歓談
1時間くらい、ミーティングが行われ、その後ステージに移って演奏のリハーサルをした。やはり今まで立ってきたステージとは圧倒的に規模が違う。ただ今回いつもと異なるのは、ステージに立つのは私1人ではないということ。
コウイチさん、マシロさん、ユッキーさん、そしてサナダさん、プリーメルの4人と一緒に立てるということ。彼らと作り上げる音楽がお客さんと一体になったとき、どんなステージが出来上がるのだろうか。
昼過ぎまでのリハーサルが終わると、アリーナの外ではグッズの販売が行われているのが見えた。まだ始まるまでかなり時間があるというのに、すごい数のお客さんで賑わっていた。彼らのファンは、若い10代くらいの女の子から、50代くらいの渋いおじさんまで実に幅広かった。
開演時間までの間、体力作りをしたり、スタッフさんと話したり、彼らはそれぞれの時間を過ごしていた。わたしはiPodに入っている、お気に入りの曲を聞いていた。少し経つと、控え室まで光来が来てくれた。
「よ、玲香!」
「光来!」
ヘッドホンを外し、思わず抱きつく。
「来てくれてありがとう。」
「うん。大丈夫?緊張してない?」
「めっちゃしてる。でもここまで来たら、後は楽しむ。」
「うん、玲香出てくるまで、こっちもドキドキ!頑張ってね!」
光来と話せて少し身体がほぐれた。
「…本番前邪魔になると悪いから、あたし行くね!」
といい、部屋を出ようとすると、外に出ていたサナダさんが帰ってきて、光来とぶつかりそうになった。わたしはとっさに、光来の腕を引っ張る。
「…すいません。ライヴ、頑張ってください!」
光来が謝る。
「…玲香ちゃんの友達?」
「そうです。光来です。光来、サナダさん…。」
と、両方を紹介すると、光来はこの人があのサナダさんね、と言わんばかりの顔でわたしに目配せした。
「あ…の、今日は玲香の事、よろしくお願いします。そうだ、あたし色紙忘れてきた…。もしよかったら、ここにサイン貰えませんか?」
光来はそう言うと、スマホを差し出した。カバーに書いて貰うらしい。光来の口から、プリーメルの事が好きと言うのは聞いた事がなかったが、この機会だし、サインを貰おうと思ったのだろう。サナダさんはいいよ、と言ってサラサラ書いてくれた。それをメンバーのところにも持っていき、光来のスマホカバーはあっという間にプリーメル仕様になった。
「みなさん、ありがとうございます。頑張ってください!」
光来はメンバーにお礼を言うと、最後わたしに「じゃあ、頑張って」と言い、控え室を後にした。




