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休息


学校の昇降口を出ると、赤いセダンの車が停まっていた。母だ。車に乗ると開口一番、「遅い」と言われた。そうだ忘れてた。終業式の終了時刻は伝えてたけど、そのあとコンクールの曲をみんなに披露する時間まで言うの忘れてた。バタバタしてて、そんなのどっかにいってた。


「ごめん、待たせちゃって。」


「…なんて、ウソ。玲香の演奏聞こえてきたわ。」


「え?」


ここまで聞こえていたらしい。窓も開いていたし、それはそうか。


「素晴らしかった。あんなに上達したなんて、思ってなかった。もう聞けないんだろうな~なんて思ってたから、嬉しかった。」


確かに母には今後、違う曲を聞かせられたとしても、この曲が一番仕上がっている状態で聞かせられるとは私も思ってなかった。


「私もお母さんに聞かせられて嬉しい。」


「ふふ。ねぇ玲香、どっかランチでも食べに行こうか。」


「え、仕事大丈夫なの?」


「そんな、お母さんご飯も食べられない仕事だっだら死んじゃうわよ。休憩くらいとらせてもらわないと。」


「そっか。そうだよね。」


と、私が思うのもいつも母は出張が多く、いろんな所を飛び回っている。会社の社長なので、私の送り迎えを除いては、スケジュールが埋まっている日がほとんど。お昼に時間が空いたのも珍しい。母は車を発進させ、わたしが行きたいと言ったカフェに連れていってくれた。


お昼の時間が少し過ぎていたからか、店内のお客さんはまばらだった。店の奥に通され窓側のソファーの席に座った。メニューの中から母と2人、同じものを頼んだ。


「ねぇ、玲香?」


「ん?」


「高校卒業したら、どうするつもりなの?」


母は窓の外の流れる車を見つめながら、私に聞いてきた。街路樹が風で揺れている。


「…決めるよ。この夏休みで。」


そうは言ったものの、具体的なプランは決まっていない。とりあえず、母には終着点は決まっていなくとも、それを探すため、歩みを始める覚悟はきちんとあるということを伝えたかった。


「…そう。あなたの演奏聞いてたらどこに向かおうとしてるのか、もう決まったのだと思ったけど?」


「…え?」


どうして分かるの?と、のど元まで出た言葉を、料理を運んできたウエイトレスが遮った。


「失礼します。本日のランチでございます。」


プレートにはハンバーグとライス、温野菜が乗っていて、見た目だけでもおしゃれで美味しそう。ここはハンバーグが美味しいと評判のお店で、学校の友達とも話題になったお店だ。先程の演奏で相当、パワーを使ったのか、私はお腹が空いてた。母の発言の真相は、きっと私が進むべき道を見つけたとき、分かるのだろう。食事を始めながら、そんな風に思っていた。


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