第七章 5 Say!!!
こんばんは。碧海ラントです。
今回も5の続きを土曜日に掲載します。
それでは、本編をどうぞ!!
5
ベアトリスの拳に力がこもる。上品そうなチェック柄のスカートを強く握りしめる。が。
「何を言うか。その高貴なる血の一滴一滴が、王国と公爵家の為に在るのだ。わが公爵家の高貴なる血をもって生まれたからには、高貴なる者の中で学び、高貴なる場所で暮らし、高貴なる物を食べ、高貴なる人々とのみ交流し、高貴なる淑女にならねばならない義務があるのだ。異論は認めない。その体の一片、その血の一滴までが国とクリフォード公爵家の為に在るのだ」
一旦は力のこもったベアトリスの拳から、再び力が抜けていく。
にしてもこのおっさん、えらく堂々と喋るな。
まあその考え方も分からんでもない。私利私欲の塊で夜な夜な遊び倒す公爵とか気持ち悪くて仕方がない。
しかし父親のセリフからは、これからもちろん政略結婚に利用しますよ的な意味まで垣間見える。公爵は貴族階級の最上位だったっけ。王子様なりと結婚させて外戚として権力を振るいたいだけなんじゃないか?
「……はい……わ、私は、クリフォード公爵家の嫡女、ベアトリス・クリフォードとして、高貴なる血、の、義務に従い……」
むっちゃ興味深そうに父娘を見つめるスウェルセン。その集中が途切れた隙に、口に当てられた両手を引き離して捻り上げる。
「ベアトリス!! 言いたいことがあるなら言え!!! 口に出すんだ!!!」
ベアトリスの手が一瞬だけ震えたが、なおも項垂れたままだ。
そんな状態のベアトリスを見てクリフォード公爵はもういいかと思ったらしく、おもむろに口を開いた。
「では、これからも学問に精力的に取り組め。それから、」
ベアトリス父はやや躊躇った後、それでも口を開いた。
「今後は二度と、ヴェンツェルというその女の見舞いに行ってはならない」
瞬間、ベアトリスの目が大きく見開かれる。
「そ、そ、それは……」
「どうした。ヴェンツェルはまともな教育も受けず各地を放浪し、至るところで人を殺してきた下賤な浮浪なのだぞ」
「で、でも……」
そこで発せられた言葉は意外なものだった。
「父上の姪じゃないですの?」
え?
マジで?
今度はベアトリス父の目が見開かれる番だった。
「な、なぜお前が……」
お、三点リーダー登場。一瞬だけ感情が露になった。
「そんな事実がどこにある。何故あの下民が余の姪だと考えるのか」
「だ、だって、そ、そうじゃないんです、の?」
「誰が言った」
「だ、誰か、なんて……」
父親は、何とか落ち着こうとしているのだろうが、鼻息は荒いし目はらんらんと気持ち悪い光を湛えている。その顔をベアトリスにぐっと近付けようとするから変態親父みたいに見える。
「誰が言った。言え。誰が言った」




