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たぶん魔法のある異世界戦記  作者: 碧海ラント
第三部 ガリア
29/40

第六章 3 Looking for Gerhild

こんばんは。碧海ラントです。

大変申し訳ありませんでした。土曜日に投稿できませんでした。通知もなく、本当にすみませんでした。

代わりには全くならないような代物ですが、フルメタ・わーるどという別シリーズを掲載しています。

しかしログインしない間にブクマ登録が結構増えてて嬉しいです。読者様には感謝しかありません。

それでは、本編をどうぞ!

   3

 兵士は威圧感たっぷりな動きで歩いてくる。

 動くにしても、体力を効果的なタイミングで使って、自分を最大限有利に導かねばならない。

 兵士がしゃがみ込み、俺の手を取ろうとする。兵士が俺の手を握る寸前、素早く手を引っ込めて体をねじり、何とか脱出。

「待て!」

 と叫ぶ兵士の手を握り、再びねじろうと(それくらいしかサイトの内容覚えてなかった)する。兵士の動きが鈍った瞬間に素早く手首をつかんだが、それが逆に命取りになった。

 その攻勢は予想していたとばかりの余裕の表情で、兵士が手首に手錠をしっかり掛けた。

「あ」

「大人しくついてくることだな」と兵士。

 ふっ、と、その顔に影がかかった。

「?」

 別の兵士の体が兵士の顔に直撃し、ごぎっという鈍い音が響いて俺の手錠を握っていた兵士の体は地面に崩れ落ちた。手錠でつながっている俺の体もついでに引っ張られて地面に叩きつけられた。

 重なり合った兵士の体を乗り越えてやってきたのはモンフォール。身動きが取れない兵士の腰から素早く手錠の鍵を拾い上げると、あっという間に俺の手錠を開錠してしまった。

「さあ、急ぎましょう」

 改めてモンフォールさんの背後を見ると、気絶した兵士が二人。

 おおう。格闘技の達人ですか?

 ともあれ俺たちは再びブドウ畑に潜入し、駆け足でブリュイージュへの道のりを歩み始めたのである。

 モンフォールさんは途中で畑の脇にある小屋に立ち寄ると、そこで寝かせてあったオルフィを抱えた。いつの間にこんなところに……。

 というより、オルフィもそろそろ目覚めていい気がするが。


 あっさりブリュイージュに到着した。

 おそらく兵士たちとは別の追っ手、警察とか、も出動しているだろうが、とりあえず目標地点には到達したわけだ。

 駅前へ、とゲルヒルトさんは言っていたので駅前を目指す。線路沿いに歩いていたのでさほど苦労せずに駅前広場へ行きつくことができた。

 広場は割合静かで、老人が何人かで座って時々談笑しながら鳩に餌をやっていたりする。それ以外にはあまり人はおらず、人ごみに隠れて追っ手を撒こう作戦にやや陰りが見えてきた。空は晴れているいて、陽光がほとんど何もない広場をやけに明るく照らしていた。

 中央の噴水が、年を取った犬のような頼りない勢いで水を吐き出している。

 が、その前にオルフィが目を覚ました。

「……ううん……え?」

 しばらく呻いた後、いきなり上体を跳ね起こす。

「えええ? ここは?」

「ブリュイージュだ。もう着いた」

「……そう」

 オルフィは、すぐに俯いて、頼りなく目をそらす。

「……酷いことしちゃったわね……」

 こういう場面では何か慰めるセリフを吐くべきなんだろうか。というかセオリー的にはそうなんだろうが、残念ながらいいセリフが思い浮かばない。

 その原因は、そもそも俺自身がオルフィの行動を正しいと言い切れないからだろう。

「それより、ここで待ち合わせてるはずなんだが……」

 周囲を見渡しても、ゲルヒルトさんの姿は見当たらない。確かに駅前で間違いなかったはずだが。

 まずいな。追いつかれるまでに何とかしなければならない。

 ともかく、

「モンフォールさん、オルフィ、ここまで送ってくれてありがとうございます。こっからは俺個人の用事になるんで」

「いえ、これしき、造作もないことでございます。礼を言われるほどのことではありません」

「いや、すごく助かりました。俺はとりあえず駅前から離れます。ありがとうございました」

 一礼。モンフォールさんも礼を帰してくれた。いい人たちだ。


 さて、街の中に紛れ込んだはいいものの、ここからどうやってゲルヒルトさんと合流しようか。まったく難題が次々と降りかかってくるな。

 もっとも考えてみれば当然。攻撃を受けて俺たちはかなり時間を食ったから、その間に追っ手に見つかったとかで逃走を再開しててもおかしくはないのだ。その場合はまた離れ離れの状況が続くことになる。

 ともあれどこへ行けばいいかは分からないし、単純に時間が合わなかっただけかもしれないし、追っ手に見つからないようにしてしばらくはこの街にいよう。

 と、紙切れ。

 風に吹かれ、乾いた音を立てて足元に飛んできた。

「……メモ用紙?」

 スマートフォンより小さいくらいのメモ用紙が落ちていた。黄色い紙で、特に何も書かれていない。折り目も汚れもかなり少なく、ちぎられたばかりのようだ。

 ……待て、こんなメモ用紙を見たことなかったか?

 そう、このメモ用紙こそがゲルヒルトさんの使っていた用紙だった。

 ということは、まだゲルヒルトさんはここにいる?

 風は俺の正面から吹いてきた。ということはゲルヒルトさんはそちらの方向でメモ用紙をちぎった可能性が高い。

 風上に向けて少し走ると、十字路にやってきた。

 そこでまたメモ用紙。十字路を右に曲がったところに落ちている。

 右に曲がる。

 そして路上を注意深く見ながら歩いていくと、建物と建物の隙間に落ちているメモ用紙を発見した。通りはある程度掃除が行き届いているが、こんな隙間の地面には落ち葉やタバコの吸い殻、その他のゴミなんかがこびりついていてかなり汚い。にもかかわらずメモ用紙は新品だ。

 こっちに曲がればゲルヒルトさんと合流できる。

 確信。

 そう思って体勢を変え、隙間に入り込んだ。

 腐った何かを踏まないように気を付けながら隙間を渡っていく。

 両側の建物は奥に長いらしく、隙間は相当な長さにわたっていた。しかしそれも終わりに近づき、向こう側の通りから光が差し込んでくる。

 その光に純粋に近づいていこうとして、足が止まる。

 罠ではないだろうか?

 ゲルヒルトさんはすでにつかまり、そのメモ帳を相手が意図的に破って路上にばらまいている。そして、俺はまんまとその手に乗って乗り込んできた。すでに袋のネズミ、ただ確保されるだけの存在――。

 しかし、今更考えても遅い。

 罠なら内側から食い破るまで!!

 そして地面を蹴り、隙間を飛び出す。

 光に向けて。


 そして――。


 意外に罠じゃなかったわ。

今回が今年最後の投稿になります。たぶん。


今年一年、読者の皆様への感謝でいっぱいです。


それでは皆さん、良いお年を!!

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