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アタシをボランチしてくれ!~仙台和泉高校女子サッカー部奮戦記~  作者: 阿弥陀乃トンマージ
第2章 もう一人

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第17話(1) 不穏な空気

                  6

「まさか本日、本当に来て頂けるとは思いませんでしたよ」

「随分と威勢の良いことを言う奴がいたからな、気まぐれだよ」

「もう一つの頼み事については如何でしょうか?」

「……実際の出来次第だな。それを見て判断させてもらう」

「分かりました。よろしくお願いします」

 キャプテンがストレッチをする春名寺さんと話しています。聖良ちゃんが私に尋ねます。

「一体何を話しているのかしらね?」

「さあ?」

「へっ、どうせロクでもねえことだろ?」

 私たちの横でウォーミングアップをする竜乃ちゃんが笑いながら呟きます。

「ロ、ロクでもないって……」

「それじゃあ、悪巧みだな」

「少し言い方を考えなさいよ……まあ、大方そうなんでしょうけどね」

「せ、聖良ちゃんまで……」

「誰? あのガラの悪そうなの? 前はいなかったわよね?」

「あ……」

 輝さんが私たちに尋ねてきます。

「ガラの悪さならカルっちも結構良い勝負だと思うぜ?」

「アンタにだけは言われたくないわよ。それで、誰なのよ?」

「ええと……『伝説のレジェンド』春名寺恋さんです」

「……何その、『違和感を感じる』みたいな二つ名……」

「自称されているので……」

「尚更性質が悪いじゃない」

 聖良ちゃんの補足に輝さんが苦い表情を浮かべます。

「わざわざ主将さんが参加を呼びかけたと伺ったのですが?」

 真理さんも私たちに近づいてきて尋ねます。

「え、ええ……」

「それならばかなりの実力者ということですね」

「分かるんですか?」

「分かるというか感じますね……ヒシヒシと」

「そ、そうなんですか……」

 眼を瞑り、胸に両手を当てて、静かに呟く真理さんに対して聖良ちゃんは引き気味になって答えます。

「ベクトルの違いはあれど、ヤバい奴はもうお腹一杯なんだけどね」

「ちょっと待ったカルっち。まさかアタシもそこに含まれてねえよなあ?」

「何で入っていないと思ったの? むしろその筆頭でしょ」

「おいおい! 言ってくれんじゃねえの!」

「ふ、二人とも、言い争いは止めて……」

 私は竜乃ちゃんと輝さんをなんとか宥めます。

「お前ら」

 気が付くと、春名寺さんが私たちの側に来ていました。

「あ、お、おはようございます!」

「お、おはようございます」

「おはようございます」

「……っス」

「……」

 私たちのそれぞれの挨拶を聞いて、春名寺さんはその不揃いさを咎めるでもなく、笑って話し始めます。

「ふん、素直そうなやつと、生意気そうな奴が半々っていったところか。まあ、そうでなくちゃ面白くはないわな」

「あ、あの……?」

「あの腹黒、じゃなくて、キャプテンから聞いたぜ、お前らが春のベスト4入りに貢献したベストプレーヤーたちだってな」

「ベストなんてそんな……まあ、その通りだけどよ」

「ちょっと、露骨に調子に乗り過ぎよ!」

 照れ臭そうな後頭部を掻く竜乃ちゃんを聖良ちゃんが諌めます。

「まあ、お前ら中心選手はもとより、このチームはアタシが完全に抑えこんでやるからよ。今の内から言い訳でも考えておけよ」

「「「「「!」」」」」

 そう言って、春名寺さんはその場を去っていきます。

「これはまた……なかなかの自信家さんですね……」

「ああいうのは慢心って言うんですよ!」

「現役退いた人間に何が出来るっていうのよ……」

「よく分かんねえけど、売られた喧嘩は買うぜ!」

「み、みんな……お願いだから冷静にいこう」

 私は皆を落ち着かせます。見てみると、春名寺さんは他のメンバーにも何やら話し掛けて回っています。皆の顔が一様に曇ります。単なる挨拶を交わした訳ではないようです。

「大丈夫⁉」

 私は近くにいたエマちゃんと健さん、莉沙ちゃんと流ちゃんに声を掛けます。

「大人しくフットサル続けた方が身の為だって……」

「お嬢様の道楽に付き合わされる身にもなれと……」

「このままじゃ万年控えだと……」

「陸上に戻った方が良いんじゃないのと……」

「そ、そんな……」

 ヴァネさんや成実さんたちも二年生の皆さんも憤慨した様子です。

「フィジカルバカって言われたゾ! アイツ何様だヨ!」

「スタミナバカって言われた……ムカつく……」

「初対面なのにかなり失礼だね、いくらOGと言っても」

「ファンクラブの子を馬鹿にするのはちょっといただけないねえ」

「冷静さを失わせるトラッシュトークの一種でしょう。そんなつまらない手には乗らないようにしましょう!」

 私は皆に声を掛けて回ります。

「「アフロが喋っているかと思った」って言われたで! 舐めてるやろ完全に!」

「ああ、それはちょっと面白いかもー」

「面白いってなんやねん!」

「良かった、三年生の皆さんは冷静ですね……」

「大分痛い所を突かれたがな」

「まあ、ちょっとカチンとくるよね~」

 副キャプテンと桜庭さんも笑みを浮かべながらも若干表情は硬いです。私はキャプテンを捕まえて問いただします。

「これはどういうことなんですか⁉」

「まあ……和気あいあいとしたOGとの交流戦をしても仕方がありませんし、ちょっとした刺激物を投入! と言いますか……」

「これがチームの為になるんですか⁉」

 私が大声を上げた為、チームの皆の視線がキャプテンに集中します。するとキャプテンの表情がにこやかな笑顔から真顔に変わり、低い声色でこう答えます。

「……為になるかどうかは、今日の皆さん次第です」

「あ、あの……?」

 心配そうに近寄ってきたマネージャーに対し、キャプテンが笑顔に戻って指示します。

「準備は出来ました。始めましょう」

お読み頂いてありがとうございます。

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