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たぶん魔法のある異世界戦記  作者: 碧海ラント
第三部 ガリア
25/40

第五章 5 Car Chase!!

こんばんは。碧海ラントです。

前回の投稿遅れ本当にすみませんでした。いやはや、信用は人間にとって大事なものだなあ。

それでは、本編をどうぞ。

   5

 さてさて、異世界に来てまで美少女にオタクキモッとか言われてショックな男、佐藤瑛人は諦めない。

「お願いします! マジで! 大事な用事なんです!! ホントに!!」

 何なら土下座してもいいぞ。

「いや! 貸さない!! これ以上詰め寄るんなら」

 相手は塵屑を見るような目でこっちを一瞥した。

「殺す」

 こええええええええええええええ!

 プンスカ頭から湯気を出しつつ立ち去っていくお嬢様。その麗しき背中からは俺へ一点集中で殺意が放射されていた。

 それでも金が必要だ。何としても。そういうわけでもう一回くらいチャレンジしてもいいんじゃないか?

 先ほどの騒ぎを見ていない、たった今駅に入ってきた老紳士に声をかけてみる。

「あの、すいませんが」

「断る」

 用件も言ってないのに一刀両断!? なんてこった。人情というものはここまで廃れてしまったのか。悲しい世界だな。

 ちょっと今のはトライ数には含めないことにしておこう。別の人に頼む。

「あの、すいませんが」

「悪いけど忙しいんでね」

 今度も断られた!? 用件も言わず!?

 何だ何だ、ちょっと冷たすぎないか? せめて用件くらい聞いてくれてもいいものを。

 ふと、鋭い視線。

 それとなくたどってみると、駅員が改札からこちらにジト目を向けていた。まあ怪しいよね。手当たり次第他人に声をかけている奴なんて少ないしね。不審者扱いされてもおかしくはない。 

 とりあえず一旦退散しよう。そう思って駅から出ようとしたところで、背後からノイズに埋もれないほど大きな声が響いた。

「お願いしヤス!! マジで!! 運賃がもうないんです!! 金貸してください!!!」

 へ?

 声の主は周囲の人間より背丈が頭一つ高い男だった。服装はボロボロで手首にはドクロ……を掲げた天使の入れ墨がある。見るからに不良の類いだ。それが、俺と全く同じことを背後で繰り広げているのだ。

「お願いしヤス!! 必ず返しますから!!! 大事な用があるんです!! 一生に一度レベルの!!!」

「ダメダメ。ほら、どいたどいた」

 声をかけられていた中年の女性はパンの入った鞄を左右に振り、強引に不良を押し退けて改札を通っていった。それと入れ替わりに警官らしき人物が不良へ向かっていく。

 それを見た不良は素早く踵を返すとあっという間に群衆に紛れて見えなくなった。

 一方、俺の左側の壁には一昔前のフリー素材を引っ張ってきてそのまま張り付けたかのような物乞いが座り込んでいた。ちゃんと金を入れるための空き缶が用意されているが、見たところ中身は空。

 うーん、金払う物好きがいてもおかしくはないと思うが、ゼロ。ここの町の人は相当に無愛想だな。

 と、警官の顔がこっちに向いている。

「もう一人いたはずだ!」

 ヤバいヤバい。

 急いで退散。


 さて、駅からは出てきたがこれからどうする?

 金はなく電車に乗れない。終わってるぜ。

 何らかの要因があってこのクロードという町は無愛想になっている。何だ。何があった。

 で、その理由も結局人に聞くしかないってね。考えてみればこの異世界に関する情報は大体他人に聞いて手に入れたものだ。何だよこの難易度高い異世界転移は。召喚主よ、いるならちゃんと俺に事情を説明しろ! 事情も無しでほったらかしとは業務怠慢だ。

「すいませーん、遠くからきたものなんですが、さっき駅行ったら乞食には金をやらないし金がない人は問答無用で押し退ける、一体何があってこんな無愛想になったんですか?」

 よし、義務感に満ちたインタビュアー演技は完璧だ。今回お話を伺うのは道端のおばさん。

「えぇ? あんた、ニュースとか見ないの? つい二ヶ月前、不良が持ち込んだ爆弾が爆発して五人くらい死んだのよ。ずっと前から不良とか乞食とかはうろうろしてたんだけど、なんとそいつら全員テロ組織の関係者だったなんてねえ。そういうわけでああいう連中にはみんな金輪際金なんてやらないのさ」

 以外にも親切に話してくれるおばさん。

「なるほど、話していただいてありがとうございます」

「まったく最近の若いもんはニュースとか見ないのかしらねー」

 割と良くある愚痴をこぼしながらおばさんはさっさとどこかへ行ってしまった。

 爆弾テロがあって皆のセキュリティ意識が50%くらい割増しになっているということか。

 よくもまあ迷惑なことをしてくれる。

 しょうがねえ、駅に戻るか。

 ……と、いつの間にか包囲されていた。

 誰に? もちろんむさ苦しいキン肉マンたちにだ。ついでに全員黒眼鏡。

「なんです?」

 もちろんその問いに素直に答えるはずもなく、無言でパンチを送り込んでくる。もうなんかあんまり驚けなくなってきた。屈んで回避し、そこへすかさず叩き込まれたキックを避けて、がら空きになった股の間から包囲の外へ転がりでる。全てが流れ作業と化してしまっているのだ。

 こういうときの方策は一つ、逃げることだ。どなたかも逃げることは卑怯ではないと保証してくれておられることだし。

 しかし長らく冴えないオタクをやっていた俺は体力的に優れているわけではい。また、この世界に来る時に神様は何ら関与してくれなかったのでチートスキルなんかも一切持っていない。

 まあそういうわけで駆け出したところで駅に着くまでには追い付かれるの確定だからどうにかして追手をまく必要があるな。

 電車まであと五分。どうするか。

 全く関係ないがもとの世界のノベルゲームよろしく目の前に選択肢が現れているような錯覚がした。

 駅に行くと見せかけて、別の場所に行くか。こいつはまあ難しいだろう。万が一追手を食い止められたとしても最終的には駅に行かねばならないんだし。

 時間を消費して、寸前で電車に乗ってバイバイか。そもそも時間を消費できるかどうかだな。

 狂戦士のような装甲擲弾兵すら倒した落とし穴作戦か。しかし落とし穴なんて掘る余裕はない。

 よって単純明快、奴らが追い付けないほどのスピードを手にいれるッッッ!!

 その辺に駐車していた車にRush into!!

 半開きのドアからCome in!!

 と、腰が何か柔らかくて冷たくてでもほんのり暖かいものにぶつかった。

 見ると、隣には茶髪の美少女。ってさっき俺のことキモオタ呼ばわりしたお前じゃねえか!!!

「え? ……え、ええええええええ!?」

「運転手さん、後ろから暴漢が何人も俺を追ってきてるんです。今すぐ出せますか?」

「え? ちょ、人の車で何を!」

「いいえお嬢様、大柄な男たちが本当に走ってきております。発進いたします!」

 銀髪の執事的なドライバーは話が分かる紳士だったようで、すぐにアクセルを踏み込んでくれた。

 そして急加速。

 あっという間に駅がテニスボール→消しゴム→シャツのボタンとサイズダウンしていく。

「……つくづく強引な人ね」

「んなこと言ったってマジで緊急事態だったんだぜ。運転手さん、乗せてくれて本当にありがとうございます」

「いえ、本当に困っていらしたようでしたから」

「ちょっとモンフォール、こいつは駅で私にお金をせがもうとしたのよ? テロ組織の一員じゃないかしら。もしそうだったら私たちはテロの幇助をやってることになるわよ」

「俺はテロリストなんかじゃねえ!」

「金をせがむ者が全てテロリストというわけでもございますまい。現在はあの暴漢どもから彼を守るのが先です」

 ドライバーはとにかく俺を助けるつもりのようだ。俺がテロリストでないという証拠は実のところないが、このモンフォールというドライバーは俺を信用している。お嬢様にもそれは伝わったようで、渋々うなずいた。

「分かった。あんたはどっか行く場所があるって言ってたわね。それはどこ?」

「ブリュイージュってとこだ」

「了解。車で行けない場所ではないわね。モンフォール、そっちへ行ってちょうだい」

 モンフォールは何か言いたげな表情をしたが、すぐにお嬢様の意図を悟ったようで一つうなずいて前に向き直った。

 以心伝心というやつか。

 モンフォールは滑らかな動作で車を運転し、路幅は広いが自動車はまばらな道路に入った。ここまで来れば奴らも諦めるだろう……

 パンパンパン!! と銃声。

 は? こんなとこまで来てまだ追ってくるだと? 一体どんだけ執念深いんだ。というかこの執拗な追跡、やはりただのチンピラじゃねえな。

「な、何!? ってええ!? 黒い車!?」

 隣のお嬢様が音程の狂った声を上げる。

「急ぎますぞ」

 モンフォールは安定した手さばきで運転を続け、敵の弾丸を巧みに避ける。

 と、車のバックミラーに映っている敵の車の窓からでかい柱のようなものが突き出す。これまでとは違うセミの鳴き声のような音がしたかと思えば、レーザー的なビームが立て続けに五回発射された。

 それらを全部回避できたのはひとえに超人的なモンフォールの腕前のおかげだ。が、さすがに完全回避とまではいかず、バックミラーは取り付けている部品ごと砕け散ったし、ドアの取手は跡形もなく溶け落ちた。血みどろの生肉を叩いたようなねちょっという音がする。

「うへっっぅおぉうぉおお!?」

 車が急カーブして体が車内をすっ飛び、そのまま柔らかいお嬢様の膝の上へ……。

「ってあんた何やってんのよ!!」

 一撃で膝の上からおさらば、ドアで一回バウンドしてもとの席へ落ち着く。

 いや、落ち着きはしてねえな。

 車で出せる限界レベルの重力加速度が体にかかっている。右へ左へぐっちゃぐちゃに揺さぶられて内蔵の無事を確かめたくなるほどだ。だるいし気分も悪くなってきた。

「相手の方が装備は上でございます。お嬢様、『あれ』を」

 おおおお、秘密兵器みたいなものの登場か!?


薄々感じておられる方もおられるかもしれませんが

二人ほどパロディキャラがおります

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