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たぶん魔法のある異世界戦記  作者: 碧海ラント
第二部 ウィリアム王国と嵐の前
12/40

第三章 2 Conference

こんばんは。碧海ラントです。

今回でストックが……!

なんか最近日常が代わり映え無さすぎてちょっと不安な感じです。そういや今期のアニメ「安達としまむら」見ましたが、日常系もなんかいいですね。安達としまむらの距離感もまた素敵でした。

それでは、本編をどうぞ!

   2

 会議は長引いた……のか?

 視界に時計がないので何とも言えない。

 踊り場まで行って時計を見に行けばいい話だが、それはあまりしたくない。

 ローザがいないからだ。

 と言っても行方不明とかではなく、単にトイレに入っているだけだ。

 ローザは会議が始まってものの三分で音を上げた。

「だー、もうつまんない! なんか美味しいもの買ってくるわ」

「売店なんてあるのかよ」

 いやそもそもドアの前外れんなよ。何があるか分からないだろ。

「ん、下に軽食屋が」

 そんなもんあったのか!?

「ちっちっ、甘い甘い。こういう仕事をする人にとって、地図の把握は重要事項よ」

「お前にはなんか言われたくねえ」

「まあいいわ。特別サービスであんたにもなんか買ってきてあげる。何がいい?」

「……まあ、菓子くらいならいいか。軽いもんだぞ。五口以内で食べ終われるようなやつを頼む」

「らじゃ!」

 ……という会話の後、俺はどう考えても食べるのに五分はかかるフィッシュアンドチップスを前にすることになった。ローザも同じものを注文したはずだが、ローザは本当に五口で食べ終わった。

 早食いは肥満のもとだぞ。

 そして食い終わった瞬間にローザは腹痛を訴え始め、トイレに籠っている。食生活の悪さが祟ったのかな。

 今更ながらに気付いたが、フィッシュアンドチップスって菓子じゃなくね?

 まあどうでもいい。

 明らかに高級品の絨毯を、汚さないように気を付けて紙カップを握り潰す。これもゴミ箱に捨てにいきたいのだが。

 ちょっくら行ってくるか。

 俺は踊り場に向かって歩き出したが、角を曲がった瞬間、

「ひてぶ!」

「あぶじ!」

「そけぶ!」

 モブキャラ然とした悲鳴が聞こえた。

 ちょっと待て。何かのパクリにしか聞こえない悲鳴なんだが。しかもひとつのもとネタ(?)は悲鳴ですらない。

 慌てて駆け戻ると、ゴリラのような体躯の男が、猛然と会議室のドアに突進しようとしていた。奥の方では衛兵、使用人、メイドがぶっ倒れている。

 俺は慌ててドア前に戻ると、近くの傘をつかんでゴリラ男の足元をかき回した。重量があるだけにバランスを崩すと後は勝手に倒れてくれた。

「むうん」

 ジャングルで響いていても違和感の無さそうなうなり声を上げて、ゴリラ男は立ち上がろうとする。とその肩へ光の矢が突き刺さった。

「むごうっ」

 床についていた手から力が抜け、ゴリラ男は重々しく床に顔面を接触させた。

「よかった。あと一分遅れてたら大変なことになってたわね」

 お手洗いから帰還したローザがいた。

「やっと帰ってきたか」

「そんなんじゃなくて、お礼! ちゃんと感謝する!」

 いきなり叱られた。

 まあ、ローザに救われたのは事実だし、今日は素直に言っておくか。

「分かったよ。ローザ、ありがとな」

 途端、ローザの頬が真っ赤に染まる。

 二、三秒のタイムラグ。

「べべべべべべべべ別に? とーぜんのことをしただけよ? まあ感謝の気持ちはありがたく受け取っておくわ、うん」

 すると、背後のドアが突然開いた。そこから出てきたのは口髭を蓄えたおっさんだった。

「たった今侵入者がいたという連絡を受け取ったが……失礼、侵入者というのはそこでのびている彼のことでいいのかね?」

「あ、ええ、そうです」

 警備担当者か何かかな。

「君たちは確かフィドル孃の護衛だという二人だね? ならば、この男を一階の警備室に連れていってくれないかね。そこに私の部下がいるから、彼に話して預かってもらうんだ」

 俺は分かりましたと答えようとしたが、

「報酬は?」

 とローザが先に冷ややかな声で答えた。

 警備担当者の表情が目まぐるしく変わった。驚きの色が浮かび、ついで怒り、焦り、悔しさと変化する。が、最後には舌打ちして要求を飲んだ。

「分かった。ほら、百クロニカやるからとっとと行け!」

 最後の方口調乱れまくってるな。

「な、なら代わりに扉を見張る人を探してくれませんか。この男は二人がかりじゃないと運べないだろうし」

 警備担当者は再び舌打ちをすると、ちょうどトイレから出てきた若い警官に見張りを頼み、荒々しい足取りで会議室に戻っていった。

 騒々しく扉が閉まると、静寂が辺りを包む。ローザは無言でゴリラ男を担いだ。

「お、おい、なんかあったのか?」

 ローザが無言で睨んでくる。

 ここは何も言わない方が良さそうだ。

 俺は黙ってゴリラ男のもう片方の肩を持ち上げる。そのまま二人でゴリラ男を引きずりながら階段を降り、警備室に男を預ける。

 行きも帰りも無言だった。


 俺たちが会議室前に戻ると、既に会議は終わっていた。壁にもたれ掛かっていたゲルヒルトさんが俺たちを見つけて小さく手を振る。

「ちょっと不味いことになった」

 ゲルヒルトさんは不安げな顔で言った。

「装備や拠点は何とかするから、今すぐ北部地方に赴いてクロス教過激派団体『エディルネ』を倒してこいだって」

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