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たぶん魔法のある異世界戦記  作者: 碧海ラント
第三部 ガリア
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第五章 ガリア共和国 1 Garia

こんばんは。碧海ラントです。

さて本日は割りと予定どおりに投稿できました。十万字目指して頑張るぞ!!

本日はまたあの大ヒット作品「涼宮ハルヒシリーズ」の九年半ぶり最新刊「涼宮ハルヒの直観」発売日です。おめでとうございます!! 

それと関係あるのかYouTubeでハルヒ関連の楽曲(ハレ晴レユカイ、God knows……、冒険でしょでしょ等の歌、アニメbgm)が公式で追加されました。アップが昨日でまだ再生数少なかったです。

それでは、本編をどうぞ!

 ガリア共和国、ベルゲーニュ。

 それが俺たちのたどり着いた街の名前だ。

 途中ガリア軍とおぼしき軍隊から威嚇射撃を受けたが、ゲルヒルトさんが何かを落とすとすぐに発砲は止んだ。そういうわけで俺たちはガリア共和国東部の都市ベルゲーニュに不時着(?)した。

 ベルゲーニュもこの地域の諸都市の例に漏れずなかなかに立派な歴史を持っているようだ。家屋、商業施設、そのどれもが街の景観を損なわず、逆に味を引き出すように配置されている。

 ぶっちゃけどう考えてもフランスだ、ここ。

「さてさてさあて」

 その台詞前の世界で絶対聞いたことあるやつだ。確かキリスト教っぽい名前の騎士団の話だったと思う。

「あたしたちはとりあえず連合のガリア共和国に拠点を置いて行方不明の二人の捜索を続けられるわけだ。ということでまずは宿探し!」

 背景ですみれが揺れている。

 春っぽいうららかな雰囲気の中、ゲルヒルトさんは脳内まで満開になったかのような感じで鼻歌さえ歌いながら歩いていく。

 大丈夫か、これ。


 とりあえずホテルに到着。

 ところでこんな感じで宿泊を繰り返してるけど金は大丈夫なのか? 全く問題なく泊めてもらえているようだが。

 というよりよく見ると金すら出してないぞ。

 ロビーのおっさんと何か色々と話して終わり。何やってるんだ?

「さ、部屋に行くよ?」

 渡された鍵には214と書いてあった。

「ゲルヒルトさんは?」

「あたしは212号室。何かあったら知らせてね」

 エレベーター(!)で二階へ上がり、それぞれの部屋に入る。

 214号室はごく普通な部屋だった。ベッド一つ、デスク一つ、冷蔵庫的な箱、ルームサービスかなにかの水。風呂はユニットバスだ。もとの世界とも同じ、ごくごく標準的なホテルの一人部屋。

 さて、暇になったところでテレビという文明の産物の存在を思い出し、あの黒い画面を探してみるがそんなものは部屋のどこにもなかった。電話があってテレビはない、か。この世界の人間は一体何を娯楽として見ているんだ?

 することもねーしベッドに横になる。

 …………。

 暇だ!!

 そうだ、こういうホテルに時々置いてある聖書とかはないだろうか。そう思ってベッドと小型テーブルの周囲を探してみるが、見つかったのは非常用の発光装置、つまり懐中電灯にあたるものだけだった。

 やっぱないよなー。クロス教は廃れたとか言ってたし。

 本格的にすることがない。

 元の世界からラノベかマンガ一冊くらい持ってくればよかったなー。こんなところで暇人になることもないのに。

 が、暇な時間はそこで終わりだった。

「危亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞惡錏亞!!」

 どこか狂った悲鳴が響いてきた。

 まてまて、展開がテンプレートすぎる。意外性もへったくれもない。

 とにかく音源は俺の部屋でないことは確かなので、ごく当たり前の判断としてドアを開けて廊下を覗く。周囲の部屋の連中もそんなかんじでドアを開けて廊下に出ていた。

 絶叫が聞こえたのは北側、212から数字が増えていく方向だ。

 一室、明らかに異質な部屋がある。他の部屋の宿泊者が廊下に顔を出しているのに対して、ドアすら開いていない部屋がある。

 いや、そんな部屋が二部屋あった。一つは217、もう一つはーー

 214。

 一瞬背筋が凍ったが、直後に通話機にかかってきた電話(?)で疑惑は解けた。

「エイト、ちょっとあたしの部屋に来てくんない? いまの悲鳴について調べたいからさ」

 了解。こっちは暇すぎて発狂しそうだったぜ。

 214号室にやってくると、ゲルヒルトさんはすでに準備万端といった感じでドアの前で足踏みまでしていた。

「あ、エイト。あたしは217を見てくるけど部屋見張っといてね。この隙に泥棒とか入られると困るからさ」

 じゃあね、とさっさとドアの外へ去っていった。丁寧にドアの鍵までかけて。

 さあ、再びHIMAタイムの始まりだ!!


 一分経過。


 五分経過。

 不意に窓が割られ、破片がそこら中に飛び散った。

「はああああ!?」

 ゲルヒルトさんの言ってた泥棒か? まさかマジで来るとはな。

 破片を踏み砕いて直立したのは、なんと小柄な少女だった。極限まで白に近い髪はポニーテールにまとめてある。顔の下半分はマスクのようなものに被われていてよく分からないが、顔の上半分では、大きい目が爛々と光っている。胸は小さめ……ってどうでもよくね?

 ついでに言うとへそ出し。もうこれあれだよね。盗賊少女。

 で何をするかと思えばいきなりナイフの切っ先をこっちに向けてきた。戦闘態勢。

「待て待てちょっと待て。ここは文明人らしく話し合おうじゃないか!」

 すると、少女は体勢を変えずに何やら呟く。

「……ばかばかしい」

 俺にはそう聞こえたね。

 そしてナイフ、果物ナイフとかではなくガチの戦闘用ナイフを構え、一気に突っかかってきた。

「ひいっ」

 慌てて右へ跳ぶが、足をかけられてあっという間に転がされ、ナイフを喉に突きつけられた。柔術の心得はないので何固めかは分からんがとにかく腕、頭としっかり固められている。

 が、それだけだった。

 俺を殺したいのなら躊躇なく殺すはず。逆に殺さず捕らえたいのならここは脅し文句的なものを口にするタイミングだろう。それが沈黙、無口系読書系美少女の告白みたいな沈黙が続いているとなれば。

 戸惑っている?

 俺を殺すかどうか。

 きっと俺がイケメンだからではなく多分に政治的事情が絡んでいるのだろうしそう考えるとなんか残念な気もするがこの沈黙は利用させてもらおう。

 さて、固めから抜け出すにはどうすればいいのかということで柔道なんかにはそういう抜け方もあるのだろうが俺は素人。そこでもうむちゃくちゃな、礼儀も道もへったくれもない手を使ってみる。

 ペン(この世界の独特なインクペン)カチャ。

 女の子のお尻にグサッ。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ああああああああああ!!」

 手が一瞬緩んだ隙に素早く寝返りをうち、後ろに跳んで自由を回復。

「く……ぐあっ……うごっ……」

 歩こうとして太ももを動かすと尻の肉が連動して伸縮し、その度に血がポタポタ流れ出て、激痛が走っているようだ。

 や、やりすぎた……。

 柔道で素人、戦闘も素人。

 それゆえに「(戦闘で)やり過ぎな手を使って後で後悔する」という失策をおかしてしまった。

 あっという間に跳躍して俺に迫ってくる少女。間一髪でその刃から逃れ、部屋の入口への通路に陣取る。

 何か武器になりそうなもの、武器になりそうなもの……。

 これだ!


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