6-2
こんばんは。碧海ラントです。
かなーり長いこと間が空いてしまいましたが、更新再開です。予定通り。ギリギリだけど。
それでは、本編をどうぞ!
公爵の態度が変化した。いや、変化に必死に抗っている、というべきか。
上半身を必死に前に突き出すような格好をとどめているが、下半身は震えを抑えきれないようだ。それどころかたじたじと後退していき、何かの絵の亡者のような奇怪なポーズになっている。
「げ、ゲルヒルト・フィドル」
「さあーて、公爵には色々聞くことがありそうだねえ」
ゲルヒルトさんは逆にじりじりと公爵に詰め寄っていく。その表情は笑顔。
超絶不気味な鬼みたいな笑顔。
「そ、それは……」
おっ、公爵の発言に初めて三点リーダーが登場した!
公爵の顔はあっという間に脂汗にまみれる。過去によほど恐ろしい目にあったようだ。
「ベアトリスに何かしたね? 何をしたんだい?」
「わ、私はただ、親として当然のしつけをしただけだ」
「しつけ、ねえ」
ゲルヒルトさんはニヤニヤしながら公爵から離れる。
「そう? 何にもしてないならよかったけど、」
そして一気に顔を近づける。
「何かしたら、その時は、ね」
「は、はい……」
さて、その後のことをかたっておこう。
公爵は去っていき、ベアトリスもゲルヒルトさんと色々喋って帰っていった。
二人はやはり知り合いだったらしい。詳しいことは話してくれなかった、ゲルヒルトさんは昔はウィリアム王国に住んでいたらしく、公爵とは一緒に働いていたという。もちろん公爵の方が目上の立場だったが、彼のことだ、仕事において不審な点も多かったらしく、ゲルヒルトさんは常に疑いの目を向けていた。
しかしベアトリスとの仲は良く、妹のように可愛がっていたそうだ。
それからゲルヒルトさんはゲルマニアに渡り、「組織」の活動をするようになり、そのままずっと会えずにいた、とのことだ。
「明日、またここに来るよ。あたしはベアトリスを送っていく」
ゲルヒルトさんはそう言って、ドアを……開けず、その残骸をまたいで部屋から出ていった。
……泥棒とか大丈夫だろうか。
*
「ゲルヒルト、姉さま」
「何?」
「きょ、今日は、来てくれて、ありがとう」
「お礼を言われるようなことじゃないよ。偶然だったんだし」
「で、でも……やっぱり、ありがとう。あの時、父上を、その、抑えてくれて」
「いいよいいよ」
「……父上は、私がローザと会うことを、快く思っていないのです。行くなと何度も言われていたんですけど……やっぱり、従姉妹だし……でも、父上に嫌われるのは、嫌、だし……私、どうすれば……」
「ベアトリス」
「姉さま……」
「勇気を出して、自分の気持ちをお父さんに伝えてみて。もちろん、私もついていく。自分の考えを話して、自分がこうしたいっていうのをはっきり言葉にして、お父さんを説得しようとするんだよ」
「で、でも……父上を説得なんて……」
「もちろんあたしも力になる。
環境に文句を言ってばかりじゃ何にもならない。変えられる範囲で、変えていこうとすることが大事なんだよ。だから、勇気を出して。
あなたはあなた。公爵令嬢である以前に、ベアトリスなのよ」
*




