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飴と鞭 第一話

作者: 斉藤ひとみ

私は学習障害です。その事が分かったのは人生の折り返し地点の年齢になってからです。

私は3歳くらいから印象深い事をポツポツと覚えています。昼寝から目覚めると誰もいなく、窓から車が通っているのを眺めてどれくらいの時間がたったのか、暗くなってきてサイレンの音を聞き心細くなりました。

帰ってきた母にしがみついて泣きました。母何も言いませんし、抱きしめてくれる事もなくただ離れるのをジッと待っていました。

その頃からすでに母に手を繋いでもらうことは無かったです。

後から歳の離れた従姉妹から聞いた話ですが、赤ちゃんの頃から寝ていると平気で置いて買い物に行くし、足に纏わり付くとポーンと少し離れた場所に投げられたりしていたみたいてます。

4歳の時に引っ越しをするのですが、トラックの荷台に私が乗せられ二つ上の兄は父と母の間の補助席に乗り、30分くらいの所に移りました。

父はお客様がいる時は何も言わないので勝手に膝の上に乗ります。唯一親と触れている時間でした。

母は良く放任主義だと言っていましたが、違います。ほぼ放置状態で関心を持っていないのだと良く思っていました。

私は眠れない時はいつも頭を左右に振って寝る癖がありました。多分赤ちゃんの頃からそうしていた気がしました。それからいつも妄想の中で遊ぶ癖がありました。頭の中に入っていくと周りは見えないし人の声は聞こえませんでした。

そのせいで母につんぼと呼ばれました。けれど流石に心配になったのか病院に連れて行ってくれましたが、結果は、特に異常は無く大人になるにつれて本人が気をつけるでしょうと言われました。

私の幼稚園は送迎バスでした。他の子のお母さんはお迎えの時間には待っていて連れて帰るのに私はいつも一人で帰っていました。

兄とケンカをして泣いていると母に良くあんたが一言も二言も多いから叩かれるんだと私が叱られました。父も寝ている時に泣き声が聞こえると私を玄関に出しました。

家は悲しみがいっぱいで苦しくて幼稚園や外は自由でした。いつも男の子たちとばかりと遊びました。ある男の子が「バットで殴られても泣かないのか!」と言うくらい外で泣く事は無かったです。

その頃から母は「女の子はイヤだ。」と言うのが口癖になってました。

その頃、飼っていた犬を夜になると放し飼いをしていたので近所の人に「お母さんに犬を放さないで!」などと言われましたが、母には言いません。子供ながらに母に言っても良い事は無いのが分かっていました。

母は麻雀が好きなせいで朝は起こさないと起きてくれません。小学校に上がる頃にはお母さんが他のお母さんと違うのが分かりました。その頃には日曜日の夕方に帰ると私を置いたまま家族で外食をするようになりました。

近くには伯母が住んでいましたが、何故か隠さないといけないと思っていて良く布団の中で泣きました。きっと大好きなお母さんを困らせたくなかったのだと思います。

私はいつも床屋で髪を男の子のように短くされていました。なので良く男の子と間違えられました。

ある日家に帰るといきなり平手打ちをくらいました。「ひとみ!外でぼくぼくって言ってるんだって!パン屋の奥さんに息子さん元気って、女の子だって言ったら僕って言ってたって聞いたわよ!」咄嗟に嘘をついた人を信じていきなりの平手打ち。そういう時は胸が締め付けられて泣かないよう堪えるのが精一杯になって何も言い返せなくなります。

熱を出すと親の布団に寝かせられます。父は兄や弟とお風呂に入ったり一緒に寝たりしますが、私とは寝ません。いつも家では孤独でした。いつの頃からか弟も私を邪険に扱うようになりました。

ただ二人きりになると「お姉ちゃん。」と甘えてきました。けれども誰かが帰ってくると態度が急変しました。

母も外ではちゃん付けで呼び、家では呼び捨てでした。外では飴を家では鞭を振るうそんな母でした。

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