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和也くんの不思議な日常  作者: ポアロ
真理子編
5/52

5 体育の時間

 体育館に入ると、生徒たちは既に、各々練習を始めていた。

 「すみません、遅くなりました」

 椅子に座って出席簿を眺めている体育教師に近づいていく。

 「おー、戻ってきたか。俺はてっきり早川も一緒にサボりに行ったんだと思ってたぞ。まあよかった。あっちの空いてる台使え。あと、佐々木は次回から学校指定のジャージで来いよー」

 佐々木を制服のまま引っ張ってきてしまったことに、言われてから気がついた。

 「いこう。あと二十分くらいはできるだろ」

 

 「上手いな……」

 「いや、お前が下手なんだろ」

 呆れた佐々木の声に申し訳なさを感じつつも、内心、大喜びしていた。

 ――ラクだ!

 何度ピンポン球を拾いに行こうが、佐々木を目印にすれば、全く迷わずに同じ台へと戻ってこられるのだ。特に今日の佐々木は、髪色以前に、みんながジャージを着ている中、一人だけ制服だ。

 「だって佐々木、スマッシュ打つじゃないか。ラリー続けたいのに」

 「勝負したいんじゃなかったのかよ」

 「……勝負は次の回にしよう。今日は練習」

 「ははっ……わかったよ」

 まただ。今日の佐々木はいつもよりよく笑う。それが純粋に嬉しかった。


 体育が終わり、更衣室へ向かっていると、クラスの女子が集まってきた。

 「早川いつの間に佐々木くんと仲良くなったの?」

 「めっちゃびっくりしたんだけど」

 「佐々木くんがまともに会話してんの初めて見たわ」

 案の定、質問攻めにされる。

 「家が近所で、朝とかよく会うんだ」

 本当はここ最近毎日なのだが。

 「へぇー。ねえ、佐々木くんてどんな人?」

 「どんなって……俺もまだ、そこまで深く話したことはないから分からないけど、優しい奴だよ。親切だし」

 毎朝嫌な顔せず……かどうかは分からないが、待ち合わせ場所に来てくれる。それに今日だって、面倒であれば和也に付き合う必要はなかったのに、結局体育館まで来てくれた。

 「うっそぉ!あの見た目で?」

 「えー、それなら私も話してみたいな。けどやっぱり怖いー」

 やはりみんな、佐々木を怖がっているようだった。

 「佐々木のどこが怖いんだ?頻繁に怪我をして学校に来るからか?」

 「うーん、それもあるけど、話しかけるなオーラが凄い」

 「わかる。そもそもあんま教室いないしね」

 そんなにいなかったのか。ひょっとすると、教室にいない時はいつもあの第二音楽室にいるのかもしれない。

 「けど佐々木くんってめっちゃかっこいいよね。そのせいで余計に話しかけづらいかも」

 その言葉に首を傾げる。

 「なんでかっこいいと話しかけづらいんだ?顔が怖いから、なら分かるけど」

 「えー、逆に早川は美人な子に話しかける時、緊張しないの?」

 「する……のかな?経験がないから分からない」

 「おい、うちら全員ブスって言いたいんかコラ」

 ポニーテールの女子に襟首を引っ張られる。この遠慮の無さは清水に違いない。

 「いや、うそうそ!あ、清水、体育の前までは髪下ろしてたよな。ポニーテールも似合ってる」

 「……むぅ」

 ようやく清水が手を離してくれた。そうか、普通は美人に話しかける時、緊張するものなのか。和也がまだ人の顔を認識することができていた小学生の時は、「かわいい子」はいても「美人な人」はまだいなかった。

 


 男子更衣室に入ると、すでに多くのクラスメイトが着替え始めていた。

 「おい、まさかマジで佐々木連れてくるとはな。どんな技使ったんだよ?」

 「めっちゃ普通に卓球してたね佐々木。案外普通のやつなのかな」

 「おい、騙されるな。絶対何か裏があるに決まってる。おい早川、マジでどんな人参ぶら下げて連れてきたんだよ?」

 声と態度で山本と吉川だとすぐに分かった。

 「何にもないよ。裏なんて。普通に卓球勝負しようぜって言ったらついてきたんだ」

 「ひひひ、自分から勝負ふっかけておいてあれかよ。まじ、ボコボコにされてたじゃん。だっせー」

 山本がここぞとばかりに揶揄ってくる。

 「うるさいな。ていうか、そんなに見てたのかよ俺たちのこと」

 「いや、見てたも何も、隣の台にいたよ僕ら。なのに早川全然こっち見ないんだもん。まあそれだけ集中してたってことか。完敗だったけど」

 その言葉に、自分の顔がすっと凍りつくのが分かった。

 全然気が付かなかった。佐々木に意識を向けすぎたせいで、周りへの注意が散漫になったのだろう。

 「そろそろチャイム鳴るよな。急がないと」

 話題を変えるように言い、忙しなくジャージを脱いだ。

 

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