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たぶん魔法のある異世界戦記  作者: 碧海ラント
ウィリアム王国での日々と
39/40

第七章 6 Return

こんばんは。碧海ラントです。

大変申し訳ありませんでした。二十四日に更新すると書いたのに、一コマずれて本日の更新となりました。大変申し訳ありませんでした。

それでは、本編をどうぞ!

   6

「なっ……!」

 俺は驚いた。

「ッ……!?」

 ベアトリスも驚いていた。父親がこんなことをする人間だとは思っていなかったのだろう。

「  」

 そして公爵自身も相当に驚いているようだった。思わず手を出してしまった、ということか。

 誰も動こうとしない。誰も喋らない。空気まで固形化したかのような重たーい沈黙。

 え? マジで誰か喋らんの?(完全ブーメラン)ここは誰かが何か言って展開が進むところだよ?

 しかし状況はそう簡単には動かないのだ。微妙に外から喧騒が聞こえる。この辺は静かだから、騒音はごく小さい。それが聞こえるくらいの静寂だった。

 仕方ない。俺が喋る。

「おい公爵、娘になんてことしたんだ」

「  どうした。我はベアトリスの父親だ。父が娘を叱ることの何が悪い」

「だが公爵、お前は娘に手を上げた」

「当然だろう。我が禁止したことを破ったのだぞ」

「娘の行動くらい自由にさせてやれよ!」

 ローザを見舞うことがどうしてダメなのか。家庭の事情だろうがそんなものは公爵家の、あるいは公爵の事情に過ぎない。

「お前が自分の事情にこだわるのはお前の勝手だ。だけどな、ベアトリスをそんな名誉だの家だので縛るなよ」

 ベアトリスが、見舞いをしたいと望んだ。

 それを禁じるのは、高々「家の事情」に過ぎない。

 ならば、俺はベアトリスを全力で応援してやる!

「ベアトリスを、自由にさせてやれよ!」

 公爵は何も言わなかった。

 ベアトリスは怯えるように身を縮めた。

 スウェルセンはやけにニヤニヤしながら腕を組み、何も言わなかった。

 ボディーガード達も、命令がない限り動かないのか何なのか、何もしない。

 ガラスのなかに閉じ込められたようだ。


 …………。


 ……………………。


 数時間が経過したような気がする。

 この時やっと沈黙を破ったのは、倒れたドアを踏みしめる音だった。


「ただい……え?」

 ゲルヒルトさんだった。

「あ、げ、ゲルヒルトさん!?」

 このタイミング? 俺がこっちに来てから三日しか経っていない。仕事だか用事だかは終わったのだろうか。

「……どういう、状況かな? って、あんた、もしかしてベアトリス!?」

 ゲルヒルトさんは、縮こまっているベアトリスを見つけるや否や、ボディーガードを無造作に押しのけ、ニヤニヤスウェルセンをどついて駆け寄った。

 二人には面識があった?

「ベアトリスじゃん! 元気してた?」

 ベアトリスは小さく頷く。

 最初に俺と会った時は、ベアトリスは確かにおしとやかなお嬢様ではあった。しかし、こんなか弱い姿ではなかった。それがいまや、ハムスターのように身を縮め、俯いている。

「……で、親父さんか」

 ゲルヒルトさんはじとっとした目で公爵を見た。


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