第二章 謎の組織 3 Decision
投稿がめちゃくちゃ遅れてすみません!! ほんと!!
こんばんは、碧海ラントです。
時間がたちまくってしまったけど、見てくれる人いるかな……?
何となく書きあぐねていた感じだったんですが、ある程度流れがつかめたように思えるので、これからはある程度のペースで書いていけます……書いていけると思います……たぶん。
それでは、本編をどうぞ!
3
「先程も言った通り、各国間の対立が深まっていきました。
これは私の主観なのですが、いくつかの極があった時、全てに対して公平であることは、とても難しいと思います。法的に平等でも、『優位性』はあるからです。
この話で言いますと、今の世界は大きく二つの極に分かれています。それぞれに主導的な大国がいて、その周りにコバンザメのように群がる小国がいます。
十年ほど前に、二つの派閥は決裂しました。それぞれが同盟、連合という国家連合体として分かれたのです。
そして、ナイル社はどちらかにしか肩入れしないということを明言しました」
彼女が言うには、ローザラインたちの組織は単に「組織」と呼ばれていて、二つの極の間に位置するという。その「間」はまだ勢力と呼べるようなまとまりはなく、彼らはそうした人たちに「まとまりをつける」ことを目的に動いているそうだ。
「で、でも、俺はじゃあ何で襲われたんだ? 俺は向こうの世界から来たってだけの一般人ですよ。それがなぜ襲われたんですか?」
「それは……」
家の主人は押し黙った。何か苦しくなるようなものを直視したような表情だ。そんなに言いにくいことなのか?
「彼らも『第三勢力』です」
そういうことか。男性幹部が代わって話す。
「彼らは二つの極には属していないけど、それはそもそも異世界人の受け入れ自体に反対しているからなんだ。彼ら曰く、異世界人など人に非ず」
「ななな、なんなんですか、それ!」
そんなやつまでいるのか。異世界から来たというだけで、俺たちを殺そうとする。殺される側にとってはたまったもんじゃない。
「彼らは、人種には優劣があり、八頭人はエルフやオーガなどの他種属よりも優れている、ということを口にしています。彼らの感覚では、式術の技術を持っていない異世界人は見かけは似ていても八頭人ではない、ということなんでしょうか」
「おいちょっと待て、八頭人って……?」
「あたしたちみたいな、角や羽がなく概ね八頭身くらいの人間のことだよ。ただし、結局身長というのは人によって違うし、その辺に注意してメンシュっていう呼び方が推奨されてる」
なあるほど。
この世界にはエルフやオーガといった異種族が存在するというわけか。何より俺が期待してるのはふっわふわのけもみみ少女だがえほん。む、無関係なことだな。
「彼女は長い伝統を持つ家の出身だから、古風な言い方が時々出るんだよ」
「あふー……それは言わないでほしかったですぅ」
ほわほわした女性幹部は可愛い声を上げた。
「で、ですね。単刀直入に言うと私たちに協力していただきたいのです」
はいアウト!!
もしかしたら助けたことへの対価の要求なのかもしれないが、それにしてもそもそも協力する理由がない。今日は親切にしてもらったが、この組織とやらは客観的に見ればただのやくざなごろつきだ。
感謝ならいくらでもするが、一緒に訳の分からない任務に従事させられるのは御免だ。俺の異世界生活をそんな危なっかしいことで終わらせたくない。
そういうわけでここで俺がとるべき行動はひとつ。やんわりと断ることだ。
……と言いたいが、ここの他に行くところがないのも事実だ。
俺はどうすればいいんだ?
「どうでしょう?」
幹部の女性が覗き込んでくる。顔はとっても可愛いが、その奥には陰謀と暴力が渦巻いている。その事を知った以上、ここにいる組織の奴らがみんな鬼に見える。
それはわかっているのだが。
「行くところがないようですが、住居は私たちの組織のものを貸しますし、食事も朝昼晩と三食だします。対価として働いていただきますが、その場合は給料も出します。危険な任務を委ねることはしません。あなたが望まない限り」
結局のところ衣食住の保証というなんだか基本的な条件に俺は負けてしまった。ここで生活を安定させるのが先決だ。
「……分かりました。あんたたちに協力することにします」
「そうと決まれば宴会です! さあさあ、今夜はうちで飲みまくりますわよ!」
そういうわけで組織に協力してからの一食目は、この家での宴会ということになった。
「協力すると決まったからには自己紹介をしておこう! あたしはゲルヒルト・フィドル。ゲルヒルトでいいよ。よろしくな!」
男勝りな幹部の女性が名乗ると、続いてこの家の主が前に出る。
「私はプリシラ・フォン・エストブルクといいます。サトウ・エイトさん、ですね。よろしくお願いします」
続いて穏やかな外見の男性幹部が名乗る。
「僕はゲオルク・ヴァン・ワールスといいます。よろしく、サトウさん」
「もう一度名乗っておくわ。ローザライン・ヴェンツェルよ。ローザでいいわ。これからよろしく」
四人が自己紹介をし終えた。今度は俺の番だ。
「俺はサトウ・エイトといいます。これからよろしくお願いします」
自己紹介が終わったところで宴会の準備に入った。
ローザラインが芋の皮むきに苦戦している風景(芋が正八面体になって、ローザラインは魚を奪われた猫のような目で自分の担当した芋を見つめていた)やプリシラさんが神業で次々と料理を仕上げていく様子などは色々と面白かった。
そして出来上がった料理は、もっと大きな宴会に出しても見劣りのしないような、外見・味共に上質なものだった。
ジャガイモの添えられたソーセージやローストビーフ、団子状のジャガイモにソースをかけたクローセという料理など、ドイツっぽい料理がいくつも並んでいる。
元の世界も含めて、こんな豪勢な料理を食べたのは久しぶりだ。今日は体力の消耗が激しかっただけに、胃に染み渡る。
とそこへ、ゲルヒルトさんが何やら両手に持ってやってきた。見れば、大振りなビールジョッキが三本、どれにも泡で溢れんばかりになったビールが入っている。
「うおおお?」
「子供はダメだよ。十八歳までお預けだねー」
「……こっちでもばっちり制約かかってんのか」
「異世界ならOKとでも思った?」
ゲルヒルトさんがにやにやしながら成人三名にジョッキを配っていく。
「ふ、ふあー! 私はお酒弱いんですよ!」
「まあまあそう言わずに一杯くらいどう?」
ローザラインが羨ましそうにビールジョッキを見つめているのを眺めながら、俺は肉の塊を口に入れた。
とある科学の超電磁砲面白いですね……。