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入れ替わりの方法は

 気がつくと、和也はベッドの“外”、というか、自分の体の外にいた。

 ベッドの上には、和也の体を使って天井に手を伸ばすスイの姿。

「……え?うわ、すっご。入れ替わった……」

 スイは和也の体をまじまじと見つめたあと、ぴょんと跳ねるように立ち上がった。

 一方、和也自身はというと――。

 ……重い。

 いや、正確には、“もったり”してる。

 真理子に体を貸したとき、和也の魂(?)はふわふわと浮いていて、まるで風船みたいに軽かった。何に触れても手応えがなくて、どこか夢みたいな感覚だった。

 でも今は違う。足の裏にちゃんと重さがあって、床に触れている感じがする。腕にも、体幹にも、妙に“自分”がある。

 生身の体ほどじゃないけど、しっかり地に足がついてる。なんだこれ。

 ――やっぱり、これも個人差?

「うわ〜……なんか軽っ。高校生ってこんな軽かったっけ。すごーい、筋肉もちゃんとあるのに」

 スイは勝手にパジャマのボタンを外して身体をペタペタ触りながら、鏡の前に移動する。和也の顔をしたスイが、鏡に向かっていろんな表情を試していた。

「怒った顔〜、泣き顔〜、困り顔〜……うーん、可愛いじゃん。これはモテるわ〜。彼女いるの?」

「……やめてください。っていうか戻ってください! 勝手に動かないで!」

「えー、ちょっとくらいいいじゃん。俺だって興味あるんだよ、自分以外の体とか。てか君、俺と会ってからずっと眉間に皺寄せちゃってさぁ。ほら、笑顔の方が可愛いよ?」

 そう言って、鏡の前で自分の顔をにこっと笑わせる。真理子が入っていた時とは別人に見えた。自分の顔なのに、なんだか胡散臭くみえる。

「やめろって言ってるのに……!勝手に!」

「……んー?」

 スイがゆっくりと振り向いた。中身はスイ、見た目は和也のその顔が、悪戯っぽく歪む。

 見たことのない目つきでぐっと間合いを詰めてくる。

「な、なに……ちょっと離れて――」

「……この体、すっごい敏感なのかな?心臓の動きがめちゃくちゃ伝わってくる。……さっきから、ずっとドクドクいってんの。なんでかな?」

 スイが、パジャマがはだけて顕になっている胸元へと指を這わせた。

「幽霊が自分の顔で、自分に悪戯してる姿とか、シュールすぎるよね……でも、君がどんな顔するのかちょっと気になるな」

「……それ以上変なことしたら、本気で怒りますよ……!」

 和也の怒声に、スイは「はいはい」と肩をすくめ、やっと指を離した。

「ごめんごめん、ちょっと揶揄っただけだよ。いやー、高校生ってウブでいいねぇ。ちょっと興奮しちゃった」

 そう言って、ぴょんとベッドに腰かける。

 「てか、これどうやって戻るの?」

 和也はスイが入っている自分の体を見下ろす。紺色の寝巻きの下。

 さっき、入れ替わる直前に触れられたのは、たしか――。

 「スイさん、ちょっと動かないで」

 なんとなく思い立って、スイの身体の胸元にそっと手を置いてみる。

 ちょうど、心臓があるあたり。

 その瞬間――。

 ブワッと、視界が光で塗りつぶされた。

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