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たぶん魔法のある異世界戦記  作者: 碧海ラント
第一部 異世界転移
2/40

第一章 魔法のある世界 2 Enter the Country

第二話です。前回と同様、感想等書いていただけると嬉しいです。

異世界物って結構伸びるんですね。もう一つの作品よりPV数多め。

それでは、本編をどうぞ!

      2

「わからないだと? なぜだ」

「あのー、実は俺、異世界から来たんで……」

「はあっ? 何たわけたことを言っている」

 叫んだかと思うと、受付のお姉さんはこちらをにらみながら立ち上がった。

「さてはお前、スパイだな。近頃は各国の対立が激しいからな。スパイの侵入を防げたのは幸いだ」

「いやちょっちょっちょっと……」

「でもスパイにしては下手すぎるでしょう。言い訳にしてもも異世界から来たとか突飛すぎるじゃないっすか。スパイじゃないと思うっすよ」

 おおっ衛兵さん、異世界発言を信用してはいないみたいだけどありがとう!

「ふむ。それもそうだな。とすると常人に見えてじつは頭のおかしい奴か」

「ちがわい!」

 思わず言ってしまったが、お姉さんに睨まれて冷静になる。

「ああ、じょ、冗談だったんですよ。そのーー本当はちゃんと出身地も……」

「やはり怪しいな。だが一般的なスパイとも違うようだし……上司にご判断いただこう」

 そしてお姉さんは不思議な行動をとった。右手の人差し指を伸ばし、それを上下左右にしきりに振り始めた。視線はその指先の辺りに集中している。

 そうか! この世界には魔法があるに違いない。そしてこれは一種のコマンドのようなもので、これによって魔法を呼び出し、上司に連絡がいくのだ。


「何をボーッとしている。上司と連絡はとった。さっさとついてこい」



 暗い廊下を歩きながら、俺はこうなった経緯を思い出していた。

 俺は平凡な男子生徒という、それこそ平凡な設定しか持ち合わせていない人間だ。彼女なし。非リア充。いや、最近ではこの設定は珍しいのか(危機感)?

 こんな非日常なストーリーに巻き込まれるはずはなかったんだが。

 俺があの暗いじめじめした空間に降り立ったまでは普通だったのだ。街の公園の奥にある立ち入り禁止区域。普段は興味も持たないような奥の方にあったそれは、俺と梶浦の興味を否応なく掻き立てた。

 そして、興味が複数、それも至近に存在すれば、それらは共鳴し、互いを増幅させることが多い。この場合も例外なく増幅現象は起こったが、それだけでは行動に直結するには至らなかった。

 それが行動に結びつくまで増幅したのは、ある事象に起因する。


「おい、半開きだぜ」


 よく見るとドアが微妙に開いていた。

 いやこんなベタな展開ないだろと思いながらも、俺たちはベタベタストーリーに逆らうことができなかった。

 後は何となく分かるだろ。その先にあった建物の地下室は、世界の支配者と言ってもいいような巨大IT企業ナイル社の秘密研究室(と言っても確定ではないが)だった。

 というわけで、俺は機密保持という四文字を脳内に黒々と書き込んでいるらしき警備員たちに追い回され、最後にたどり着いた部屋で何かの装置の作動に巻き込まれてーー。

 異世界転生、というわけか。

 いや、最後に見たあいつは自殺したかったわけではなさそうだから、俺は死んだわけではなく、正確には異世界転移と言うべきか。

 しかしお決まりの冒険者ギルドとかはなく、不審者扱いされて、入国を許可するか判定を受けにいくところだ。


 廊下を通り過ぎ、不愛想で堅牢な扉の前にたどり着いた。

「先ほどの廊下には術式が組み込まれていて、お前の体を透過撮影した。おかしなものを持っていないか調べるためだ。ここで再び検査を受ける」

 扉の前には軽装の兵士二名が構えている。兵士たちは、何やら怪しげな模様の刻まれた短い杖のようなものを持ち上げ、俺の体の表面を上下させた。なんだか空港みたいだ。

 いや、まさに空港じゃないか! 金属探知機か何かの役割を魔法でやってるんだな。ここからが俺の入国っていうわけか。

「えー、上着をご着用のようですね。一回脱いでもらえます?」

 俺は上着を脱いだ。兵士たちは上着の袖に杖を突っ込み、上下に振り、ポケットを裏返した。

 床に硬い音が響いた。おいおいおいおい、あの超有名アニメのリムちゃんのキーホルダーだぞ。俺がガチャで頑張って頑張って周りの視線も気にせず手に入れたものだぞ。

 兵士たちはキーホルダーを拾い上げた。杖をかざして念入りに調査したが、何もなかったようだ。当然だ。リムちゃん返せ。

 念入りな調査を終えて、許可が出たらしい。扉が外見にふさわしい重苦しい音を立てて開いた。


「着いたぞ。無礼のないようにな」


 上司と言っても一地方の入国審査官ではないか、えらい礼儀を払っているようだがそこまでの大物か、と思いながらも俺は部屋に入る。

 そこにはふんぞり返った貴族ではなく、風采の上がらないごく普通のおじさんがいた。

「なるほど、君が入国希望者か」

 積極的に希望した覚えはないが、まあ、そんなもんだろう。

「えー、では、そこに掛けてくれ。いくつか質問するから正直に答えなさい」

 そして、俺はまず名前を聞かれた。それに答えた後、やはり出身地を聞いてきた。

 優しそうなおじさんだし、主人公が普通に出身地を日本としている異世界ものもあるし、普通に答えればいっか。

「日本、です」

「聞いたことのない地名だな。そんな国は存在しない。だとすると地域名かな。架空だということもあり得るが、かといって嘘だとわかって言えばすぐにばれるし……嘘ではないのだな?」

「はいそうです」


「神に誓ってそう言えるか?」


「はい誓います」

 俺は無神論者だがまあいいだろう。

「なるほどね。じゃあ、ひとまず嘘はついていないと仮定して話を進めよう」

 おおっ人が好い! ありがとうおじさん。

「君は武装組織に襲われて、何も持たずにここへ迷いこんできたと、そういう話だね?」

「はい」

「君はどんな交通手段でこの街までたどり着いたのだね?」

「歩いてです」

「それからもう一度身体検査をさせてもらう。兵士たちが見落としたかもしれん」

 そういって、俺はまた同じようなことを繰り返す羽目になった。それでも結局は何もなかったようで、書類に何か書き込んで終わった。


「ところで、君、マジミナルを見せてもらえるかね?」


 は? マ、マジミナル? ちょっと待て、何だよそれ。名前からすると魔法関連か?

「マ、マジミナルって……」


「……ん、もしや君、マジミナルを所持していないのか?」


「あ、え、ええ」

 マジミナルとは所持するものなのか。身分証明書みたいなものか?

「今時珍しいな。赤ちゃんが持っていることさえあるのにな。ならそれはそれでいい」

 おじさんは何やら書類に記し、考え込み始めた。

「ふむ……この近辺で武装組織が活動していることは皆知っている。特別滞在許可を上に申請することにしよう。ここに氏名、性別、年齢、出身地、滞在予定日数その他を書いてくれ。記入したら、下の規約をよく読んでほしい」

 俺は言われた通りに記入した。それから規約を読む。小難しい文章だったが要するにこの国の法律に従え、従わない場合は罰則を与えるということだった。まあ上出来というところだ。滞在期間は一ヶ月としておいた。

 滞在期間中に何かすることを見つけて、のんびり過ごそう。学校に通う必要もないし。その間に美少女とキャラメルティラミスよりあまーい恋愛が出来ればもはや至高、言うこと無しだ。ああ、わくわく、でろでろ。

「はい、ありがとうございます」

 そう言っておじさんは書類に印を押した。その姿を見ると、やっぱりえらい人なのかもしれない。それを見届けてお姉さんが言う。


「これで申請の準備が整いました。これを中央に提出し、大臣の判断を待つこととなります。明日か明後日には結論が出ると思います。それまで市の用意する宿舎に滞在していただきますが……許可が降りた後、どこに滞在を?」


 あ、滞在場所が無い!

 それどころか一文無しだよおい。

 元の世界の金ですら手元には何百円しかない。ましてやこの世界の金なんて持っているはずがない。

 やばい。何も買えないし何も食えない。そもそもなんで最初に気付かなかったんだ……。

「ありません」

 フェードアウト寸前の声で俺は言った。

「やはりですね……管理官、どうします?」

「ふむ。宿舎をそのまま使い続けてよいものとしよう」

 これで終わりかと思いきや、おじさんは椅子から立ち上がると、部屋の後ろの方にある、柱が円形に立ち並んだ、その中心へ行くよう俺に指示した。お姉さんが説明する。


「では、識別術式を焼き付けますので、じっとしていなさい」


 や、焼き付ける!? 待って待ってちょっと待って!

「個人情報は政府とその関係機関が必要とした場合にのみ、最低限度で使用しますので」

 そう言うと、お姉さんは柱の脇のレバーを躊躇なく下ろした。

 うおあっ、上から光が、光がぁぁ!

 焼かれる、焼かれる! しかし、恐怖のせいで逆に体が動かない。

 光が俺のからだに迫ってくる!

 だが、別に光は俺の体を焼いたりはせず、ただ照らされただけで終わった。

「これで識別術式の組み込みが完了しました。説明しますと、これはあなたの位置情報を伝える術式です。人体に影響はありません。これも規則ですので、ご了承を」

 な、なるほど。これも魔法か。

 待てよ。何で俺は最初から外国人扱いされたんだ?

 俺がそのことを聞くと、おじさんが詳しく話してくれた。

 おじさんは簡易的な地図を取り出した。世界地図ではなく、一部の地域だけを描いた小規模な地図だ。


「地図を見てくれ。私たちがいるのはここ、ウィップシュタインという町だ。見ればわかるように、この町から西へ少しいけばすぐに隣国となる。だから、君の話で国境を越えてきたと推測したんだよ。実際君は遠い国の人だった」


 なあるほど。

 地図には、ドイツにしか見えない国が描かれていた。

 その国の名前は読めなかったし、聞くのも忘れた。

魔術ってがっちり体系化されてて、ウィキペディアの記事とかも正直全然わかりませんでした。「魔術」の記事はまだいいですけど、「セレマ」とかに飛ぶとものすごいことが書いてあります。

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