第七章 6 Return
こんばんは。碧海ラントです。
大変申し訳ありませんでした。二十四日に更新すると書いたのに、一コマずれて本日の更新となりました。大変申し訳ありませんでした。
それでは、本編をどうぞ!
6
「なっ……!」
俺は驚いた。
「ッ……!?」
ベアトリスも驚いていた。父親がこんなことをする人間だとは思っていなかったのだろう。
「 」
そして公爵自身も相当に驚いているようだった。思わず手を出してしまった、ということか。
誰も動こうとしない。誰も喋らない。空気まで固形化したかのような重たーい沈黙。
え? マジで誰か喋らんの?(完全ブーメラン)ここは誰かが何か言って展開が進むところだよ?
しかし状況はそう簡単には動かないのだ。微妙に外から喧騒が聞こえる。この辺は静かだから、騒音はごく小さい。それが聞こえるくらいの静寂だった。
仕方ない。俺が喋る。
「おい公爵、娘になんてことしたんだ」
「 どうした。我はベアトリスの父親だ。父が娘を叱ることの何が悪い」
「だが公爵、お前は娘に手を上げた」
「当然だろう。我が禁止したことを破ったのだぞ」
「娘の行動くらい自由にさせてやれよ!」
ローザを見舞うことがどうしてダメなのか。家庭の事情だろうがそんなものは公爵家の、あるいは公爵の事情に過ぎない。
「お前が自分の事情にこだわるのはお前の勝手だ。だけどな、ベアトリスをそんな名誉だの家だので縛るなよ」
ベアトリスが、見舞いをしたいと望んだ。
それを禁じるのは、高々「家の事情」に過ぎない。
ならば、俺はベアトリスを全力で応援してやる!
「ベアトリスを、自由にさせてやれよ!」
公爵は何も言わなかった。
ベアトリスは怯えるように身を縮めた。
スウェルセンはやけにニヤニヤしながら腕を組み、何も言わなかった。
ボディーガード達も、命令がない限り動かないのか何なのか、何もしない。
ガラスのなかに閉じ込められたようだ。
…………。
……………………。
数時間が経過したような気がする。
この時やっと沈黙を破ったのは、倒れたドアを踏みしめる音だった。
「ただい……え?」
ゲルヒルトさんだった。
「あ、げ、ゲルヒルトさん!?」
このタイミング? 俺がこっちに来てから三日しか経っていない。仕事だか用事だかは終わったのだろうか。
「……どういう、状況かな? って、あんた、もしかしてベアトリス!?」
ゲルヒルトさんは、縮こまっているベアトリスを見つけるや否や、ボディーガードを無造作に押しのけ、ニヤニヤスウェルセンをどついて駆け寄った。
二人には面識があった?
「ベアトリスじゃん! 元気してた?」
ベアトリスは小さく頷く。
最初に俺と会った時は、ベアトリスは確かにおしとやかなお嬢様ではあった。しかし、こんなか弱い姿ではなかった。それがいまや、ハムスターのように身を縮め、俯いている。
「……で、親父さんか」
ゲルヒルトさんはじとっとした目で公爵を見た。




