「あー……だってあのときお前さ、顔もわかんない、道も覚えられないで、もういっぱいいっぱいだったじゃん。そこに、記憶まで抜けてる、とか言ったらパンクしてたろ」
「そうかもしれないけど……」
だけど、手紙を書く約束までしたのに――。
「俺は、お前が思い出してくれただけで十分だ」
「でも……」
「あーもう!やめやめ!おっ、二人ともグラス空じゃん!クリスマスってことで、特別にお俺が注いであげちゃう!」
優也が和也と佐々木のグラスにスパークリングを注ぎ、残りを自分のグラスに注ぐ。すると父が、すかさずワインセラーから白ワインを取り出してきた。
スパークリングとともに、クラムチャウダーを口へと運ぶ。
「わ、これめっちゃ美味しい」
「それ、佐々木くんが作ったの!白味噌入れてたよね」
「本当だ、すごく美味しい。これは優作さんが教えたんですか?」
父が尋ねる。
「いえ、僕は料理が苦手で……だから幸介には本当に感謝してます」
当の佐々木は、少し居心地が悪そうだった。前も思ったけど、褒められ慣れていないみたいだ。




