奉公
全校集会が開かれることに戸惑っている春雄たち。一体何を話すのか?
急遽全校集会が開かれることになった。俺たちを見送ってくれるらしい。
「えー、この学校から2名の志願兵が戦地に向かうことになりました。…」
校長の長い話の間に俺たちは戦闘服に着替えた。
「林田、か。大人しそうだよな。」
俺は彼女とあまり話したことがない。きっと人見知りか何かだろう。
「へー、似合ってんじゃん。」
誰かが言ってくれた。俺はつい調子に乗って決めポーズを取った。
カシャッ
カメラの音がした。どうやら林田が写真を撮ったらしい。
「お、お前何撮ってんだよ!」
俺が怒ると彼女は笑って、
「ごめんごめん。明ちゃんに送ってあげようと思って。」
と謝ってきた。明は俺の幼馴染だ。でもなんで明に送るのだろう。俺が考えていると、校長が俺らの名前を読み上げた。
「では出てきてもらいましょう。宇佐美春雄君と林田由香さんです!」
場内は拍手で包まれた。俺たちはそそくさとステージ上へ移動した。
「では2人から意気込みを聞きましょう。」
は?聞いてない。林田は俺に助け舟を出してきたが、俺は迷わなかった。
「宇佐美春雄!死してお国に奉公して参ります!」
そう言うと場内は一泊置いて拍手に包まれた。林田はというと
「頑張ります」
その一言だった。
全校集会が終わり、校長室で校長から激励の言葉を受けた。クラスに帰ると、みんなが何かを話し合っていた。
「あ、帰ってきた。」
花山が呟くと、クラスメイトたちは蜘蛛の子を散らして自分の席に戻っていった。
「何話してたの?」
俺が聞くとみんな目を逸らした。
「嫌われたんじゃね?」
林田がバカにしてきた。
「うっせ!」
俺はそう言い返して自分の席へと戻った。
「なんだろう」
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