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たぶん魔法のある異世界戦記  作者: 碧海ラント
第二部 ウィリアム王国と嵐の前
17/40

第四章 2 Overture of War

こんばんは。碧海ラントです。

投稿時間が遅れてしまいましたが、第17部分投稿です。

感想本当にお願いします。読者の感触がどうなのか掴めないので、マジで参考になります。さらに面白いと思って頂けたのなら評価もお願いします(ログインしている方)。

それでは、本編をどうぞ!

   2

 エックスことウェーブコントローラー准将は俺に敬礼すると、そのまま指令室へ去っていった。

「エックスは航空部隊の幕僚の一人だにゃ」

 それにしても若いな。何かよからぬ手を使ったのでなければ、あの年齢で准将は異例の出世スピードだろう。

「当然。エックスは術式構成をズバリと言い当てる、天才なんだにゃ。国王直々に『エクスカリバー』の称号を授けられてる。他にもいっぱい勲章とかもらってるんだけど、普段は全然つけないんだよ。格好いいよね~」

 で、フィリーさんとエックスさんはどんな関係なんだ?

「むぐっ! ……し、士官学校時代の同級生! それ以上の関係はなんにもにゃい!」

 ふうーん。

 二階に上がると、窓から戦闘状況が一望できた。三連斉射が終わったようで、格納庫から戦闘機が次々と碧空に飛び立っていく。その様は威風堂々として、王国を守る神竜のような印象だった。

 相手攻撃機との交戦が始まった。数的にはこちらがやや不利だが、三機一組を徹底した王国軍は、高度な連携で次々と敵機を屠っていく。

 S字、旋回、宙返り……戦闘機の幅広い動きに目が回りそうだ。

「三機でここまでの連携を完成させられるのは相当優秀だにゃ。パイロットの腕も申し分にゃい」

 すると、若い士官がフィリーさんの元へ駆けてくる。

「対空光線術式兵器の除去、完了いたしました。現在三部隊が帰還しております」

「了解」

 そう言うと、フィリーさんはまっすぐ窓を向いて告げる。

「ウェーブコントローラー臨時司令、ティラミス村周辺の対空光線兵器の除去が完了いたしました」

 これは術式で連絡を取り合っているのか? 俺の場合は通話機を持たされたが、ずいぶん便利だな。というかティラミス村周辺の対空光線兵器? そんな危ないものが仕掛けられてたのか?

「そうだにゃ。エックスがそこを指摘して、陸軍部隊が除去してくれてたんだにゃ。

 空からゲルヒルトにゃんたちを攻撃すれば、近隣の航空部隊が緊急で救援に来る。それを見越してそんなものを仕掛けたんだと思う。

 対空光線兵器自体はそこまでの威力はないけれど、それでも機体は損傷を受けるし隊列を撹乱されるからね。ボクは除去部隊と海軍航空部隊の連絡役みたいなものだよ」

 閃光が空を飛び交う。健在な敵機は減少し、数の上でも王国軍が有利になった。残った敵機はかろうじて逃げ惑っている、そんな状況だ。

 機影は一瞬。

 爆音は持続。

 燃料にも限度がある。遠方から飛んできたであろう敵攻撃機は撤退し、残った部隊は方向を転換し始める。ティラミス村へと。ティラミス村上空のヘリを退治しにいくようだ。

 感謝感謝。

「……さっきから思ってたんだが、部外者の俺にそんなペラペラしゃべってもいいのか?」

「何言ってるんだにゃ。エイトは立派な関係者だよ。今回はエディルネ討伐っていうことでゲルヒルトにゃんの『組織』や軍が動いてるわけ。だからエイトも『組織』側の要員なんだにゃ」

 そうだ。俺は「組織」のメンバーだ。

 そう自覚すると同時に、溶岩が火口から噴出するかのようにやらなければならないことが湧き出して来る。ゲルヒルトさんとローザを助け、安全を確保する。空爆を受けて二人は危地に陥っているだろう。こんなにも差し迫った危機になぜ気づかなかった。

 それでも、二人の救出は俺一人では無理だから、こいつら、王国軍の助力が必要だ。

 そもそも王国軍はいつでも二人を援護することができたはずだ。それなのに、なぜ今さら出てきたんだ? これまで一体何をしてきた?

「フィリーさん、ゲルヒルトさんやローザを、助け出さないといけません。協力してくれますか?」

   *

 痛い。

 意識が途切れたときと同じように、覚醒も痛みで始まった。


 目の前がやたら白い。というか視界の全てが白だ。

 天国?

 このまま白の中に溶け込んでいきたい。

 白でいい。

 白だけでいい。

 白の他はいらない。

 白。

 全ては白。

 苦痛も安楽もない白。

 何者でもない白。

 溶け込んで。

 白になって。

 全てから解き放たれる。

 何者でもない白になる。


 痛い。

 いや痛い痛い。

 誰だあたしの安眠を邪魔するやつは。って誰でもないか。痛みだもんね。

 一気に感覚が戻る。目、耳、手、足、胴体。そしてそれは更なる痛みを意味していた。

「いてっ」

 思わず声を出すが、まともな声にならない。というか発音できていない。単に空気が出入りする、擦れるような乾いた音だ。

「目が覚めたのか?」

 視界は相変わらず真っ白。しかし濃淡、陰影がある。どうやら包帯でも巻かれているらしい。そして、その向こうから声が聞こえる。

 誰?

 ってゲルヒルトさんか。

「動かないで。今は活動できるような状態じゃない。おとなしく助けを待つんだ」

 任務の失敗、突然の意識喪失。

 って寝てる場合じゃない! 天使の降臨とやらを止めなくちゃ。

「動くな! 死にたくはないだろ?」

 …………。

「だったらおとなしくしてて。今は命が最優先だ」

   *

「それはできません」

 王国騎士フィリー・ウィルストーはゆっくりと首を横に振った。

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