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和也くんの不思議な日常  作者: ポアロ
真理子編
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13/58

13 謎の女性の正体

 和也は放課後、学校から地下鉄の駅に向かって歩いていた。今日は委員会で遅くなったため、佐々木には先に帰ってもらった。駅までは一本道のため、流石に一人でも迷いようがない。

 自販機の前で財布を取り出し、ボタンを押そうとした瞬間、背後に気配を感じた。

 「まだイチゴ牛乳、好きなんだ」

 その声を聞いて凍りついた。恐る恐る振り返ると、そこには、前に駅の改札で出くわしたあの女性が立っていた。

 白いブラウスと深緑のロングスカート。以前、駅で見たときとまったく同じ服装だ。彼女は静かに微笑み、こちらを見つめている。その顔はまたしてもはっきりと"見える"――それが、不思議でたまらない。

「えっと……俺のこと、知ってるんですか?」

 女性は少し意外そうな顔をして、けれどすぐにまた微笑んだ。

「ええ、知ってるわ」

「その……どこかでお会いしたことがありましたっけ?」

 女性は答えず、ただその場に立っている。柔らかな風があたりを吹き抜けたが、彼女の黒髪が揺れることはなかった。

 「私ね、ユーレイなの」

 「……はい?」

 この人、マジでやばい人なのか?

 「幸介の母よ」

 「幸介って……誰ですか?」

 思わず問いかけると、女性は目を丸くして、吹き出した。

 「ふふ、佐々木幸介よ。最近よく一緒にいるでしょ?」

 ――あ。そういや佐々木の下の名前、幸介だったっけ。

 「……いやいや、流石に無理ありますよ。佐々木の母親だとしたら流石に若過ぎます」

 「あら、嬉しいこといってくれるのね」

 女性のいたずらっぽい微笑みに、一瞬、ドキッとしてしまった。しかし、すぐに自分を取り戻す。

 彼女は、とても高校生の息子がいるようには見えなかった。どんなに年上に見積もっても、30歳を超えているとは思えない。

 「あの、美人局とかですか?見ての通り、高校生なんでお金とか全然無いですよ」

 「バカね。違うわよ。……あのね、私を殺した犯人を突き止めて欲しいの」

 その言葉を聞いて、一瞬、耳を疑った。目の前の女性が言った「私を殺した犯人」という言葉が、まるで映画の中のセリフのように響いたからだ。

 「ちょっと待ってください、本当に、さっきから何言ってるんですか?」

 なんとか聞き返す。

 「私は七年前、自殺した事になってるの。でも本当は自殺なんかしていない。……その事件のせいで、幸介もあの人も、ずっと過去に囚われたままなのよ」

 そんな話、到底信じることができない。目の前で話しているこの女性が、既に死んでいるなんて、あまりにも奇妙で現実離れしすぎている。

「全然信じてないですけど、もし仮にそれが本当だとして、どうして俺が?さっきも言ったけど、俺ただの高校生ですよ?」

 女性は軽く微笑み、少し顔を傾けた。

 「あなたには、特別な力があるからよ」

 それを聞いて、ますます混乱した。特別な力? 自分には何も特別な能力なんてない。むしろ、自分の持っている障害の方が、問題だった。

「力、って……どういう意味ですか?」

 今度は真剣に問い直した。

 女性は、少しの間黙った後、ようやく口を開いた。

 「あなた今、私が見えているでしょう? それが、あなたの力よ。普通の人には、私のような存在は見えないの」

 「俺には幽霊が見えるって言いたいんですか?そしてあなたも幽霊だと?」

 女性はうなずき、再び微笑みを浮かべた。

 「そうよ。まあ、信じられないのも無理ないわね。今度はあなたが幸介と一緒にいるときに出直すわ。またね、和也くん」

 女性はゆっくりとその場を離れていった。ヒールを履いているにも関わらず、少しも足音がしない。まるでその存在が現実のものではないかのようだった。しばらく動けずに立ち尽くしていたが、我に返ると、女性の姿はすでに消えていた。

「……なんだ、夢だったのか?」

 自分に言い聞かせるように呟いた。

 夜、ベットに横になり目を閉じていても、彼女の顔が浮かんで離れなかった。幽霊だと名乗った女性が言ったこと、そして「幸介」という名前も。

「幸介……」

 思わず呟いていた。

 一緒に映画を見に行ったことや、登下校の時のことを思い返す。随分と仲良くなれた気がしていたが、実際にはまだ、知らないことだらけだ。下の名前ですらきちんと覚えていなかった。

 彼の母親だと言っていた女性が、自分を殺した犯人を突き止めて欲しいといった。彼女が言った、「幸介は過去に囚われている」という言葉が、胸の中で引っかかっていた。

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