冬休みスタート
そして、冬休みはあっという間にやってきた。終業式の翌日、和也の部屋には佐々木とスイが集まり、これからの情報収集に向けた作戦会議を開いていた。ちなみに今日はクリスマスイブだ。夜には佐々木の父・優作も招いて、ささやかな食事会を開く予定になっている。
和也にはまだ記憶が曖昧だが、かつて佐々木が転校する前――つまり真理子の事件よりも前――に、佐々木はときどき早川家に遊びに来ていたことがあったという。そのため、和也の両親と優作もすでに顔見知りらしい。
そう思い返せば、佐々木が初めて再び我が家を訪れた日、両親のどこかぎこちない様子にも合点がいった。和也は彼を「最近仲良くなった転校生」と紹介したが、両親はすぐに正体に気づいたのだろう。だが、和也が過去を覚えていないと知って、どう接すればいいのか迷っていたのだ。
「スイさんがバーテンダーの格好してて、お酒の知識もやたら詳しいって話、前にもしたよな?だから……スイさんって、たぶん、生前……いや、まだ生きてるかもしれないけど、バーテンダーだったんじゃないかなって思ってる」
「またそれか。……生きてるなら、生き霊ってことになるけどな」
佐々木はまだ半信半疑のようだ。
「……可能性はあると思う。スイさん、自分で何か思い当たることはありませんか?」
「うーん……最近、たまに変な夢見るよ。周りが真っ暗で、自分の体がまるで縛られてるみたいに動かなくなる。胸のあたりがずっと重くて……息を吸おうとしても、吸えない、みたいな」
「それって……やっぱり、どこかで本当に動けなくなってるんじゃ……。とにかく、スイさんのことを知ってる人に会えたら、何かわかるかもしれない」
「でもそいつの本名すらわからないんだろ?」
「ああ。だから最初にスイさんと会ったアーケード周辺のバーを、しらみ潰しに回るしかないかなって」
「……高校生がバーなんて入れると思ってんのかよ?」
「そこなんだよな……うまく誤魔化せればいいんだけど」
「和也くん、ちょっと髪型とか服装を大人っぽくすれば、普通に大学生に見えると思うけどな」
スイが顔を近づけてくる。
「身長もあるし、顔も整ってるし」
「そうですか?髪型と服装……」
「……従姉が美容師だから、頼めるかも」
「本当か?」
「ああ。服も……バイト先に行けばなんとかなると思う。撮影されるかもしれないけど、宣伝用に」
「えっ、俺で宣伝になるの?」
「……前にお前と歩いてたの、店長に見られてたみたいで。それ以来、一度連れてこいってうるさいんだ」
「和也くん、モード系の服とか、きっと似合うよ。シンプルだけど雰囲気がある感じ。顔立ちも中性的だし、細身でスラっとしてるしね」
「もーど系……?って何?」
「あー……確かに似合いそうだなお前に」
初めて聞く言葉だったが、佐々木にはすんなり伝わったようだ。
スイが佐々木のほうをちらりと見て、鼻で笑うように呟いた。
「……金髪くん、見た目だけなら大学生でも通りそうだよね。背も高いし、顔も整ってる。……でも、まだナイーブさが残ってるから、油断するとすぐバレちゃいそう」
――確かに佐々木は大人っぽい。けど、ナイーブさってなんだ?
ちらりと佐々木に目をやる。もちろん、佐々木には何も聞こえていない。
「……まあ、見た目はなんとか誤魔化せそうだな。あとは、夜に出かける言い訳か。バーって、日付をまたぐこともあるし」
「俺の親はその辺、わりと放任だから。バイト先の人とカラオケ行ってたとか言えば、多分平気」
「俺は……二日くらいなら友達の家に泊まるで通せると思う。それでも無理なら、そのときにまた考える。……でも、もしスイさんが本当に生きてて、ヤバい状況にいるなら、二日間でなんとかしないとな」
「アーケード周辺だけでも、バーはかなりあるぞ。一日に何軒も回らないと間に合わない」
「しかも、店に入って終わりじゃダメだ。店員さんや常連さんとある程度話さないと、スイさんのことなんて聞き出せないかもしれない」
「……とりあえず、明日行けるか従姉に連絡してみる。あいつの店、開店が十時だから、その前になると思う」
「わかった。ありがとう」




