隆起
18時30分、プリーメルの単独ライブが始まった。
コウイチさんが歌い始めると、手拍子は拳を振り上げるのに変わった。コウイチさんの声はどこまでもまっすぐで、会場を突き破りそうだ。効果的に照明が彼らを照らし、曲のイメージを膨らませる。ドラムのテンポとベースの土台、その上にギターとヴォーカルが乗る。それにお客さんがついて来て、会場の温度はあっという間に沸点となった。
ギターソロに差し掛かると、照明はサナダさんの顔を赤く照らす。サナダさんは目を閉じたまま、繊細に且つ一音一音丁寧に弾く。それに会場全体が引き込まれる。プリーメルとファンとの一体感を見せつけられた。この中に入れるなんて最高だ。曲が終わると、合間に「コウイチー!」「サナダー!」とメンバーの名前が叫ばれる。
その後MCが入ったり、彼らのデビュー曲なんかが入って、気づけばあっという間に、わたしがスタンバイする時間がやってきた。いよいよか、と思って身体を揺らし、ふーっと息を吐く。スタッフさんに導かれて、舞台袖に移動する。いつしかライヴも終盤に差し掛かっていた。高みを目指そうと、会場のお客さんとプリーメルの熱気がメラメラしている。そこに父がやってきた。
「いよいよだな。」
わたしは父を見て、何も言わず微笑んだ。まぁ見といてって。
わたしが出る一曲前の曲が終わると、MCが入った。
「次の曲が今日最後の曲になります。」
コウイチさんが言うと、会場全体からえーっという声が響いた。
「でもね、新曲。」
さっきのえーがキャーに変わる。
「この曲はドラマの主題歌にもなります。作詞作曲はサナダがしました。サナダ、ひとことお願い!」
「…この曲はプリーメルの新しい扉を開くような曲になってる。この扉をみんなで開けて、新たなステージを一緒に見に行こう!」
会場全体がわぁっと盛り上がった。




