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いってらしゃい 逝ってきます

誰かに声をかけられた春雄。その正体は明だった。

声をかけてきたのは明だった。彼女はとても寂しそうな顔をしている。

「分かったよ。帰ってくるさ。」

俺が映画のようなセリフを言うと彼女は目に涙を浮かべながら小さい声で言った。

「嘘つき。だって春雄、小さい頃のかくれんぼで自分1人で帰っちゃったじゃん。」

え。それ関係ある?たしかに悪いとは思っているが、それとこれとは話が違うだろ。

「あ、あの時はまだ小さかったし。それに…。」

関係ないだろ、とは言えなかった。彼女が本気で心配してくれていることが伝わったからだ。

「絶対生きて帰ってくるから。約束。」

俺が小指を出すと、彼女の指と絡まった。

「生きて、帰って来れるのか?」

俺は誰にも聞こえないように呟いた。

 いよいよ送別会もお開きになり、俺たちはそれぞれ帰路についた。

「この道を通るのも、今日で最後かもしれない。」

自然と涙が溢れた。死ぬんだ、俺は死ぬんだ。その恐怖だけが俺に(まと)わりついて離れない。

 そして迎えた出征当日。俺は荷物を持って自衛官と待ち合わせている公園へと向かった。そこには誰もおらず、時間を見てみるとまだ待ち合わせ30分前だった。

「早く来すぎたな。」

5分ほど待っていると林田も現れた。何故かクラスメイトもいる。

「お前らなんで」

「お見送りであります!」

俺の言葉に被せるように花山が敬礼をしながら言った。わざわざ来てくれたようだ。

「お前ら、やっぱり変わってるよ。」

俺は素直に感謝を伝えられなかった。冗談めいたことを言ったのだが、察したのか、悲しそうな笑みをみんなが浮かべていた。

「いってらっしゃい」

「いってきます」

読んでくださりありがとうございます。

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